第3話 最高の誕生日
曇天、薄暗い渓谷、その最底部に絡め、囚われている私。
陰鬱な雨が私の頬を叩く。
来る日も来る日も雨に打たれ、ついには目も見えなくなってしまう。
そんな私に天は更に轟く。その激情を知らしめるかの如く重く、激しく、音と光を叫び続ける。
しかしその
その花は可憐で力強く、そしてとても
花は瞬く間に成長し、私を覆い隠す。天の
そして花は、受け止めていた激情を天にはじき返す。
雲が割れて、太陽の光が差し込み――
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「う、ん……」
見慣れた天井だ。いつの間に寝ていたんだろうか。
伸びをしながら体を起こす。なんだか非常に気分がいいな、まるで正月元旦に日の出朝露と共に目覚めた時みたいだ。
ふと足元に重みを感じ目をやると、見慣れた姿が二つ。
二歳年上の姉、
どうやら私が起き上がったから目が覚めたらしく、オニキスはにゃあと鳴きながら頭を押し付けてくる。
相変わらず愛いやつだ、どれそのチャーミングな髭を弄ってやろう。
しかし、なんで家にオニキスが居る……そうだ! あのクルミ!「ぐえ!」
完全に寝ぼけていた。あの時は身体の細胞を一つ一つねじ切られるかのような激痛が走っていたのに、今は寧ろ
いったい何があった? 蔵の中にあった地下室で見つけたあのクルミ、明らかに普通じゃなかった。中に光る
気絶する前の事を思い返していると頭に衝撃。
振り返ると、姉の
「お姉さまを押し飛ばした挙句無視するとはいい度胸じゃない? 瑠理香」
「あ……琥珀お姉さま、いたんだ」
「いたんだ。じゃないわよ! アンタが目ぇ覚ますまでずっと見てたんだから!」
ずっと……? そういえばいったいどのくらい眠っていたんだ?
「ねぇ琥珀、私ってどのくらい眠ってたの?」
「地震があってからは多分4時間、アタシ達が帰ってきて蔵の前で倒れてる瑠理香を見つけてからは3時間くらいよ」
「4時間……」
どうやらそこそこ気を失ってたみたいだな。いや、あの激痛を考えると短い方か……
「とりあえず、父さんと母さんを呼んでくるから。アンタははしゃがずにじっとしておくこと」
「そんなこと言われなくても大丈夫だよ、琥珀じゃあるまいし」
「ぶっ飛ばすわよ」
「いやー、るりかこわいー」
「アンタ……はぁ……とにかく安静にしとく事! わかった!?」
琥珀はそう言い残すと私の返事を聞く間もなくバタンと扉を閉め、ドタドタとリビングの方まで歩いて行った。
しばらくするとまたドタドタと、今度は3人分の足音が聞こえてくる。
「るりちゃん!」
「瑠理香!」
お父さまとお母さまが蹴破る勢いでドアを開けて部屋に入ってくる。お父さま、顔が険しすぎて怖いよ。
私の顔を見た途端、お父さまは安堵したように顔を弛緩させお母さまはダイブしてきた。
「よかった……本当によかった……無事なのよねルリちゃん? どこか痛むところはない? 骨折とかしてないわよね? お腹痛くない? 頭大丈夫?」
「佳奈美……最後は悪口だ……」
「お父さまもお母さまも、私は大丈夫だよ」
そう言って力こぶを作って見せると二人は安心したのか、壁にもたれかかりながら同時に息を吐いた。
「本当にごめんなさいルリちゃん……わたしがちゃんとルリちゃんの事しっかり見てなかったから……」
「大丈夫だよお母さま、私はみんなが無事だったことの方がうれしいよ。お姉さまなんかは目を離すと直ぐにどこか行っちゃうからそっちの方が心配で」
「あ、こらー! 今アタシの悪口いうところじゃないでしょーが!」
「ふふふ……ね、ほら。お母さまもお父さまも琥珀も私も、家族みんなで笑って過ごせてる。それだけで私には最高の誕生日だよ」
「ルリちゃん……」
優しく、そして力強く抱きしめてくるお母さま。心配をかけさせてしまったな。
確かに、腑に落ちない事は多い。
あの地下室の事や私がなぜ蔵の前で気絶していたかなど、調べたいことは色々とある。
だがまず今は、家族が全員無事だった。このことをしっかりと喜ぶべきだろう。
「ごめんなさ……いえ、違うわね。無事でいてくれてありがとうルリちゃん、大好きよ……さて! じゃあルリちゃんが元気なら買ってきた食材でご飯作らないとね! 腕によりをかけてつくって、最高のお誕生日にしてあげるんだから!」
「うむ……無理はするんじゃないぞ。……何かあったらすぐに言いなさい」
「ダイジョーブよ瑠理香。アンタが食べれなくてもアタシがぜーんぶ食べたげるから」
「うふふ……コハクちゃんはルリちゃんの事が大好きだもんね」
「ふん、アンタがしおらしい内はご飯は全部アタシのだから、ずっとそのままでもいいけどね」
「ありがとう、私も皆の事が大好き。瑠理香はみんなと家族になれて幸せ者です。心配かけてごめ――」
――瞬間、目の前に文字が現れた。
【『
――は?
頭が真っ白になる。
――な……んだこれは。
目の前がチカチカと点滅して息が苦しい。
――わからない、わからないが。
がばりとお母さまの胸に顔をうずめる。
――この顔を見られるのはまずいと思った。
「……どうした?」
――だってきっと今の私は、
「ううん、うれしくて。だって本当に」
――悪魔の子だと言われてもおかしくない程に、顔を歪めて笑っているだろうから。
「本当に、最高の誕生日だから」
◆――――あとがき――――◆
キリがいいところまでにしようと思ったら、思いの他文字数が少なくなるか多すぎるかになったので今回は少ないです。すんません。
次話は頑張って盛り盛りにするので……ぜひ小説のフォローと★、そしてコメントを……励みをくだせぇ……次は5万文字書くから……オネガイシマス……
やめて!第四話の内容を5万文字なんて書こうとしたら、闇の執筆で小説と繋がってる作者の精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないで作者!
あんたが今ここで倒れたら、この話を完結させる約束はどうなっちゃうの?
ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、エターナル未完結に勝てるんだから!
次回「作者死す」デュエルスタンバイ!
現実世界の遊び方~リアルでスキルを手に入れた~ えび明太子 @Nemo-M
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