別の結末
(何なのよ、一体!)
ムカムカする思いを抱えながら、舗装を蹴るように足を運ぶ。
私は、生きていた。
あの後。
文化祭終了後、倒れているところを学生に発見され、殺されかけたことをすぐさま警察に訴えたけど──。
逆に私の薬物所持を調べられる結果となった。
なぜなら、今回の加害者で恋人だったはずの喜久原大也が、存在してない男だったから。
卒業名簿にも、勤務先の企業にも該当者なし。
そんな馬鹿な。私、あいつのマンションにも行ったし、社員証だって、他にもいろいろ……。
そのすべての痕跡が消え、まるで夢だったみたいに残ってない。
それに死んだと思っていた岡鞍里美。
彼女も生きていた。
訃報は彼女の親の話で、岡鞍里美はそれを機に、以前から話のあった縁談を受け、嫁いだらしい。
退社と訃報の時間は、前後していたのだ。所詮は噂話、ガセが多い。
(つまり寿退社だったってわけ? 相手は親戚だか幼馴染だか知らないけど、名家の御曹司なんて、あの女には不釣り合いよ! 若奥様とか呼ばれて、趣味の園芸に勤しんでるだなんて、腹が立つ!)
結局、倒れた原因は「貧血だろう」とか言われて、警察は早々に私の件を打ち切った。今も取り合って貰えず、追い返される始末。
(納得がいかないわ)
でも。
あの時感じた恐怖と殺気は本物だった。
もしかしたら私は、触れてはいけない世界に触れたのかもしれない。
(もし、本当に岡鞍里美が命を絶っていたら……、私の命も、絶たれていたかも……?)
ゾクリ。
想像に、背筋が凍った。
(警察も介入出来ない相手だから揉み消された、とかじゃないわよね?)
そんなドラマみたいな大物が転がってるなんて考えられないけど。
ひとまず腐葉土に埋められずに済んで安堵した私は、翌朝の出勤で企画から倉庫作業に回されたことを知った。
過去の嫌がらせが、バレたらしい。
悪夢はまだ、終わっていなかった。
文化祭後に、菊は咲かない みこと。 @miraca
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