第4話
日本から今の世界に異世界転生したことを理解したジーク。
日本で食べてた食事の味を思い出し、こちらの世界の料理が不味く感じてしまう。
基本的に薄味で調味料や食材も日本と違うものが多いのだ。
そこでジークは故人の日本人で超天才料理人の「料理の帝王」と呼ばれていた味吉料吉を降霊術で自らに憑依させ、美味しい定食を作ることにしたのだ。
ハンド男爵領にある役所近くの食堂屋さんで。
「女将さん」
「はいな」
「これから俺はスキルを使って料理人に変身します」
「へ?」
「見た目や言葉遣いがかなり変化すると思いますが、それは俺のスキルの効果作用なので慌てず騒がず見ててください」
「……よく分かんないけど、分かった」
「ありがとうございます」
ジークはステータスボードをオープンして、今更ながら自らの降霊術について調べた。
(ふんふん、なるほど。降霊させたい人物をステータスボードに書いて、料金をステータスボードに入れるのね。……料金?
基本料金1時間1万円相当額……
オプション等で料金は上がります?
ふんふん、なるほど。こっちの世界に
持ってきてほしい物とか指定すれば、降霊させた故人が持ってきてくれるのか。それは助かる)
ジークはステータスボードに備え付けのペンで、味吉料吉の名前と持ってきてほしい物をステータスボードへ記入した。
『ご利用ありがとうございます。ご利用料金は2万円相当額となります。
1時間を超えて延長する際は、1時間毎に1万円相当額を投入してください』
ジークはステータスボードに銀貨4枚を投入した。
ステータスボードが大きくなり、人間が出てきた。たくさんの荷物も持っている。
「まいど〜、味吉料吉です〜。ご指名おおきに〜」
「……よろしくお願いします。あの、本当に味吉さんですか?」
「どして?」
「30歳くらいに見えるので。享年90歳くらいですよね?」
「あー、90歳で料理はキツいさかいな。1番に料理の腕が良かった年齢で来たんよ。今から、あんさんに憑依しまっせ? よろしいか?」
「なるほど。よろしいで……あの」
「あの?」
「憑依されている間の俺の意識は消えたり……身体を乗っ取られたりしません?」
「がっはっは! 乗っ取りとかまさかですわ。見た目はわて、意識はあんさん」
「見た目は味吉さんで、意識は俺ですね?」
「そうやね」
「あの、それで俺が料理できます?」
「あ、大丈夫よん。勝手に身体が料理するさかいな」
「なるほど。分かりました」
味吉料吉はジークに憑依した。
見た目が味吉料吉そっくりに変化したジーク。
「ま……」
口をおさえて驚く女将さん。
3人いたお客さんたち。
「お、女将さん、この状況がよく分からんから帰るぞ。ごちそうさん」とか言ってみんな帰っていった。
見た目は味吉料吉になったジークは食堂屋さんのキッチンに入り、焼き鯖定食を作り始める。
お米(コシヒカリ無洗米)を鍋に入れ、ペットボトルの美味しい水と備長炭を入れる。本当は30分は米を水に浸したいが本当にお腹が空いているので直ぐに炊く。
味噌汁を作る。
超高級卵で玉子焼きも作る。
鍋のご飯が炊きあがる時間を見計らい、日本近海で採れた脂の乗った塩サバを網で焼く。
漬物は漬物名人と名高い人が作った漬物だ。それを切る。
流れるような手さばきだ。
そして、20分で焼き鯖定食が完成した。
ジークの身体から離れる味吉料吉。
「ほな、わては帰ります〜」
「味吉さん、ありがとうございました」
「ほな〜」
味吉料吉はステータスボードの中へ手を振りながら帰っていった。
さて、実食。すごく良い匂いが。
「頂きます。もぐもぐ……ごくん…………美味いぞ!」
さすがは超天才料理人、料理の帝王と呼ばれていた味吉料吉が作っただけはある。
ものすごく美味しい。
「あ、女将さん」
「は、はい」
「2人分作りました。良かったら食べます?」
「え? ええの?」
「俺は12歳。こんなに食べれませんので」
「じゃあ、頂きます」
「はい」
女将さんも塩サバ定食を実食。
「もぐもぐ……ごっくん…………何これ!? すっごい美味しいんですけど〜!」
「それは良かったです」
ジークも女将さんも塩サバ定食を完食した。
「ごちそうさまでした」
「ふ〜、ごちそうさまでした」
女将さんは、がばっと我に返った。
「レイ君だっけ?」
「はい?」
「君って何者?」
「何者? スキルは降霊術師、見た目は普通の12歳の子供ですけど」
「いやいやいやいや」
「え?」
「12歳でステータスボードを出せるって、絶対に普通じゃないからね」
「そうなんですか?」
「そうよ。それに、ステータスボードが出せるってことは、戦士の士じゃなくて、師匠の師よね?」
「はい、まあ、そっちの師ですね」
「おばさん、ちょっとだけスキルに詳しいからね。いくらスキルが師でもステータスボードを出せるのは18歳くらいからよね」
「そうなんですか?」
「そうなんです」
いや、そう言われてもと思うジーク。
「まあ、出せるものは仕方ないですね。使えるスキルは使わないと成長しないので」
「はー、おばさんのスキルって知ってる?」
「いえ」
「私のスキル、【接客】なのよ」
「なるほど。素晴らしいスキルです」
「そう?」
「はい」
「レイ君、いい子やね」
「ありがとうございます」
「この店で働かない?」
「15歳未満は働いても給料無しですよね」
「あ、知ってた?」
「知ってます。衣食住の提供は良いけど金銭を渡すのは禁止って。いわゆる完全無給の丁稚奉公」
「知ってたか〜」
「それに、俺のスキルは商売だとコストパフォーマンスが悪すぎますよ」
「コス……なに?」
「コストパフォーマンスが悪い。利益効率が悪い、ですかね。100円稼ぐのに1,000円の経費が必要、みたいな」
「……それは効率悪すぎね」
「はい。なので、俺は普通に丁稚奉公は無理ですね」
「それは残念無念」
「でも、ありがとうございます。お誘い嬉しかったですよ」
「レイ君〜、うちの息子にしたい〜」
「はい。それでは俺は用事があるので」
「はいよ、また来てな」
「ありがとうございます」
ジークは身分証明証を受け取りに役所へ向かった。
文字化けスキルはスキル無しの無能だと? 異世界転生降霊術師がゆく ノーネム @yuukimee123
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