海へ行く僕
あげあげぱん
第1話
海を見に行こうと思った。
今朝、彼女に振られて、とても辛い。朝から昼過ぎまで、ずっと塞ぎ込んでいた。でも、いつまでも落ち込んでちゃ駄目だ。だから、僕は海を見に行こうと思った。だらだらと身だしなみを整えて、準備完了。
町から車を走らせて一時間ほどで海に着く。季節は夏だけど、もう日も沈みかけていたくらいだったから、人の数はまばらだった。あまり人が居ない方が落ち着けて良い。今は心を癒したいんだ。
砂浜から、海を眺める。赤く染まった景色は綺麗だけれど、生暖かい潮風は、べたべたして気持ちが悪い。繰り返す波の音は心地よかった。
昔から人付き合いが得意な方ではない。だから、彼女にも愛想を着かされてしまったんだろうね。悲しいけど、仕方がないってやつだ。これからは先のことを考えた方が良い。もっと、人付き合いが上手くなりたい。なれるかな? ならないとな。でも、なかなか気が進まない。
やがて日が沈み、暗い空に数えきれないほどの星が現れた。僕はまだ星空の下で、砂浜に立っている。すぐには、動く気になれないんだ。
そろそろ動かないと……なんて考えながら、星を眺める。いつまでも、こうして立っていても何も代わらないのだけれど、せっかく海に来たのだから、何かをしたい。その何かが思い付かない。何かを見つけるでも良いのだけれど、何も見つからない。
何でも良いから、きっかけが欲しかった。暗い気持ちを変えてくれる何か……何かが欲しい。そう思って海に来たんだ。
夜空を眺める。暗い気持ちの僕を、暗い空が見下ろしている。時間が……経過していく。
……あ!
夜空に流れ星! ……何かを願う暇もなかったけど、それは何かの吉兆のような、そんな気がした。
とても、とてもささやかな発見だった。でも、海に来て良かったと、本気で思えた。
車に戻ろう。町に帰って、そこで、何か美味しいものを食べよう。少しだけ心が楽になったから。僕は明日を向かえようという気持ちになれた。
流れ星に感謝して、僕は海を後にした。明日は良い日になってほしい。そうなると……良いな。
海へ行く僕 あげあげぱん @ageage2023
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