最終話 お父様の為に

 リアナ達が衛兵達と共にミノタウロスやオーク達を倒してから3週間が経っていた。長らく平和だったアルテナーハ王国の王都に魔物達が突如現れた事に国王バイロンと臣下達は事態を重く受け止めた。魔物達の調査をする為、また討伐の為に冒険者達をバイロンは王国の内外から広く募ることにした。

 多額の報酬や名誉を得る為に王都にも数多くの冒険者や流浪の騎士達が訪れていた、冒険者たちの中には高名な冒険者や騎士達もいてそうした者たちは国王のバイロンとの謁見を許されていたが中には素行の悪い荒くれモノや夜盗だったもの達も多くいて、バイロンはそうした者達の対応にも追われ頭を悩ませていた。

 そうしたある日城を訪れた冒険者達との謁見を終えたバイロンと大臣の元にレティシアは来ていた。


 「お父様、お疲れ様です。」


 「、、、レティシアよ。、、、ッ!!」


 「お父様!!」

 

 「陛下?!衛兵よ!直ぐに司祭様を呼ぶのだ!!」


 突如倒れ司祭の祈りの加護を受けたバイロンは一命を取り留めたが司祭から死病と聞かされたレティシアはバイロンの傍から離れよとしなかった。意識を取り戻したバイロンはそのレティシアの様子を見て語りかけた。


 「レティシアよ、私は幸せ者だ。私が王位を継ぐ前アルテナーハ王家は血族が争いを繰り替えす王国だった。しかしお前や兄たちの母であるアエリアと結ばれて、それから成長したお前達は兄妹で争う事無く臣民を思う立派な王族になった。私の命は長くないかもしれぬ、私が亡きあとは兄たちを支えてこの王国の為に生きてほしい。リアナ達プリセスガードもお前を支えてくれよう。私からの願いだ、頼むぞレティシア。」


 「はい、お父様。必ずこのアルテナーハ王国の為に生きます。だからお父様、どうか少しでも長く生きてください。」


 「分かった。レティシアよ、今日はもう戻ってやすみなさい。」


 バイロンの手を暫く握りしめるとレティシアは寝室に戻るとネフェがレティシアを気遣うかの様にすり寄った。

 

 「ミャー。」

 

 「ネフェ、、、。」


 レティシアはネフェ撫でるとその日は床に就いた、次の日レティシアの兄であるセリグがバイロンの病を治す術を各国を渡る高名な冒険者達を招き訪ねていた。レティシアはセリグの横に控え話を聞いていた。

 冒険者達の一人である老賢者がセリグとレティシア達に告げた。


 「雲を掴むような話ではありますが、アルティア教会に伝わる失われた聖杯を見つけその杯にドラゴンの血を注ぎ口にすればありとあらゆる病を治すと聞いた事がありますな。」


 「聖杯にドラゴンか、、、、分かった。すまないが下がってくれ」


 冒険者達が去った後セリグと大臣そしてレティシアはアルティア教会の司教を招き失われた聖杯について聞いていた。


 「聖杯は何百年も昔にその所在がわからなくなっています。伝承によれば最後は聖者セリウスの眠る地、アルティア教の聖地の何処かに隠されているとしか、、、、。」


 「聖杯だけでなく伝承に残るドラゴン達は強大です。ドラゴンを見つけ倒すのは並大抵の事では果たせませぬ。」


 「殿下、陛下から跡継ぎには正式に貴方様が就くようにと言われています。陛下の事は、、、、。」


 「、、、、分かっている。皆それぞれの仕事に戻ってくれ。レティシアは私と共に父上の元へ。」


 「はい、お兄様。」


 レティシアとセリグはバイロンの寝室へと向かった。


 「申し訳ありません、父上。」


 「セリグよお前が気に病むことはない。明日以降にお前を正式な王とする為に戴冠式を行うつもりだ。レティシアとこの王国をよろしく頼むぞ。レティシアよお前もセリグを支えてくれ。」


  「はい。お父様、、。」

 

 バイロンが眠りに着くまでレティシアとセリグはその傍にいた。バイロンのを寝室出た後レティシアは暫く考えてあることを決心してリアナ達を自室に呼び出した。


 「皆!どうかお願いがあります!」


 「急にどうしたのよ?レティシア」

 

 「私と一緒にお父様の病を治す為に旅に出て欲しいのです。」


 「陛下が倒れた事は聞いているけど治す為のあてはあるの?」


 「アルティア教会に伝わる聖杯を探してドラゴンを討伐しなければなりません。」


 「聖杯探しとドラゴン退治?!」


 「ワタシ構わないけど命がけの旅ヨ。」


 「バイロン陛下とレティシアのためなら俺もいくぜ。」


 「僕もレティシア様と陛下の為なら、、、」


 「あんた達、命を懸けても聖杯が見つかる可能性は低いし私達だけでドラゴンを倒せると思う??」


 「私も行く。陛下が亡くなって悲しむレティシアを見たくない」


 「アイリーンは残るのか?」


 「はぁ、、、あんた達だけを行かせてドラゴンに返り討ちにあうなんて目に見えてるし私も陛下とレティシアのお陰で魔術師になれたのは忘れてないわよ。いつ城を出るの?」


 「皆!ありがとうございます!出来れば今夜にでも!」

 

 そして数時間後レティシアとリアナ達は城を後にしてアルティア教会の聖地へと向けてアルテナーハ王国北の港街へと向かう。


 (お父様ごめんなさい必ず戻ってきます。)


 城の方を振り返るレティシアみてリアナは心に誓った。


 (レティシア、貴方は私達が必ず守るよ)


 かつて騎士を目指して幼き頃から努力をし続け自身の大切な人を守るという気持ちを忘れないリアナはルーンナイトとしてまたプリンセスガードの一員として仲間と共に成長していた。

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ルーンナイト atias @atas

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