第2話 出会い

とりあえずシュナイド王国の領域を出ることを目標に歩き始めた。


「疲れも感じないようだし、歩き続けるか」


とは言ったものの王国はかなりの領地を持っており、隣国へ行くのも徒歩では7日かかると言われている。


「いくら疲れないとはいえ、これはちょっと堪えるな…」


しばらく歩き続け、森にぶち当たった。


「また森か‥勘弁してくれよ」


その時、なにかに襲われている少女を見つけた


「誰か…助けてーー!!」


ヘルウルフだ。


「マジか!まだ日も沈んでねぇってのに!」


まだ騎士だった頃の感覚が染み付いており、即座に戦闘体制をとった。


「さて、このナマクラで勝負できるかね…」


ザシュッ!


ヘルウルフの体に当てることはできたが、傷は浅いようだ。


「今のうちに逃げな!お嬢ちゃん!」


「は、はい!」


「グルルル…ワオォォォーーン!!!」


ヘルウルフの遠吠えが響き渡り、増援が現れた。


「げ、増えやがった。」


一匹が噛み付くも、鋼鉄の体は牙を通さなかった。


「そっか。俺、鎧なんだ」


落ち着いて対処すれば造作もない


「これで終わりだっ!」

ザクッ

「ガフゥ…」


(やっぱこのナマクラじゃダメだな、鍛え直すか買い替えなきゃ…)


空に目をやると、日は完全に沈み、星が輝いている。


「今日はここで夜明けを待つか…」


ガサガサと音がして振り返ると、先ほどの少女がいた。


「凄い!ヘルウルフを1人で討伐するなんて!」


「はぁ‥なんでこんなところを1人で歩いてたんだ?」


「私、魔術師を目指してるの。いつもここで練習してて…」


「親御さんが心配するだろ?」


「いいの。私、家出中だから」


「家出かよ」


家出少女にしては、綺麗な格好だ。


「おじさん、冒険者なの?」


「ただの旅人だよ、冒険者協会には加入してない」


「ふーん。ねえおじさん、私を旅に連れてってよ」


「駄目だ、傷でもつけたら親御さんに合わせる顔がねぇ」


「いーじゃん、ケチケチケチー」


少女は駄々をこね続けている


「しょうがねぇな‥分かった、連れてってやるよ」


「いいの?」


「ただし、この体でいいならな」


そういうと兜を外し、空っぽの中身を見せた。


「うわぁぁ!?な、中に人が居ない!?魔物!?」


「……しろい」


「は?」


「面白い!!」


「え?」



「中身のない鎧と旅出来るなんて!どうして?なんでそんな体なの?」

少女はキラキラと目を輝かせている。


(げ…そういえばコイツ、魔術師を目指してるって言ってたな)

「そういや、お前名前は?」


「サナよ、サナ・クレイナード。おじさんは?」


「カルム、カルム・ユーゼンだ。」


「そ、よろしくね」


「こちらこそ、か」


鎧と少女は互いに手を差し出し、握手を交わした。


「ところでサナ、見たところいいとこの育ちみたいだが、野宿なんてしたことあんのか?」


サナはキッパリと答えた。


「ないわ、だって今日家出してきたんだもの」


マジかよ。


「従者がしつこくて大変だったわ、お父様もうるさいし」


「これからは風呂に入れるか怪しいぞ」


「そんなの百も承知よ、魔術師になるためだからね」


他愛もない会話をかさね、夜はふけていった。


続く

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鎧と少女と重ねる旅路 ぱるぷ @tanaka846

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