鎧と少女と重ねる旅路
ぱるぷ
第1話 序章
俺はカルム。シュナイド王国の騎士団員として日々研鑽を積んでいた。
そして今、死にかけている。
ーーーー視界がぼやける、体が重い、激しい痛みで考えることもままならない。ああ、そろそろ死ぬのか‥‥
(思えば人生短かったな…まさか王国にドラゴンが襲来するとは、運がないぜ…かなり頑張って鍛錬したと思ってたんだけどなぁ…)
そうしてぷつりと糸が切れたように意識がなくなった。
「‥‥ハッ!!!」
なんだ、この感覚は。体が妙に軽い、悶え苦しむ痛みも感じない。
いや、これはーーーーーー
感覚が、無い。
慌てて飛び起きて辺りを見渡す、木々が生い茂っていて、小鳥のさえずりが聞こえる。
聴覚、視覚は残っているようだ。
しばらく歩き回り、川を見つけた。
水面を覗き込むとそこには、、、
[鎧]があった
「な、なんじゃこりゃーーーっ!!!!!」
生前身につけていた鎧と瓜二つの姿をしている自分が立っていることには驚きを隠せなかった。
「でも、少し前と違うような気もするな」
身につけていた鎧は、銀の色を瞬かせていたが、現在の鎧は赤黒く、まるであの惨劇を切り取ったかのようだ。
しかし、改めて周りを見渡すとこの森には全く見覚えがないことに気づいた。
「ドラゴンの襲来から何日経ったんだ…?」
見渡す限り木、木、木であるためここがどこであるか検討もつかない。
どれほど時間が経ったのだろう、日が沈み始めた頃ようやく廃屋を見つけた。
「これはまさか、俺の家!?」
おかしい、家は確かに王国の、それも都市部の中に構えていたはずである。
「まさか、ここ‥‥王国なのか?」
木々の様子からかなりの月日が経っていることは容易に想像できた。
「おいおい嘘だろ‥俺が起きるまで一体何年経ってんだよ‥」
とりあえず今日は崩壊した我が家を利用して夜を過ごすことにした。
メラメラと燃える暖炉の炎を見ているとこれまでの人生がどうでもよく感じる。
(どうせ死んだんだし、好きに生きて‥いやもう死んでるけど、まあいいや)
ふと気になったところに目をやると、一つの鞄があった。
「これは‥」
その鞄はヘルウルフの皮を利用した鞄で、100年経っても使えると評判の品物だった。
「さすがヘルウルフの皮だ‥どうせ寝れないし、色々かき集めて行こう」
寝ることのできないこの体では夜がとても長く感じたが、荷物を集めて気長に夜明けを待った。
そして夜が明けた。
「よし、ある程度準備は整ったな」
運良く錆びていなかった剣、文字がかすれてほぼ読むことのできない魔導書、使えるかどうかは分からない身分証などを鞄に詰め込んだ。
「出発だ」
軽い気持ちで始めたこの旅が、壮大な冒険譚になることを彼はまだ、知らない。
続く。
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