第4話 

「うぅ……さむッ」

 ざくッ、ザクッ、と雪を、踏みしめ進む。

 足裏の、感覚が段々と、なくなってきているのが分かる。

(早いとこ、小屋に帰らないと)

 もうすぐ、吹雪が、やってくる。そのはずだ。

 寒さに、かじかみながらも、足を、速く進めた。



 小屋の、扉を、開け中へと入る。

 すぐさまに、暖炉に火をつけ、薪を焚べる。パチパチと、火が小さく爆ぜる音が、聞こえる。

(はぁ~、あったかい)

 近寄り、暖かさに、身を寄せる。外では、予想通り、吹雪が起こっている。窓が、ガタガタと、けたたましい音を、鳴らしその、強さを、表している。

(これが、修行だなんて……)

 そう、これは、属性魔法の修行である。

 師匠が、言うには、『属性魔法は、適正環境に身を置くことで、手っ取り早く強くなれる』とのことらしい。そのおかげで、僕は、今、雪山にいる。

 ここで、生活し始めて、2ヶ月経っている。その間、師匠は、一回も様子を観に来てくれなかった。

 正直言って、何をすればいいのか、全く分からない。取り敢えず、死なないように、サバイバル的な事を、やってはいるが。

「そろそろ、やろうかな……」

 今となっては、日課となった瞑想を、始める。

 基礎魔法の、時に行っていたものは、今も続けている。

「さ、次は…」

 窓の外に、目を向ける。いつの間にか吹雪は、収まっていた。

 コートを、手に取り外へと向かう。

 息が、白く染まる。鼻が、冷たい空気を吸うと、脳が冴えていく。ただ、鼻先が、痛い。

 杖を、取り出す。

 今から、行うのは属性魔法の、修行だ。

 今までやっていた、基礎魔法のところを、属性魔法に変えただけだが。

 それでも、何もしないよりかは、マシだと思いたい。

「詠唱を、省略、省略……」

 それを、意識しながら発動させようと、するも不発に終わってしまう。

「……駄目、か……ッ、もう一度!」

 もう一度行うも、不発。不発。不発。

 何度やっても、一向に出来る気配が感じられない。

「やっぱり、詠唱をしたほうが……」

 そもそも、詠唱とは、自分がどの魔法を、使うかを、認識、意識するためにある。これを、息を吸うかのように無意識で、行えれば、わざわざ詠唱する必要はない。詠唱する時間が、いざ戦いとなったらそれが、命取りにもなるし、何より敵に何をするのかが、バレてしまう。だから、無意識で、発動出来るように、なりたいのだが。

「……いやッ、諦めるな」

 冷たい手で、頰を、叩く。

 属性魔法が、難しい理由は分かっている。

 それは、属性魔法の、技の豊富さ、それ故だ。

 僕が、扱える属性は二つ。氷と雷、この二つだ。

「氷に、環境を、もっと理解しないと駄目なのか…」

 師匠の、あれは、環境に慣れろ、と言うことなんだろう。それと、もう一つ師匠に、言われたことを思い出した。

「……属性魔法は、実質、自然魔法みたいなもの…か」

 そう、言われた。その時は、唐突に言ったものだから、どういうことだ、と思ったが、こういうことだとは。なら、やることは決まった。

「もっと、よく知ろう。この…自然を」



 それからは、周囲の探索、観察をしたり、その途中、洞窟を見つけたので、そこの探索をしたりと、色々なことをした。日々の、瞑想やイメトレなんかは、外で行うようにした。吹雪に、襲われることも、あったが、その時は、魔力で全身を防御しながら、やっていた。勿論、最初の内は、全く出来ていなかったが、いつの間にか、出来ていた。

 属性魔法の方は、と言うと、完璧に無詠唱で、行えるようになった。その属性魔法の、威力を試すために、洞窟の魔物と、戦ったりした。死にかけた時もあったが。

 そして、

「ひっさしぶり~」

 いつぶりだろうか、師匠の姿を見た。

「お久しぶりです。師匠」

「いや〜、見ない内に大きくなったねぇ~」

「そうですか?」

「そうだよ〜、だってあれから2年経ってるもの」

 二年、時間の流れの速さを、実感する。

「2年も経ったのか……」

 小さく呟く。

「私が、来たってことは、どういうことか分かるよね?」

「終わりって、ことですよね。氷の方は」

 僕にはまだ、雷の属性魔法が、残っている。

「うん、君を今から、雷雲轟く、嵐の中に、連れて行く。良いね?」

「えぇ、お願いします」

「じゃあ、行こうか」

 師匠が、魔法を発動させる。視界が、白く染まりあげる。


 激しい、空間を裂くような、轟音が響く。風が、物凄い勢いで、吹き荒れる。雨粒でさえも、凶器になり得るほどだ。―――テンペスト、それが、この地の名前だ。常に、嵐が発生しているという、特異性を持っている。ここは、一つの禁足地となっている。

 そんなところで、僕は瞑想していた。

 何時もの、日課をこなす。ただ、淡々と。

 それが、終わると、嵐の中心地、最も強い所に、飛び込んだりした。そこで、轟雷を浴びたり、突風に弾け飛ばされそうに、なったりもしたが、なんとか生きながらえていた。

 特に、雷、アレはヤバかった。防御魔法すら、破ってきたものだから、死ぬかと思った。

 だが、そのおかげで、雷の属性魔法も、無詠唱で、行えるようになった。

 一度、氷の方で、やったからか、僅か、半年で会得するとこが出来た。

 そうこうしている内に、師匠が、迎えに来てくれた。

「じゃあ、帰ろうか」

 その直前、雷がとどろき光輝いた、瞬間巨大な影が、写った。それが、何なのか、考察する暇もなく、魔法が発動した。

 残す課題は、後三つ。

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庭園の魔法使い 猫かふぇ @necocafe

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