GIFT ―才能弱者、旅は道連れ世は乱れ―

　ロア・フィルトスの才能は誰からも必要とされなかった。
　大陸中の街や村では、聖教会で行われる10歳の儀式で自らに宿るギフトを知り、人々はその才能に応じた職に就く。
　しかし、ロアのギフトは「理解」と「再現」。2つのギフトが宿っていることは非常に稀だったが、生まれ育った漁村の誰もが、そして、ロア自身でさえもその価値を見出せなかった。
そんなロアの旅立つきっかけは、14歳年上の釣り友達アランの言葉。
　「広い世界を見たほうがいい。」
この先ずっと誰の役にも立てないのだと思っていた。しかし、その言葉がロアを旅に駆り立てた。未だ見ぬ外の世界なら、自分の居場所があるかもしれないと期待せずにはいられなかった。
　16歳になり、村を出たロアは、街へ向かう道中、行商人のテルヴァンと出会う。
　「馬引き」の…続きを読む