第5話 「 」

徐々に現実味を帯びてきた。そしてその時がきた。あの感覚。これで二度目。心に穴が開いた。大きい穴が一つこの胸の中心に。満たされていたものが瓦解していく。忘れろ。そうとだけ自分に言い聞かせていた。どんな顔ですれ違えばいいのかわからない。相手に自分を二回も振らせた。相手も俺と同じ人間だ。いくら相手が変な人であろうが振るのは心地よくないだろう。でも、そんなことをさせた。淡い幻想を胸に抱いていた少年。×××××××××××××な少女。

「おっかしいなぁ。」

何もわからない。あいつのことが何もわからない。なんで。どうして。どんな奴なんだ。顔は覚えてる。でも性格がさっぱりわからない。忘れたのか?もともと知らなかっただけなんじゃないか。本当に何もわからなかった。今の自分の気持ちも、相手の感情も。それでも、忘れたくても、どうしてもあいつを好きな俺がまだ胸の中心にある穴に座ってる。

「もう、忘れたいよ。もう、いいよ、いいから、今更泣くなよ。」

やっと泣いた。僕はいつもそうだ。失ってから気づく。いつも遅い。もう無理だ。思考を放棄する。

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残り日 ひるもすみ @hirumosumi

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