最恐
ヴェール
はじまり
突然、みんなの携帯が鳴り始めた。
地震が来ることを告げる警報が学校中に鳴り響く。
休み時間の賑わった雰囲気は一変し、遁走する者、言葉を失って立ち尽くしている者。
警報が鳴ってから数秒後に、学校中が大きく揺れた。
さくら、すみれ、れん、あおいの4人は学校の屋上でいつも通り話していた。
4人は中2で同じクラスになり、よく休み時間を共に過ごしている男女2人ずつの仲良しグループである。
そしてこの4人の携帯からも警報が鳴る。
「まずい、地震が来る。」
あおいがそう呟いた瞬間、大きな揺れがきた。
揺れが大きすぎて思わずしゃがむ。
揺れが収まり、さくらが目を開けるとそこには絶望的な風景が広がっていた。
街は崩壊していた。窓は割れ、木は倒れていた。
そして、微妙に屋上は傾いていた。
さくらは立ち上がり、周りを見渡す。
れんは何事もなかったかのように無言で立ち尽くし、あおいもちょうど起き上がるところだった。
「すみれ…?」
一瞬、すみれが屋上から落ちてしまったかと思ったさくらだったが、すみれがきちんと柱にしがみついているのを見て安心した。
「すみれ、大丈夫?」
「大丈夫。ありがとう。」
「なあ、このままだと津波が来るんじゃないか?」
れんがスマホを見て呟いた。
「え、でもここから動くのは危ないよね」
「ここで救助を待つかあ」
「てか、これ雨降りそうじゃない?」
頭上には曇天が広がり、いつ来るかわからない津波が4人を不安の渦へと引き込んだ。
「ちょっと雨雲レーダー確認してみるわ」
「私は親に電話してみる。」
「俺も」
さくらとれんは親に連絡をとり、あおいは雨雲レーダー、すみれは今上がっている情報を探した。
「やばい。連絡ができない。」
「私もだよ。」
「今から大雨が降るかも」
あおいがボソッと呟いた。
「え、ちょっと待って、大雨?やばくない?」
「でも中に入るわけには行かないよな」
あおいは目を細めて険しい表情をした。
「濡れるのを覚悟でここで避難を待とう。」
4人は決断するしかなかった。
どんな辛いことがあっても耐えようと誓い合った。
「待って!あれを見て」
遠くから大きな波が押し寄せてきているのが確認できた。
「やばい、津波だ」
「ああ、まちが波に飲み込まれていく。」
「これ屋上まで上がってくるか?」
れんが屋上の淵を見て確認した。
「いや、わからん」
どんどん近くなっていき目の前の建物までが飲み込まれた。
波は5階建ての校舎にも押し寄せた。
波は3階と4階の間らへんの高さまで上昇し凄まじい音を立てながら広がって行った。
「なんとか、津波に飲まれることは免れたか。」
「校舎が高いところにあって助かった…」
4人はほっとした。
しかし、ほっとできる時間はそこまで長くなかった。
「ん?」
「なんか雨降ってきた。」
「まじか。」
「終わった。」
「このまま、大雨が降ったら裏山で土砂災害が起きない?」
「確かに!裏山に逃げた人やばいんじゃない?」
「いや、でも俺たちができることはない。」
「ああ、もう!」
「悔しい、こんな近くに助けられるかもしれない人たちがいるのに」
4人は呆然としながらしばらく無言の時間を過ごした。
さくらの目には涙が溜まっていた。
沈黙を破ったのはすみれのくしゃみだった。
「さくら、寒くない?」
「うん、寒い…」
「すみれ、大丈夫か?口が真っ青。」
すみれは顔が青白くなり、口の色は紫に近い青色をしていた。
「だって…寒いんだもん。」
「でも、こればかりは仕方がないな」
あおいは空を見てため息をついた。
すると突然、れんが自身の学ランをすみれの肩にかけた。
「え…?」
あまりにも突然のことですみれは驚いた。いつものれんだったら冷たく接してきていたはずだったからだ。
「俺のでよければ」
「あ、え、あ、ごめん。ありがとう」
「ふふふ」
2人の光景に思わずあおいは笑ってしまった。
「何笑ってんの?」
さくらも少し笑みを浮かべていたが、それを隠すようにあおいに聞いた。
「いや、カップルみたいだなあって」
「違…う..」「黙れ」
「すんません」
笑いで少しだけ雰囲気を変えることができても、現実は厳しくなるばかりだった。
「風が強すぎる。」
れんが耐えれないというような声で言った。
「こればかりは仕方がない。ちょっと身を寄せ合う?」
「私はしてもいいよ。そのほうが安心する。」
さくらはそう言ってれんとあおいに寄る。
「すみれもする?」
すみれは無言で頷き、3人のところへ寄った。
「なんか、新鮮だね」
「普段、こんなことしないからね」
「男子2人、女子2人が普段からこんなことしてたら周りの目がやばいと思う」
「あ、なんかヘリいる」
最恐 ヴェール @nightveil
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