あああ、もう~~~!

月峰 赤

第1話

 終業時間が過ぎた。


 売場に来るはずなのに、レジを引き継ぐ彼女は、まだバックヤードから戻って来ない。


 あああ、もう~~~!早く来いよ!帰るのが遅くなるだろ!さっさと家に帰りたいのに、何をやってるんだ!


 イライラしながら通路を見ていると、やっと来た。

 急ぐ様子も無く、遅れてきた人間とは思えない楽観した表情に嫌気が差す。

 どうせ自分はまだこの後も時間があるからと余裕ぶっているのが気に入らない。

 相手の時間ことなんて、何も考えちゃいない。


 レジカウンターに近づいてきた彼女と、お疲れ様ですを交わす。

 こっちも冷静に人の良い感じを作るけれど、心の中では嵐が巻き起こっているのを、表に出さないように必死にこらえる。


 引継ぎは特にない。この後レジに入って、会計をしてもらうだけだ。

 レジ画面の隅にある時計を見ると、すでに退勤時間を3分も過ぎていた。

 本当なら時間ぴったりにタイムカードをスキャン出来ていたはずなのに、3分もタダ働きをしてしまった。最悪なことこの上ない。


 その時、レジに向かって来る客が視界に映った。このまま立っていると自分がレジを打つことになってしまう。

 それじゃあ、と迫ってくる客に気が付かないふりをして、その場を離れる。

 この思惑に気が付いていないのか、はーいという抑揚のない声が聞こえ、すぐに彼女はレジを打ち始めた。


 よし、これで帰れる。そう思ってレジカウンターを出た時、


「すいませーん。これもう一つ無いですかー。あと発送の手続きもして欲しいんですけどー」


「あああ、もう~~~!」


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あああ、もう~~~! 月峰 赤 @tukimine

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