うどんの次は、ラーメンです

みこと。

ラーメンからも告白された

 うどんに告白された。



「えっ?」


 思わず聞き返した僕に、さやちゃんが慌てて言い直す。


「あっ、違うの。うどん屋さんで告白されたの」


 告白?

 待って。そこが聞き捨てならない!


「誰から!?」


 食い気味の僕に半身引きながら、それでもさやちゃんは答えてくれた。


「高田先輩に。"好きです、つきあってください"って。部活の後に、おごって貰っちゃった。断ると悪いかなぁ?」


 なーっ!

 んなわけあるか。


 たかが"うどん"で、さやちゃんの彼氏になられてたまるか!


「相手を好きじゃないなら“悪い”とか気にすることないよ。それにさやちゃん、“告白は、夜景の綺麗なホテル・レストランがいい”って、ずっと言ってたじゃないか。だから僕はバイトしてディナー代を──」


 って、ちょっと待て。


 僕は今、何を言った?


 もしや、バイト代でレストラン予約して告白する予定です、ってそうコクったも同然なんじゃ──。


 一瞬で青褪める僕に、さやちゃんは明るく笑って手を振った。


「やだなぁ。それはプロポーズの時の理想だよぉ」


 ほっ。

 言葉裏の意味に、気づかれて、ない?


 てかプロポーズ?


 そんな。


 僕が今までさやちゃんに告白しなかったのは、バイト可能な高校生になるまで待ってたからで。

 じゃあ普通の告白なら、いつでもして良かったってこと?



 さやちゃんとは、家が隣同士の幼馴染。


 互いの両親が遅い時、僕達はいつも一緒に夕食を食べていた。

 料理は交代制。

 小学生の頃から、高校に至る今も、その習慣はずっと続いてて。


 今夜も同じ食卓。


 僕特製のスタミナ・ラーメン。

 ホテル・ディナーとは程遠い、野菜たっぷり麺を食べ終えた彼女は。


「ふふっ。ラーメンからも、告白されちゃった」


 なっ──?!


そう君からのホテル・ディナーのお誘い、待ってるね」


 だってそれはプロポーズの時って、いま……。


 えっ、ええっ?


 さやちゃんのいたずらっ子みたいな笑みを前に、僕は真っ赤になって言葉を失う。


 ラーメンで告白なんて台無しだけど。

 返事はOK、貰えたみたい!

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うどんの次は、ラーメンです みこと。 @miraca

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