小説のキャラクターは叙述。映画のキャラクターは映像
次はキャラクター探究型のアプローチについて書いてみます。
本稿は一般的な作劇法への逆説的な立場なので、『作劇法を活用してスムーズに書けている』人は読まなくてよいと思います!
僕のように、一般的な作劇法がしっくりこない人のヒントになればと思います。
一応ですけど、僕も作劇法を元に創作した長編小説で、それなりの賞で選考突破したりはしました。
とはいえさらに、打開策を模索している次第なのです。なので、作劇法自体も多少は、活用できているとは思います。
▼作劇法の定義
ひとまず、以下のように定義しておきます。
三幕構成やハリウッド構成、SAVE THE CAT、キャンベルの神話型構成など、およそ結末まで含めたプロッティングを元に、創作を推進する方法論とします。
(僕自身もこれらで書いてきた経験もあります)
▼キャラクター探究型作家
本当のところはわかりませんが、作家のエッセイなどを読んでいると、以下のような作家は、作劇法やプロッティングよりも、キャラクター探究を重視しているように見受けられます。
・スティーヴン・キング
・アーシュラ・K・ル=グウィン
・宮部みゆき
僕がある程度好きな作家からのピックアップでもありますが。
それに、特に前者ふたりについてはそれぞれ、我が家にもこんなエッセイ本があります。
スティーヴン・キング
→書くことについて
ル=グウィン
→ファンタジーと言葉
このあたりを読んでいくと、
『キャラクターの輪郭がはじめにあり、キャラクターについて探究してゆくと、自然に物語が生まれてくる』
こんなことが書かれています。
作家の言葉をそのまま信じてよいとは思いませんし、当然ながら多数の読書体験からもたらされた、作劇法理解などが根底にあると思います。
けれど、著名作家のいくらかは、一般的な作劇法を強調せずに、キャラクターを探究することで物語を紡ぐことに重点を当てているみたいです。
とはいえこれも広義では一種の『作劇法』かもしれませんが。
▼僕が作劇法にはまらない理由
僕になぜ作劇法がはまらないのか、作品が難航しがちなのか、考えてみました。
・プロット消化に追われてキャラ描写が浅くなる
・脱線が怖いし、作者自身がそこまでキャラに入り込めなくなる
・結果、プロットは消化してるがキャラがスカスカ
僕はこうなっちゃうんです!
つらい!
キャラクターのリアリティ不足や、厚み不足がネックになってくるわけですね。
(作劇法で描けている人はそれでいいんです!)
▼そもそもキャラクターのリアリティとは
映画だと魅力的なキャラクターが、多彩な表情を持って映像としてまざまざと投影されます。
これはもう、リアルというか、見たまんまストン!です。
で小説のキャラクターは、、
面倒な文章を追って読み解いていかないといけないし、作家自体がキャラクターに強い興味を持って探究していかないといけません。
書く方も読む方もパワーが必要です。
そうして、内面と外面を強く描いていくことで、やっとキャラクターの存在が読者に伝わると思うのです。
小説は文章という媒体であるため、キャラクターのリアリティを伝えるのが、映像に比べて難しい面がある。
一般的な作劇法は、『キャラクターが伝わることを大前提』に組み立てられているけど、その前提が、小説だと違うんでは?ってことです。
ストーリーがおもしろく、プロットが緻密であるに越したことはありません。
しかし、『キャラクター探究が浅く、下手にプロットだけ完成』していると、僕の場合は失敗しやすい。このキャラクターのリアリティが問題だからです。
▼キャラクター探究型アプローチとは
ここであらためて、キャラクター探究型のアプローチってなんなのかを説明します。
僕が思うにですが、、
とにかくキャラクターを打ち立てて、
『過去』を探究する。
これだと思うのです。
物語を書こうとする時点で、ネタや大きな流れみたいなものはあると思います。
その中で、一番苦労して、変化するのが主人公です。
そして、スタートラインに立っている時点で、すでになんらかの必然性があります。
その必然性があれば、ある世界において、そのままロケットのように推進していきます。
キャラクターの過去は『ロケットの燃料』。
この必然性を探究することで、自然と物語を描けると思います。
ただですね、これはあくまで『自然』なだけで、おもしろいとは限りません!
僕の場合はプロットに操られてキャラクターが不自然になるので、キャラクターの必然性に注意しているだけですので。
キャラクターができるだけいい動きができるように、やはり『環境』『ストーリー』も整えるのが大事です。
▼キャラクター探究法 実作
さて、ここからキャラクター探究法、略してキャラ探法の四つのメソッドを紹介してみます。
この手法で書いた作品は、まだどこにも応募してません 笑
評価はわかりません!
僕はおもしろいと思っています 笑
どっかの賞で伸びてもらいたいものです。
なので、説得力がなくてすみませんが、僕の話は各自判断で参考にしてみてください!
参考までに、キャラクター探究重視で書いてみた作品を紹介します。
・滅びの国の魔女紀行【完結】
https://kakuyomu.jp/works/16817330669354890071
・泣むし翠の退魔録【途中】
https://kakuyomu.jp/works/16818023213305826143
上記はキャラ小説風の読み口ですが、重厚なやつにも適用して書いています。
というわけでとりあえず、実作をしながら模索してきた、キャラ探法を説明します。
以下のような4つのメソッドです。
・キャラ探1 深掘り
・キャラ探2 成長曲線の定義
・キャラ探3 短編小説
・キャラ探4 金型化
▼キャラ探1 深掘り
当たり前すぎますが、キャラクターについて設定や人物像をいろいろ定義しましょう。
長所と短所が同じだといい気がしています。
自作の例だと、、
『すごく慎重なキャラ→思慮深いが臆病』
『脳天気なキャラ→意欲的だが失敗する』
『強い侍→強いが無慈悲』
こんな感じで、ちょっと破綻してるくらいのやつでもいいかな、とか。
こうすると、キャラクター成長曲線はわかりやすいと思います。
マイルドなふつうのキャラクターだとしても、『長所と短所』は明確な方がいいはず。
▼キャラ探2 成長曲線の定義
作劇法を使う際でも、成長曲線を明確にして整理するようにします。
【太郎】はじめは繊細で弱気だが、強気になる
【花子】勝ち気で自己中だが、思いやりを持つ
こんなふうに明確にしておくと、キャラクターの探究のガイドになると思います。
(僕はストーリー表とかの一番上などいろんなところに、常に掲示しています)
ただ、真のキャラクター探究は、この成長すら誘導せず、根気よくキャラクターに向かい合うのかな、とも思います。
このキャラクターアークが明確だと、よいクライマックスの盛り上がりを描きやすいと思います。
▼キャラ探3 短編小説
キャラクターについて、一度短編小説化して描いてみると、造形やバックストーリーなどが見えてくるものがあります!
以上。
▼キャラ探4 金型化
僕がたどり着いた一つの答えがこれです。
はじめは作劇法などでのストーリーづくりから入ります。(結局使うんかーい!)
全体的には、以下の流れで進めていきます。
1. ストーリーや設定を作る
2. キャラクターを作る
3. ストーリーをいったん忘れる(金型化)
4. 設定とキャラクターを元にストーリー大枠を作る
5. 大まかなプロット作成
6. 書きはじめる
3の、ストーリーをいったん忘れるのがポイントです。
こうすると、『作為的な展開』をなくして、否が応でも、キャラクターと環境に向き合わざるを得なくなります。
これが、僕にとってはちょうどよいやり方でした。
また、キャラクターの脱線などをある程度許容します。
金型である、環境とキャラクターを大事にします。
そう、金型って、『ある環境、あるキャラクターがいたら、絶対おもしろくなる』っていう外枠なんです。これを発明できるかが勝負かと、、
と、こんな感じで、小説のキャラクター描写の難しさと、僕なりの考え方を紹介させていただきました!
この手法をやると、逆説的ですが、計画的なプロットづくりがうまくなると思います。
キャラクター表現や成長曲線のコントロールの精度が増すのです。
参考になったでしょうか?
それでは。。
作劇法に注意! 小説は映画じゃない 浅里絋太 @kou_sh
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