この一つとなって

学生初心者@NIT所属

この一つとなって

 この世界は残酷だ。


 全ては表面上。事実は常にどこかで隠される。


 それによって苦しむ人間がいる。


 俺はこんな世界に生まれたくはなかった。


 そう、荒れた海を見つつ考える。




 昔は当然こんなことは考える人間ではなかった。

 なんなら楽しい生活をしていた。


 でも、あのときから変わってしまった。




 普段通りの学校生活をし、放課後に遊びに行く。そんなあまりにも平凡な生活。それを繰り返していた。

 そんなひと時を壊す一瞬のことだった。


 遊んだ帰り、話しながら歩みを進めていたときだった。

 俺が少し前にいた。それが最悪のことだった。

 明らかに制限速度を超えた車が俺を轢いた。


 救急車で病院へ運ばれ、手術をした。

 しかし、運悪く、左目がガードレールのポール部分にあたり、失明をした。

 左肩当たりも骨折をし、入院をした。


 数か月し、退院をして、学校に再び通い始めたとき、皆からは心配された。

 そこからだった。左目を失明している。それが、違いを生み、奇異な存在として心理的距離を置かれた。


 そんな生活が何年も続き、なんか、生きてる意味ってあるのかなって思ってきた。

 何度も自殺しようかと考え、実行しようとした。でも、怖かった。


 それでも、繰り返せば少しずつは恐怖心が薄れていった。


 そうして今日、台風が近づいている夏のある日の夜。

 海崖へやってきた。


 もう、恐怖心はない。

 海の一つとなろう。


 そうして、こんな人生を終わらせよう。


 そう思いながら、少しずつ歩を速めていき、飛び降りていった。

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