終章 お金をかせぐのって大変だなあ……

 もらった500リンで何をしようか? 初めての給金は母親とパーティーしたいな。そうだ。久しぶりにニガウリの肉いためでも食べたいな。足はお肉屋へと自然と向かっていた。

 お肉屋の中で肉を物色する。思ったことは、牛肉ってこんなに高いんだ。ブタ肉でも100グラムで108リンする。

 とりあえずブタ肉400グラム買った。今回勉強になることばかりであった。約450リンであった。僕の一週間の賃金はブタ肉400グラムと同じ値段かと思うと少しおかしくなった。思わず、ふふっ、と笑ってしまった。

 

 帰るとすぐさま母親にブタ肉を渡そうとする。母親は相変わらず魔道具を作っていた。

「ちょっと待って! 今いそがしい!」

 しばらくして

「アカノ、何かあったの?」

「これ買ってきた! 今日ニガウリの肉いため作って!」

 母親はきっと僕をにらむと、

「またむだづかいして! どっかから盗んできたんじゃないだろうね!」

「違うよ。冒険者ギルドで仕事を請け負ってお金をもらったんだよ!」

証拠として領収書を見せた。母親はぽかんと僕を見ると、ただ黙った。

「本当に本当なの?」

「ここ何日か文章書いていたでしょ。ライターやってたんだよ。ルートム大寺院に行ったのも取材のイッカンだし。でも取材費で2000リン使ってほうしゅうが500リンだからマイナスになっちゃったけど・・・・・・」


 母親はみるみるうちに目に涙をためそしてうえんと泣き出した。

「そんなのどうでもいい。本当に自分でかせいできたんだね」

「うん」

「こんなに立派になって」

 母親は床に伏せって顔を見せないようにして泣き続けた。辺りはドンドン暗くなっていく。精霊術でホタルの光を召喚する。周りがほんわか明るくなる。

 母親が泣きながら途切れ途切れ声を震わせながら言う。「お肉、氷室に入れて置いて」

「うん」

「後で食べましょう」


 その肉はその夜、ニガウリとブタ肉炒めを卵とじにして食べた。ぼくの家のニガウリのブタ肉炒めは簡単だ。


 まずはニガウリを半分に切って、中のワタを取る。そうしてニガウリを包丁を使い、うすく切って塩水につけておく。20分ほどつけておいたらニガウリをザルにあげる。そして、火の精霊を呼び出してコンロに火をつける。その上にフライパンを置く。油を引き、ブタニクをいためる。ブタニクは、塩とコショウで味付けをしておく。肉の色が変わって火が通ったのを確認したらニガウリを入れまたいためる。

 魚をかんそうさせて粉にしたダシと黒っぽいツユとゴマ油を入れてよくいためる。

 ニガウリがしんなりとしてきたら、トウフを入れて、卵を二つ入れかき混ぜてできあがりである。


 主食には小麦粉をこねて作ったメンといわれるものをゆでたものをこれまた黒っぽいツユで頂くのだ。


 母親と一緒に食べる。母親は

「おいしいおいしい」

 とただ繰り返していた。

「そういえば記事見せてよ。記事見てみたい」

「うん。ちょっと待って」

 アカノは自分の部屋に行くと、カバンを取り出し原稿を手に持った。居間に行き、母親に見せる。

「よく書けているじゃない!」

「でもね。でもね。何度も書き直しさせられたし、最後には「ライターなめるな」って言われちゃったんだ」

今度はアカノがうえんうえんと泣き出した。母親も泣き出し、泣きながら言う。


「あんた仕事なめすぎ。私のこの仕事だって15年魔道具作り続けても生活苦しんだよ。あんたなんてまだまだひよっこよ。文章これだけ描けるんだから最低でも10年頑張ってみなさい」

 そうして親子二人して泣きながらニガウリと肉の炒め物と小麦粉で作ったメンを食べ続けた。


◇◇◇


 今回の仕事を通して思ったことは、牛肉ってめちゃくちゃ高いんだなってこと。友だちはジュース一本160リンとか500リンを惜しみもなく使うけど僕が500リンを稼ぐのはめちゃくちゃ大変なんだなって思った。


 あと親に感謝されるのはくすぐったいし居心地が悪いが、そんなに悪くない。そういや取材料入れたらマイナスだ。


 それからは市民に提供されている市民図書館によく行っては本を借りて勉強を少しずつ始めた。僕はバカだ。分からないことが多すぎる。


 勉強をしながら「ライターなめるな!」と言われたことを思い出す。思い出し泣きする。うえんうえんと泣きながら本を読み続け文を書き続けた。


 何十年も後、この少年は大人となっても努力に努力を重ね、大言霊術研究士として名を残したがその話はまた今度。


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ルートム国記 取材録 澄ノ字 蒼 @kotatumikan9853

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