第5話 そんなんじゃだめだ!
公園にあるベンチに座って今回の記事のプロットを書きつづった。起承転結にわけて! っと。こんなもんでいいか。
また、1230リンを払って国営飛行船に乗って家に帰る。帰りの飛行船の中では疲れきっていてずっと眠っていた。
帰ったのは夕方だった。
夕ご飯のシチューと黒パンを食べると急にまた眠気がおそってきた。
「今日、どこ行ってきたの?」
「ルートム大寺院」
「結構遠いところまで行ってきたのね。何しに行ってきたの?」
「ちょっと観光にね。お母さん、ちょっと寝るね。疲れた」
そのまま次の日も一日ぐーすかと眠っていた。
昼頃目を開けると水を一口飲んで脳を覚醒させる。のろのろと机に向かうと、原稿を書き始めた。大魔導士ナーリン様の像を見た感想、名物みたらし団子を食べた感想、おみくじで大凶をひいたことなどである。タヌキの像のことは書かなかった。あまりにふしぎな出来事だったからである。
そうして書き上がった記事をアムト出版所まで納品に行く。
◇◇◇
「この紙もこの紙も、人が映っているじゃないか!」
「紙って人が映っちゃダメなんですか・・・・・・」
「当たり前じゃないか!」
「君は自分が映っている紙をどこか分からない場所で使われていたらどう思うんだ!」
「ごめんなさい・・・・・・」
「まあ、それはいい。この文章はなんなんだ。もう一回やり直し。アドバイスとしては自分の文章を黙読してみるといいから」
それから何回もやり直しをさせられた。
「上から目線はやめろ」
「論ずるな! エピソードを書け」
など雷を落とされアドバイスももらった。その度にメモをする。
何回も書き直す。そして何十回目の直しの時にアムトさんが言う。
「これでダメだったらもう書かなくていいから」
そこで気が付いた。僕は文才ないんだ。文才ないけどこれだけは書き上げなくては! 書き上げた文章を半日寝かしたり、音読したりして何回も見直した。そうするとアラが目立つ目立つ。ここ何様のつもりで書いているのとかいうところもある。一つずつ直していく。
夜中に例の精霊であるホタルを召喚し、ホタルの光で文章を錬磨していく。
◇◇◇
アムトさん。
「これで大丈夫です」
僕はどっと力が抜けた。
「手が掛かったねえ。今後とも精進しなさいよ」
「はい」
「給金はギルドからもらって。そこに払ってあるから」
「ライターになれるように頑張りますっ!」
と言ったら、最後にアムトさんから
「ライターをなめるな。もっと精進しなさい」
と言われた。
最後にアムトさんからサインをもらって事務所をあとにした。
◇◇◇
仕事が終わって冒険者ギルドに戻る。お姉さんが手を振ってくれた。アムトさんのサインを渡す。
「どうでした? 仕事」
「楽しかったです」
「でしょ。私がその仕事受けたかったもの」
「じゃあ、はい500リン」
僕は500リンを両手で大事に包み込む。
「で、どこに取材に行ったんですか?」
「ルートム大寺院 蒼風の公園です。飛行船だけの値段で行きだけで1230リン取られました」
「あんたねえ。じゃあお金マイナスじゃないの。この近くにも名所あるでしょ」
「あそこは尊敬する大魔導士ナーリン様の石像があるから。見たかったからちょうど良かったです」
「まあ、あなたがいいならいいわ」
「それにしてもアムトさんにもっと精進しなさいと言われました」
「まあその通りよね。それとももう自分で出来てるって思う?」
「いや、思わないです」
「そうでしょ。そうでしょ。精進しなさい。それにしても初任務お疲れ様でした」
「貴重なお仕事紹介して下さってありがとうございました。またよろしくお願い致します」
頑張ったから少しおまけしてもらえると思ったが世の中はそんなに甘くなかった。
しっかり500リンだった。お姉さんは、
「こんな感じで仕事を探していくんです」
「お金を稼ぐって大変でしょ」
アカノは自らをあざけるように、ははっと笑うと、お姉さんの目を見据えて、
「今回身に染みました」
お姉さんは手を降ると、
「じゃあ幸運を祈ります。今後とも頑張って!」
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