第12話 湧きたつ“謎”と言う“謎”

激動の一日が過ぎ、僕は“今日”という平和を満喫していた―――もう僕をイジメるヤツもいないし、今まで培ってきた『気配を消す』≪スキル≫(※現実世界にはそんなものはありません)を活用し、なるべく目立たない様に日々を過ごしていく…それが僕の望んだ高校ライフ!

しかし―――望むものあれば、また望まぬものも付属としてついてくる…と言うのはどこの世界もあったものでして……何が言いたいのかと言いますと、授業の合間の休憩時間とかは僕だけの時間を満喫したいのに~~~


「よ、ダーリン、アンタ今日いつ頃インすんだし?」

「ちょっと三橋さん、健くんの事を『ダーリンそう』呼ぶのは止めて貰えませんか!」

「はあー?べえっつにぃーうちがダーリンの事をどー呼ぼうがアンタにゃ関係ねえしぃ?」

「関係?あーりーまーすー!何たって健くんは私の幼馴染みなんですからね!」

「はーそれなにゆってんか判んねえしぃ?アンタとうちのダーリンの関係、幼馴染みのほかになんかあんだし?」

「む・ぐ・ぐ・ぐ・ぐ……うるっさあ~い!」


『気配を消す』≪スキル≫を活用してるのに―――この2人には効き目がないものなのか…事実僕の机の近くで騒ぎ立てる始末、いやそれにしても騒ぎ立てるにしても普通のモノならばいいですよ?いいですけど…って明らかに恋愛関係のこじれみたいなものじゃないですかああ~!しかも言い争っているのが『校内一のマドンナ』と『お嬢様だけどギャル』ってえ…なんか濃すぎて胃が“ムカムカ”するぅぅ~!

しかし、実はここで異常だと思わなければならなかったのだ、それというのもそう―――この喧噪けんそうの中に欠けている“もう一人”、事実この人の所為でここ最近の僕の環境と言うものは劇的に変わった、それは喜ばしい一面もあるものの、大概はその人の巻き起こすトラブルに巻き込まれると言う始末、まあ『嬉しさ半分』『哀しさ半分』と言うヤツです、はい。


では、その“もう一人”…ヒルデガルドさんは―――と言うと……


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「(私がこっちの世界に来ているのは紛れもなくの所為…つか、事前連絡くらい寄越せ―――ての、しかも『転送』してすぐに説明ありゃまだ納得出来んのに、それがようやくですよ、しっかもまあーたややこしい事を押し付けやがってえー!チッキショーこんなことになるんなら【奈落をも喰らう“闇” あいつ】に『魔王になれ』ってな事なんざ言うんじゃなかったわ…)」


今、私がいるのはケント達の世界とはまた別の空間―――その呼称を『次元の狭間はざま』だとか『次元のよどみ』と言った様な場所だ、それに私の本来の役割とは以前までいた異世界でのエルフと言う種属の王国のお后様―――と言うのではない、あれはあれで“流れ的”に就いたようなものなのだ、ならば…“私”の本来の役割とは?


残念ながら私には私の上司―――“あるじ”と言うのがいる、私の【閉塞せし世界に躍動する“光”】と、私の相棒と言ってもいい【奈落をも喰らう“闇”】…この“ふた”の存在で仕えている“あるじ”に尽くす、私達はその為に創られた様なものなのだ。

それに私がケントの世界に『転送』されたのも一部には判っている、そう…以前までいた『魔界』なる異世界を調整する為に相棒である【奈落をも喰らう“闇”】に協力をする形で一段落終わらせることが出来た、そこで私達の“あるじ”はこう考えたわけだ―――【奈落をも喰らう“闇”】はその異世界、『魔界』の更なる安定を目指す為に『魔王』と言う地位に就いた、ここで相棒を異動させたなら『なにやってんだ』って事になりかねない…そこで目を付けたのが“私”―――と言う訳だが…


あ・の・ねえ~~~一応?私もエルフ王国のお后やってんだけども?つーか王家食い物にしようとしている不正貴族と喧々諤々けんけんがくがくやらかしてる最中なんだけども?そこんとこ視えて無かったかなあーーー“あるじ”わ!ちゃんと報告に目を通しとけっての―――全く…ま、済んだ事をアレやコレや言った処で“あるじ”は痛くも痒くもないんだろうけどさ。


それに―――そう…私がこの世界にと『転送』された


なんなんだかなーコレ……ケントの世界には有り得ない様な技術が導入されてんなあ…それは私も体感した事で判った事なんだけども―――それが…ケント達が『ネットゲーム』と呼んでいる〖プログレッシブ・オンライン〗こそが、現在のこの世界には似つかわしくない技術で構成されていると言っていいのだ。

それを『調査の上不適合と判断したら壊せ』―――だなんて…それが出来れば苦労はしないっての、ま、適当にやりますか…その内判って来ることもあるさ―――はは…ははは……


私の“あるじ”…そのまた別の名を―――『天空』と言う…


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


私がこちらの世界へと『転送』された際、私は『山本健闘』と言うこの世界の『日本』という国の原住民のベッドの中で“すやすや”と寝息を立てて寝ていた、んーーーまあーーー直前までエルフの王国近郊にある森で(憂さ晴らしの)狩りしてたと思うんだけどなあ?ま―――そこは“ご都合主義”ってな事で…

で、しばらくしてケントの家に居候を決め込み、そこで現地人としての生活を始める事にしたのだ、まーはそれなりにサバイバル出来る技術一揃えしちゃってるからねえ~現地の住民達と和気藹々わきあいあしなんてな事は私にしてみりゃ『お茶の子さいさい』てなヤツよ。


                  で


それからまたしばらくして“あるじ”からのオーダーに答える為に『次元の狭間はざま(或いはよどみ)』に通じるあなを作ったんだわさ、なので―――ここんとこあのゲームにはイン出来ていません、そしたらナンダヨーーー私がいない処でおもろかしいイベント発生しちゃってるし?ああーーー私も混ざりたかったなあ~


それはまあ?さておくとしまして―――


ケントや嫁ちゃん、みっちょんもハマっている『ネットゲーム』なるもの…私がそれまでいた異世界ではそんなものはなかった為、判断の基準とするものがないんだけど―――?こういうもんだとしたら…なんて言っていいのか、『よく出来てる』……“臭い”や“味”“手触り”までもあり、時には“痛み”や“血独特の鉄のような臭い”、“小川などに流れる生の水の味”まで、まるで現実と違わない様に再現されてある、唯一の違いは『死なない』ってことかな?私がそれまでいた異世界でも人が死んだ後には『大神殿(等)で復活した』って言う話しは聞かなかったし、それはそれで私もこの『ネットゲーム』で楽しめてるって事になるんだけどね。


それにしても…『よく出来た世界』だ―――“あるじ”の使う『インナー・スペース』に似てるって言えば似てるんだけどなあ……


それから『次元の狭間はざま』から出てきた私は“色々”(調査とか)進めるため行動を開始した、と言ってもまあ―――『行動』と言っても現実とどれほどの差異が認められるのか調べるだけなんだけれど、では具体的に何をするのか、手っ取り早い方法としては“エネミー”や“獲物”の有り様、以前までいた次元世界せかいではこう言った存在達は『死体』と言うものが遺っていた、そこから“皮革かわ”“牙”“爪”“骨”“鱗”と言った様な素材を獲得し、また“肉”などは冒険や狩猟後のかてとして活かすために採取をしていたものなのだ、そこへ行くと―――『ネットゲーム』と言うのは便利だ、便利すぎる、“エネミー”や“獲物”を倒した際『死体』は遺らないし素材が収集される…ケントに言わせればそう言うのが『仕様』だと言ってたけれど―――『権能』を使えば…まだ一次調査の段階だけど―――


「(って、結論付けるのはまだ早いか…こう言う調査や推論立てるのって私よりかは【奈落をも喰らう“闇” あいつ】の方が得意だったんだけどなあ~“あるじ”のヤツも人選間違えてるんじゃないのか?)」


ま―――愚痴垂れてもしゃあないか…ここはひとつ戻ってケント辺りを巻き込んでみるとしますか。


自分で悦に浸る―――と言う訳でもないが、”は優秀だ、そう言う風に“あるじ”によって創られていると言っていいだろう、しかし“個”では出来る事の限界や限度がある為、時にはその世界の“現地人”を利用している、私の場合ではケントや嫁ちゃん、みっちょん…私の夫であるセシル辺りがそうなんだけど、私の相棒である【奈落をも喰らう“闇”】は巧く“現地人”を使って当時の現政権の転覆―――まあこれはまた違った異世界からの侵略を防ぐ為でもあったんだけども、まあーーーあいつは私と違って頭脳派だしなあ~そう言った面は見習わなきゃいかんですか。


                    で


戻っては来たんですが―――なあーんて言うか…まあーたやってますよ、この子達。


「なあーケント、嫁ちゃんとみっちょんまだあんたの取り合いやってんの?」

「僕は…僕は日々をただ平穏無事に過ごしたいだけなのにぃ~~~もう限界だあーーー何とかしてよヒルダさぁん!」

「(…)よし、ならば一つ条件がある。」


窮地に陥りわらをもすがる感じで掴んだ“わら”にはとげがありました…それに大体ヒルダさんこの人がこう言った時につける『条件』て大概ロクなものがない、そう言うのは(まだ短いけれど)色々察することが出来ました、ああ~~~今回の『条件』と言うのもロクなもんじゃないんだろうなあーーーけれど、その“わら”にとげがあろうとも、すがらざるを得ない、例えこの手が血だらけに…傷だらけになろうとも!


「―――判った、聞くよ、条件。」

「だったら今日あのネットゲームに付き合え。」


ん?そんなのでいいの?そんな条件ならいくらでも聞いてあげてもいいけど―――しかし僕は安易だった、日頃知ったるネットゲームだからこそと油断をしていた嫌いはあった、僕の所有権(?)を巡って醜く言い争い合う瑠偉ちゃんや三橋さんになにやらを吹き込んでいるヒルダさん、この時僕は後悔をした―――トラブルの解決を図るためにとげのある“わら”にすがってしまった事に、けれど現状トラブルの解決策としてはそのどけのある“わら”にすがらざるを得ない…様々なジレンマ、葛藤が織り交ざる中、僕はログ・インした。


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


した―――のは、良かったんですが…


「(……)のう、リーゼロッテよこれはどう言う事じゃ?」

「んー?まあちょっと今やってる事があってねーーー私一人じゃ人手足らんからも一緒に協力して貰おっかなあーと思いまして」

「なるほど―――判った、そこは理解するとしよう…しかしじゃな!よりによってとは聞いてはおらんかったぞ!」

「つべこべ言ってんなしーダーリン♡ それよか今日は『ダレイオスあいつ』じゃないのな」

「まあーた『ダーリンそれ』使ってえ~!いい加減にしなさいよね!」


少しここで説明をしなければならないだろう、まぎれもなく“今”はまだPTを組んでいる状態ではない、だからこの会話は全部で、ある―――そこの処を鑑みてみると、少しおかしな事になっている…それというのも


「(…)ミザリア殿、お主“素”が出ておるぞ…それにマクドガル!お前“ガチムチ髭面中年男そのアバター”で少女の様な喋り方をするなあー!違和感だけでしかないぞい」

「(…)承知いたしました、以後気を付けますのでご容赦を」

「(…)すまねえ―――悪かった、俺様も気を付けるとするぜ」

「ところで、じゃ…リーゼロッテお前はまた何で―――」

―――てか?その説明さっきもしたと思うんだけど、ま…ちょっと今調べてる事があってね、私一人の人手じゃどうしても足らないって事から君達も一緒に…って事なんだけども?ああ言っとくけど2人には『あんたと一緒で』つったら2つ返事で返してくれたよ~よッ!モテる男はツライねえ~ギャハハ☆」


そう言う―――事でしたか…2人になにやらを吹き込んでいる内容ってそう言う事……アレぇ~?だったとしたら何でこの2人いがみ合っているんだ?あの時ヒルダさんから吹き込まれた内容は2人して聞いていたはずだ、だからお互い承知の上で…って事じゃないのか?

しかしまあ、これ以上無駄な事で時間を浪費したくない為、早速ながらPTを組み―――そして…


* * * * * * * * * * * * * * * * * * *


『で?ヒルダさん調べたい事ってなんなのさ』

『んーとね…まあ色々なデータの収集?』

『『色々なデータ』つて穏やかじゃないな?がるどっち、そう言ったたぐいの『データ』てのは公表されてるんだけども?』

『なあーんかさ、―――妙にリアル臭いとこあるんだよね、それが、それとも…』

『何の事を言ってるのか判んないんだけども―――こう言った仕様になったのからじゃないかな』

『“あの時”―――って?』

『んーーーとほら…5回目になる『大型アップデート』の時』

『ああそう言えばあの時、不具合が見つかったからって『臨時メンテナンス』入った時だよね、あれはプレイヤーから非難轟々ひなんごうごうだったなあ…』

『へえーそりゃまたなんで』

『その臨時メンテ、不具合修正するのにかなり手間取ったらしくてね、10時間―――お蔭で僕達の様なプレイヤーはその時はプレイできなかったのさ、出来たのは一部のプレイヤーだけ…手に職を就けていない人達だとか、ゲームで飯を食ってる人達だとか…ね』

『そうだったわね、それにあの後運営から“お詫び”が配布されたけれども相変わらずの“塩”対応で―――それより三橋さん?あなたさっきの威勢はどうしたの、急に黙りこくっちゃって』


それは僕も思った、さっきまでは威勢がよく瑠偉ちゃんに咬みついてさえいたのに…それが今は大人しくしている―――それもヒルダさんが今回僕達に協力を要請した理由を述べた時から…


その理由は僕達も感じていた事だった、今更ヒルダさんから指摘されるでもなくこの世界は『ゲーム』の世界だ、この世界の何もかもが僕達人間―――と言うより『システムエンジニア』や『プログラマー』達が創造つくった世界、神々が創造つくったとされる僕達の現実世界とは違いどこか現実離れしている、そこには“現実”と言うものはなく言わば“虚構”―――ファンタジーな世界でもある、普通にゲームをプレイしていれば『五感』なんて感じやしない、“臭い”や“味”“手触り”なんて―――なのに、例の『大型アップテート』が実装されてからは


すると―――三橋京子の口から、ある事実が漏れ出した…


『緊急のメンテナンスね―――あれね、そうするしかなかった…うちも企画書に目を通した時には画期的なモノだと思ったよ、それにこれは『対人要素』に次ぐ更なるテコ入れになるかもと思った、けどね…蓋を開けてみたら重大な欠陥があったんだ、アンタ達もさんざん言ってるよね、『この世界はゲーム、虚構やファンタジーな世界、現実には起こり得ない世界』だって―――けれどそこに不具合が起きた、……そう、実装する直前のテスト段階で死人が出たんだ』

『ちょ―――ちょっと待って?それって…が現実になってしまったって事なのか?』 

『う、嘘―――』

『嘘じゃない…実際起こってしまったから『緊急メンテ』を組まざるを得なかった―――まあ、犠牲者一人で済んだのは不幸中の幸いだとしか言えないけどね』

『ふーむ、ここまでの話しを整理してみると、絶対的に死ぬ要素がない世界場所で死んだ者が出てしまったと…その原因て判る?』

『原因になったと思われるプログラムは排除できた―――けれどもそれで終わったと思っちゃいない…少なくともうちはね』

『それってこのゲームのシステムのどこかに今でも潜伏してるって事?』

『多分―――けどこっちもそこを考慮して、スタッフも『メンテ用のアカウント』使ってそうしたものの洗い出しに躍起になってた…それが―――ってワケ』

『(ン?)それってどう言う事?』

『見つからなかったんだよ―――潜在的なモノ、だからは安心してた…そしたらさ』

『ヒルダさんが―――気付いた?』

『んーーー私は気付いたってワケじゃないんだけど、…これは感覚の問題だからどこがどう―――って指摘できないんだけどね、まあ今回私が『調査をする』って言うのはその気持ち悪さの埋め合わせの為ってところかな』


私に言わせてみれば『プログラムがどう』とか、『システムがああだ』とかは未だに理解出来てはいない―――そう言ったのは理解は出来ていない反面、何か不穏なものが“ある”のは敏感に感じている、みっちょんはそれを『原因になったと思われるプログラム』だと言っていたけれど、だったらそのプログラムとやらを作った人間は―――


『ねえみっちょん、そう言えばその例のプログラム作ったヤツってどうなった?』

解雇クビ解雇クービ、まあ責任取らせる為に組ませたプログラムはそいつ自身に排除させたけれどね』


その時僕は思ったものだった―――それ、なんか危険じゃない?だってプログラム作った人にプログラムを排除させるって…少し知恵の回る人間だったらその実は排除しない様にも出来る―――はず?


『(ん?)ヒルダさん?どうしたの―――…』

『悪い、別にみっちょんを疑うってな事じゃないんだけど、そいつの経歴とか履歴とか見れる?』

『それ難しいよ?だってそいつ数ヶ月も前に解雇したんだもん、それに不祥事起こしそうになってさあ、そういったモン処分しちゃってるよ』


そうか…ま、そんな処だろうな、そこんところは『国』や『企業』と言った処で変わりはない、後で追及されるような資料を残しておくってな事は“”の“”がやる事だ、そしてこれで完全に『振りだし』に―――ならばここは一つ我慢比べと行きますか、この私が諦めるか…それとも奴さんが痺れを切らして動き出すか―――まあ絶望的な事を教えてやるけど、私が『諦める』ってのは万が一にもないからなあ~?(クックック)

(※ちなみにこの日は『データ採集どり』も並行させてプレイを満喫しました♪)


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


なにやら我のしている事を嗅ぎ回っている輩がいると見られるな…それにしても未だに魔術やその系統の研究が遅れておる―――いや、おこされてもおらぬようなこの異世界で『オンライン・ネットワーク』なる技術が発達しておるのは驚きであった、それに彼の学術がおこされてもおらぬような未熟な知識体系…故にそこに付け入るスキが出来ようと言うもの―――

しかし…我が仕掛けておいたモノに気付きおるとは、あの『三橋京子』とか言う小娘…侮れんと言った処か、まあ良い我自らが扮し提供したモノの処分、我自らが為す事など雑作もない事、幾分か“主神あるじ”様のご希望には添えかねるが―――それはまた期日がいかばかりか遅くなると言った処よ、それも誤差の範囲でなあ?

それに“処分”したのも表面的なモノだけ、その根幹に関わるモノは深く…そしてまた静かに潜行するが如くに蝕んで行きさえすればよい、そうすれば―――我が“主神あるじ”に捧げる魂…上質なモノで量もふんだんにある、要らぬ邪魔さえ入らねば我が“主神あるじ”の復活も―――夢の、そのまた夢では、ない…



『八坂佳助』―――どこにでもいる様な名前を持つこの人物こそは、現在から6ヵ月も前に『トリプルブリッヂ・コーポレーション』に在籍をしていたプログラマーでした、けれど…その彼の独白にもある様に、―――人間ではないとしたら“彼”と言う存在は一体何なのか?一部の彼自身の独白を読み解くとしきりに『主神あるじ』と言うワードが出てくるのだが?(そう言えばヒルデガルドも時たまにそのワードを使っていた気がするのだが)

それに山本健闘が指摘した通りに首謀者自身に処分させるのは危険ではないかと言う事でしたが、そこはやはり指摘した通り、目に視える部分を排除中核部分になる根幹的なモノは未だ潜在し続けていた、それに―――彼は敢えて不具合を起こさせてみせた、つまり折角作ったプログラムも実働出来なかったら役立たずもいい処、確かに“彼”やヒルデガルドには時間に縛られ“焦る”と言った様な感情は持ち合わせていないにしても、時間は無限ではない―――その事も知っていた…実際に稼働するかどうかを見極めるために人身御供ひとみごくうは必要だった、八坂佳助じぶんが仕組んだプログラムが実際に働いてくれた事により、彼はその責を負いプログラム(ダミー)を処分、その事により一時的に三橋京子達の目を晦ませ、彼自身は高みの見物へと洒落込む事にしたのです。




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