ねこかぶり

@1208neko

ねこかぶり

「おはよ!」

「おはよー」

こんにちは、私は高校二年生17歳のみり。

最初に挨拶をしたのは毎朝一緒に登校している私の友達、あや。

登校初日に出会って、同じ中学じゃなかったのに最寄りが同じだと知って仲良くなったクラスメイトだ。

私は特に劇的にすごいことがあるわけでは無いけど、ごく普通に平和に毎日を過ごしている。

今日は夏休みが明けて随分久しぶりに学校に登校する日。まだ家でだらだらしてたかったのにな。

「すごい眠そうだね、また夜更かししたの?」

「まぁ夏休みだからね。」

他愛もない会話をしながら学校に向かう。長期休みは昼夜逆転するタイプなので休み明けが1番きつい。

眠いけどがんばろう。


「あ!猫いるよー!!!」

あやは動物が大好きだ。明るくて素直な性格だし、愛嬌がいいからか、動物にも好かれやすい。

顔が怖いと言われがちな私に1番最初に声を掛けてくれたのもあやだった。

この猫はこの前の帰り道も会ったからたぶんこの辺りに住んでいるんだろう。

「この猫ちゃんみりちにめちゃ懐いてるね!」

「えぇ…大丈夫かななんか匂うんかな…」

「えぇー?全然大丈夫だよぉ?」

めっちゃ見つめてくるんだけど…かわいいからいっか…


学校は少し遠い。けどのその分人と話せるから後悔してない。

「おはようございます!久しぶりの学校頑張っていきましょう。」

あぁ…学校はじまっちゃったよ。あくびがでる。


今日もやっと1日が終わった。

「帰ろうあや。」

「うん!」

久々の学校疲れたな。すっごく眠いし。

「じゃあまたね。」


朝まぶしい。よし、今日も準備できた。

あやが待ってるからはやく行かなきゃ。

ツルッ!ガッ!ガツー!!!

「いっだぁぁ!!!」

階段痛!!!!最悪だ絶対あざできた

あれ…?なんか目線が低いな

あ、ん?しっぽ?肉球?えもしかして猫になってる?

すごい窓にも軽々登れる。あ、あや来ちゃってるよ。


「えっ!かわいい!外から猫降ってきたんだけど!」

「私!猫わたし!!」

「しゃべったァ!!!!みりちだ!!!!」


「そうなんだ。突然猫になっちゃったんだね。

どうしよう、一緒にいてあげたいけどそろそろ行かなきゃ遅刻しちゃう。」

「うん。私はとりあえず猫として生活してみるね。」


じゃあね!というあやを背にこれからどうしようかと考えた。

近くに猫が住んでることを思い出し、昨日会った場所に行くことにした。

足はやくて便利だ。



猫って虫食べるんだっけ?私の中の猫の本能が目の前にいるバッタを狙おうとしてるんだけど。

むりむりむり

あ…?

(知らないやつだな、何してるんだ?)

知らない猫が先にバッタ取ったー?!

(ここんにちは新参者です、。)

(どこのやつか知らんが姐さんに挨拶しとけよ。)

危なかったー!バッタ咥えて気絶するとこだった。

姐さんってのは多分今会いにいこうとしてる猫だ。本能がそう言ってる。




(あらこんにちは、みりさん。)

(私の名前知ってるんですか、)

(ええ、まあね。)

(あなたがなぜ猫になったかでしょう?)

(え、はい、まあ)

(えぇとね、なぜ猫になったかというとね

猫を被ってるからよ。)

え。

(私このことわざ嫌いなの。猫をわざわざ悪い意味のことわざにする必要ないじゃない。

というわけでとっととここから離れてちょうだい。)




猫、被りか。

なんで今更そんなこといわれなきゃいけないんだろう。

でも…、



私は中学の頃お母さんが事故に遭って家にだれも親がいない日々が長く続いた時期があった。

しかし私はその生活に耐えきれず学校から逃げ出してしまったし、酒にもたばこにも手を出してしまった。

だから心にいつも負い目を感じているし、たしかにあんなに清いあやは私と友達であるべきでないと思う。

それが理由で中学でも友達なんていなかったし、今を楽しんでる自分が間違いなんだろう。



「やっと見つけた!!」

いつの間にか日はオレンジに傾いていた。

「猫から戻る方法見つけたよー!」

「え、いいよもう別に…猫のまんまで。」

「いいからいいから」

あやはおもむろにみかんと携帯を取り出した。

「えっとね、おでこにみかんをのっけてね!ねこあつめを開きながら携帯で叩くんだって!」

もうなんでもありじゃん?

「はっ!!!!!!」ベチーン

「うわああ」


人に戻ってるわ……こわっ

「あ…でも私…もうこれからあやと関われないって言うか」

「えっと、どうして?」

「…私、自暴自棄になって酒とたばこに手出した時期あって…や、その…」

「うん、全部話して」

「私なんかこんないい性格のあやに見合わない人間って言うか…今までそれ黙って付き合いしてるわけだし、」

「ううん、私、全部知ってるよ。」

「え?」

「全部知ってる、家に遊びに行った時みりのお母さんが言ってたの。」

えー…

「でもね、私そんなことで友達辞めたりしないし…」

「みりは高校ではそうならないように頑張ったんでしょ?」

「…」

「少なくとも今までみてきたみりは、すっごくぶっきらぼうだけど優しい子だよ。」

「だからこれからもよろしくね。」

「うん…うん、ありがとう。」

「こちらこそよろしくね。」


心のどこかでいつも引っかかっていたことが解けたきがする。

自分でも気にしないようにしてたつもりだったんだけどな。

明日は一緒に学校いこうね!とあやが満点の笑顔で言った。

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