第十一話 親友

「あっ..」


 言葉を失った、この世には偶然とか、奇跡とかいう言葉があるが私に起こったことはまさにそれだった。

 目の前の少女は確かに見覚えのある少女で、久しぶりに見る顔がそこにはあった。あれから、一度たりとも会うことがなかったがそれは当然のことである。

 彼女を見ると以前よりかなり成長していることがわかった。髪は茶髪、いや伽羅色と言った方がいいだろうか、光沢のあるロングヘアは彼女の美しさを増長させる様に、エメラルドの様な翠色の目は以前よりもよほど透き通っている様に見える。およそ私にとっての唯一の友達とおんなじ容姿だった。施設の中で唯一私と仲良くなった子と同じ容姿だった、いや、身長は伸びているし、顔も前よりも可愛くなっている。およそ数年ぶりの再会だとはいえ、言葉が詰まっていたのだ。私としてはなんとないことだが、彼女にとっては私以上に重要な記憶に他ならないはずなのだから。

 彼女は以前施設を脱出した、なんらかの方法で、いや答えは分かりきっている。“魔術”だ、そして私はあの他の人が立ち入らない様にできている施設の脱出方法として使えるものを一つだけ知っている。【門の創造】自分の目の前に“門”を作り創造した場所とその“門”を繋げて移動する最高の魔術。彼女はその情報ん手に入れていたのだ。そして当日それを使った、多分その時は門の阻害の実験段階でその時門の阻害は施設に貼られていなかったのだろう。そして門の創造をつかいながらに流れてここに着いた。そう考えれば分かることなのだが偶然にしては出来すぎていた。


思考を巡らせる


 私は能面を使った、外部に私のことが漏れることは無いはずだ、だったらそれ以前に漏れていた?いや、そんなことはあり得ない先ず魔女の存在はいう可能性もあるかもしれないが私個人を売る様なことはしないはずだ。だったらなぜ?


「っ!」


 私は思い違いをしていたのだ、能面の力のことを、これは人に情報の拡散、伝達を防ぐ力はあるが、記憶を消す、隠す、曇らせるの様な能力はない、つまり、つまりだが情報を伝えなければ私のことをここに来させることができるのだ。それは単純なことだった、孤児院の中でどの子が来てほしい?とかどの子が優秀そう?とか、そんな簡単な問答で私を指差せば出来ることだった。当然親は、それを了承するだろうなぜなら“娘”の要望だからだ。肝はここだ、この家庭の親は子供の要望はできる限り応えることができる、できる限り了承することができる。それだけのコネを、金を、組織を持っているのだ。


「久しぶりだね、今の名前はなんでいうの?」


「此方こそ久しぶり、私は南雲陽毬。というかお父さんから話は聞いてるんじゃないの?」


「聞いていたけど形式的にね、私はセレネア•スミス、ここに来るとというか戸籍を変更するとセレネア•スミス•南雲になるのかな?」


「ふふ、多分そうなんじゃないかな。いやぁ〜久しぶりだと募る物も沢山あるだろうし♪」


「こっちおいでよ!リビングがあるんだ、そこのソファーで話していこ?」


 私は彼女に着いていく、彼女は何か施設にいた頃より陽気で元気だった。そんな印象を受けた、もともとその様な人間性だったのかもしれない、施設にいてそんな人間性が押さえつけられて、ここに来てから回復したとか。


「さぁ、そこすわってすわって」


「そうだねー、なにから話そうかな..」


「施設から脱出した後からとか?」


「そうしよっか、私は魔術“平行世界”を使って逃げ出したんだ」


平行世界?なんだ、それは聞いた事のない魔術だ。私の知らない魔術、ほしい


「平行世界?」


「そう、平行世界。その名の通りだよ、あの魔術は平行世界を作り出すって言う魔術だなんだ、平行世界の自分を適当なところに移動させるでしょ、そこの自分と私の座標を入れ替えるの、すると平行世界のいた自分の位置に私が来るの。そこからは簡単、その平行世界を壊せばいいだけ、簡単でしょ?」


言っていることは理解できる、けれどそれは本当に魔術なのだろうか?平行世界を作り出すなんて魔法の領域なのじゃないか?彼女にはそれを作り出すだけの何かがきっとある筈だ、何か私の魔女の力と同じ様なナニカが。


「そこからは大変だったんだけど、私は移動した後数日間は放浪していた、それもボロボロの状態で、そしてあの日。会ったんだ、お父さんに、あれからはお父さん大変そうにしてたけどなんとかなったんだよね、私には何も考えなくていいって、そう言って。そこからはここでずっと暮らしてる。」


「それで今に至る?」


「そうだね、セレネアちゃんも教えてよ、私が出て行った後のこと。」


「ワタシは…」


 私はあのことを少しぼかしながら言った、流石に人を殺したこととかは言いにくかったのだ。私はそれまでの筋道をあらすじを淡々と溢していっていた。



「そっか大変だったね」


「ううん、今はもう大丈夫」

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魔術狂いは終われない、——魔術を、魔法を夢見ていたんだ。 水瀬 若葉 @jacknextplay

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