独立予定地
そして前線からアラクナさんの背に乗って(下半身を糸で縛り付けられ)、俺達は独立予定地――ダンジョンまでやってきた。
「ここが目的地かしら? 大きな岩が一つあるくらいで、他に何もないけれど」
森の中に唐突に現れた岩場に、殺生石みたいな大岩がごろんと転がっていた。
岩場はそこそこの広さがあり、村一つ分くらいにはなりそうな感じだ。
改めて中央の岩を見る。アラクナさんの蜘蛛部分を含めた分に相当する巨大な岩だ。4tトラックくらいのサイズ感である。
「この岩で下り階段を塞いでるんだってさ」
「ああ。なるほど……ちょっとどけてみますわね。よっと」
ひょいっとアラクナさんが身の丈を超える大岩を軽々どけた。
その岩発泡スチロールか何かでできてるんですか? と言わんばかりの軽い動きだが、勿論本物の大岩である。アラクナさんがおかしいのだ。
「あら、中からかなりの気配がしますわねぇ。あ、オウカ、これ持ってて頂戴」
「あい、姐さん。ほらオルガ、パス」
「おっとと、急に投げるなよあぶねーな、頭に当たったら痛いだろ」
……オーガバニーズも軽々受け止めてる。それビーチボールじゃないんだぞ? 大岩ぞ? スゲーなオーガバニーズ。
「ちょっと! そんな振り回してコガネに当たったらあぶないでしょ。貸して、こっち置いておくから」
「あいよ、イロニム様どーぞっと」
「まったく。よいしょっと」
引っ越しの時のダンボールかな? という程度の感じで大岩を運ぶイロニム。
……うん。アラクナさんだけじゃないな、バニー全員だな。なるほど。アラクナさん以外も普通におかしいというかバニーだったな。うん。
つまりバニーならこのくらいの大岩は普通にただの蓋にすぎない、と。
魔法系のイロニムですら軽く運べてしまうんだから、他のバニーなら言うまでもないな。……サナチ様がこれ運んでる姿は想像つかないけど。
岩の下には、下り階段があり、そこからがダンジョンになっていた。
下り階段を覗き込むイロニムとアラクナさん。
「あらあら、いつスタンピードが起きてもおかしくないですわねぇ」
「一発魔法ぶちこんどこうか。ナミが来る前に少し間引けるでしょ」
「そうね。爆発系でも投げとけば良いのではなくて? 適当に威力上げとけばそれなりに行けるでしょう」
「じゃあそんな感じで。グレイトアエロバースト」
イロニムがダンジョン入口の下り階段に魔法をぶっぱなす。と同時に、アラクナさんが岩を糸で引っ張ってきて蓋をした。
行き場のない風のエネルギーは予定通りにダンジョン内を走って多くのモンスターを仕留める。
しばらくゴン、ゴンッと風がフタの岩を叩いているとは思えない音がしていた。
……あるいは、逃げ場を失って岩の先に活路を求めていたモンスターの断末魔だったのかもしれないが、なんにせよ少しは間引けたのかな? うん。
本格的にダンジョン攻略を行うのは、ナミミ様が来てからになる予定だ。
それまでに休憩場所になる小屋でも建てておこうかな?……アラクナさん達にはキントキを給料として払おうじゃないか。
「あら、じゃあキントキ10本でいいわよ? 蜘蛛糸使えば小屋くらい簡単に建てられますからね」
「それは頼もしい。さすがアラクナさんですね」
「ふふふ、素敵な巣を作って差し上げましてよ!」
「コガネ、私も手伝うからキントキ頂戴ね」
「ああ。イロニムもよろしく」
そして本当にあっさりとログハウスが建った。イロニムによる魔法での加工は勿論、蜘蛛糸でくっ付けられるのも便利だなぁ。しかも隙間も埋められる。強い。
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バニーにあらずんば人にあらず ~バニーガールに支配された世界でニンジン屋を営む~ 鬼影スパナ @supana77
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