どきどき混浴温泉
ふもと かかし
どきどき混浴温泉
今日僕は大好きなあの子と、初めての旅行に出掛けている。目的地は鬼怒川、そう温泉旅行だ。
朝からバタバタと準備して車を走らせていく。圏央道をひた走り東北道へ入った辺りでお昼を迎えたので、パーキングエリアで昼食タイムとした。
再出発すると食後という事もあり、あの子は助手席で子犬のように無邪気な寝息を立てている。
「寝ちゃったの」
つい声を掛けてしまう。一瞬、重たい瞼を上げてこちらを見たが、またすぐに夢の世界へと旅立って行った。そんなあの子が、僕は堪らなく愛おしい。
宇都宮インターで高速を下りるが、そこから暫くは有料道路を走るので然程代り映えはしない。その後、下道に出ると、あちらこちらと寄り道をしながら15時過ぎに目的のお宿にチェックインした。
受付の女性スタッフが、施設案内や注意事項などをにこやかに説明してくれる。彼女はとても良い人だ。なんて言ったって、あの子の事をとても可愛いと褒めてくれたのだから。僕としても鼻が高い。
部屋に着くと荷物の整理している僕を尻目に、あの子は部屋の中を見て回っている。はしゃいでいる姿も愛くるしい。
「綺麗だね」
窓から見える景色に目を奪われているあの子に声を掛ける。振り返ったあの子の目は爛々と輝いていた。
「こっちにおいでよ」
座卓に腰掛けてあの子を呼べば、向かいの席では無く僕の隣へと陣取る。その行動一つとっても可愛くて仕方が無い。体を預けてきたので、僕は優しくあの子の頭を撫でる。目を細めて気持ちよさそうに微笑んでいるあの子に、僕のハートは鷲掴みされてしまった。
「そろそろ時間かな」
僕は前もって貸切風呂を予約している。折角の温泉なのだから、あの子と一緒に入りたい。大浴場は当然混浴ではないので、これしか方法がないのだ。
緊張からか、僕達は部屋から浴場までの間、一言も交わさなかった。
脱衣所で服を脱いで、浴室の扉を開ける。熱気と共に温泉の独特の匂いが漂って来た。何だか気恥ずかしい僕と違い、あの子はいつも通りの様子で浴室へと入ってい行く。
気になるのか、あの子は湯の匂いを嗅いでいる。その間に僕は体を湯で流してあげた。シャンプーは禁止されているから、それだけで湯船に入って行く。僕は湯船で寝そべると大きく伸びをする。
寛いでいる僕の側にあの子が寄って来て、ぺろりと僕の頬を舐めた。僕はあの子の全身を撫で回す。
「はははっ、気持ち良いのか」
「ワン」
ペットと混浴出来る、このホテルは最高だ。
どきどき混浴温泉 ふもと かかし @humoto_kakashi
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