0-2「未だ慣れない日常茶飯事」
「マジかよ…」
連絡から5分後、現着した俺はその凄惨な光景に言葉を失った。
普段であれば通行人と車両でごった返している商業地の大通りには、実に十数人もの死体が転がっていたのだ。
死体はどれも同じ格好で、一様に黒色のインナーの上に灰色のアーマーを装着している。
「中伐の奴らか…」
中伐とは略称で、正式名称は中部怪人討伐警備株式会社。中部地方を拠点に活動している、大手怪人討伐企業だ。死体の装備を見るに、彼らは中伐から派遣された戦闘員だと思われる。
「く、来るなぁ!」
向かいの歩道から声が聞こえる。ここからだと街路樹が陰になって見えないが、どうやらまだ生存者がいるらしい。
声の主に駆け寄ろうと踏み出した、その瞬間だった。
「よせ!やめ───」
───バギッ…
突如、街路樹の根本にヒビが入り、バキバキと音を立てながらこちらに倒れてくる。その向こう側に、人型の怪物の姿が見えた。
全長約二メートル。赤紫の表皮に、ぶくぶくに太った体。そして縦に裂けた口だけの頭部。
紫雲の情報通りの見た目だ、報告にあった怪人はこいつで間違いないだろう。
よく見ると、一人の戦闘員が怪人の右手に顔面を鷲掴みにされている。いや、されていたと言うべきだろうか。
だらりと脱力した四肢に、ヘルメットごと窪んだ後頭部。あれはどう見ても死体だ。おそらく、さっきの声の主はこの人だろう。
「…おい」
もう少し早く来ていたら。なんて言葉には早々に蓋をして、ベルトに装着していた鞘からナイフを引き抜き、逆手で構える。
「その人を、さっさと離せ」
俺の言葉に応えるように、怪人は右手の死体をゴミのように投げ捨てる。
俺と怪人が駆け出したのは、ほぼ同時だった。
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