第7話 おっさんフィッシング
ゴーレム工房からの帰り道。
舗装の剥がれた道をミーナが二体のゴーレムを連れて堂々とした様子で歩いている。
路地裏を通り抜けようとした所で、前方から来た三人の男達が行く手を塞ぎ、更には元来た道もゾロゾロと現れた男達に塞がれて、ミーナ達は囲まれてしまった。
「お嬢ちゃん。ウチのモンに手ぇ出したらしいなぁ?」
「あん?」
『わぁー!? たくさんの銃だー!?』
前方から来た男達の内、真ん中の一人が因縁を付けると、左右の二人が勝ち誇った顔で銃を向けてきた。他の男達も同じように銃を向けてきており、絶体絶命である。
「いくら強えゴーレムを連れていても、この人数ならタダでは済まねぇぜ!」
「へへへ……。痛い目に合いたくなければ、降参しやがれ」
左右の暴漢達の言葉にミーナは余裕の態度で、ABはとぼけた態度でそれぞれに対応した。焦った様子の『ミーナご本人』とは対象的な二人は、現状を危険とは思っていないらしい。
「ッケ。昼の連中か。人数だけは揃えてきたみたいだな?」
「こんなに多くのヒトを惑わせてしまうなんて!? 本当に私ったら美しすぎる! 美しさは罪って奴ですね!」
『二人とも挑発しないで!? 危ないの!』
その態度に怒った暴漢の一人が威嚇のために空へ引き金を引こうとすれば、何故か固まってしまった。彼は不思議そうに引き金を引こうとする。
「おいおい、しっかりと整備しておけや!」
「いやいや、さっき整備したばかりで……」
「くはっ、ははははは!」
言い合いをする暴漢達を見て、泣くほど爆笑したミーナ。
彼女は涙の溜まった金の目をコートの袖で拭いつつ、ABに種明かしを任せる。
「店員型ゴーレムの前で、まさか拳銃程度の火器を使うなんてな……教えてやれAB」
「手を上げろ〜! な〜んてね。こんなの品出しに比べたら、ちょちょいのちょいですよっ!」
肩の長さで揃えられた髪を軽く逆立てさせたABの宣告とともに、暴漢達は両手を上げてバンザイした。
――ABの持つ品だし用浮遊術式が炸裂したのだ!
「なんだこりゃ!?」
「何事だ!?」
「おいおい、お前ら何やって……」
「てめぇも同じだよ!」
「なにぃ!?」
暴漢達が間抜けにも揃って両手を上げている街の路地裏に、ミーナの高笑いが木霊する。
#####
ボロい場末の酒場の入口が勢いよく開かれた。
何事かと、それなりに居る客達が視線を向ければ……。
彼らの目に飛び込んできたのは、ゴーレム達を引き連れたミーナであった。ABは文句を言いつつ、ワゴンセールは黙々と、ボコボコにされた様子の暴漢達を引きずっている。
「一杯おごって貰う約束だったよな? 探索は大成功だったぜ!」
『ひどい目に遭ったの……』
「そうだね。無事の帰還を祝わせて貰うよ。本当に」
そんな客達の視線を無視してカウンター席に腰掛けたミーナは、店主から差し出された色つきの砂糖水にニヤリと笑った。
それを一口飲んで渋い顔をした彼女は喜ぶミーナご本人の声を努めて無視しながら、立てない様子の暴漢達を指さしつつ尋ねる。
『わー! あんまいの!』
「……むぅ。こいつらを使って、とあるビジネスを始めようと思うんだが、中身無しの少女型ゴーレムと……あと近くに探索済の遺構はあるか? ゴーレムは欠損があっても良い。いや、欠損がある方が良いな」
「どちらも少しならあるよ」
「ククク……。こいつらと……あとここに居る連中にも酒をくれてやってくれ。報酬の前払いと、成功のお裾分けだぜ」
「毎度あり」
店主の返答に笑みを深めたミーナは、ビジネスという言葉に聞き耳を立てていた客達と、己の今後について不安そうにしている元暴漢達に酒を振る舞う。
歓声をあげる暴漢達。
その様子を眺めるミーナの金目は邪悪に細められていた。
「ケケケ。人材の有効活用ってな」
――かくして釣ったモノで『釣り』を繰り返す手法を編み出したミーナは、町の治安向上に貢献しつつ探索者としても大成功。汚染の除去された場所で暮らすことを許されて、ミーナご本人の望みである安全安心な生活を手に入れたのであった。
――あとがき――
『狐耳少女inおっさん~少女が手に入れた力は最強のおっさん!?~』を読んでくれてありがとうございます!
先天的な変異のあるミーナはおっさんのお陰で幸せに暮らせました!
釣り餌になった暴漢さん達……?
彼らも何だかんだで、それなりに楽しい少女生活をやっていることでしょう。(ある意味でこっちもTS!?)
これにて、ハッピーエンドです!
もし良ければ星でのご評価をよろしくお願いいたします。
コメントもお待ちしております。(欲深い)
他にもこんな作品を書いています。
(以下は作品へのリンクです)
眠れぬ騎士のダンジョン二重攻略! ~日中は少女冒険者と高速周回し、深夜は黒幕系受付嬢とチート攻略する~
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こちらも読んで貰えると、飛び上がって喜びます。(笑)
もしも気が向きましたら、よろしくお願いいたします。
狐耳少女inおっさん~少女が手に入れた力は最強のおっさん!?~ ランドリ🐦💨 @rangbird
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