やっぱり面白い

今日も監視員の仕事。この仕事も慣れてくると本当に面白いものだ。動物たちの会話というのは常に不思議だから。どこからその言葉を知ったのか疑問に思ってしまうことも多い。けれど、それが動物たちなのだ。

 今日の面白かった話も共有しておこう。

 印象に残ったものといったら……


『見なさい、あの男たち手を繋いでいるわ!』

『あら〜妄想が進みますわ〜』

『人間は雌雄がハッキリしているものね』

『海の生き物ではハッキリしてないのがいるって聞いたわよ』


という羊たちの会話だったな。

 まさかそんなこと話しているだなんて思っていなかった。人の趣向がそれぞれだというように羊の趣向もそれぞれなのだろう。しかし、どこからその知識を拾ってきたのか……

 まあ、気にしないでおくか。


 そうだ、先日ふれあい広場の動物たちの不満を解消するために制約を設けたんだ。

 ふれあい時間はお一人十五分まで。撫ですぎない、えさを与えすぎない。もちろん、このようなのでどうにかなるとは思っていない。制約があっても破る人はいる。

 それでも


『最近撫でまくる人が減ったんだ』

『僕らがふれあいコーナーのだからって今まで容赦なかったもんね』

『いくら人間に触られるのに慣れてるからってさ、触れられすぎるのが嫌なのもいたから嬉しいよね』

『時間を設定してくれたのもありがたいね』


こんな会話が聞こえてくると僕のしたことに意味があったんだと思える。いつもいつも楽しく仕事をさせてもらってるのはこちらだというのに、感謝してくれている声が聞こえてくるのは本当に嬉しいものだ。

 

 僕がする仕事がこれからも役に立つように。君たちが生きやすくなるように。君たちが苦しまなくていいように。僕は僕にできることを精一杯頑張るから。

 どんな言葉だって聞き取ってみせるから。僕が最初から持って生まれた力ではないけれど、支給されて君たちの声が聞こえるようになったから思えることだけれど、君たち只野動物園の動物たちが、面白おかしくずっと笑っていられるようにしてみせるから。


 これからも、どうかよろしくね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

動物園の動物たちの生活 紫雲 橙 @HLnAu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ