動物園の動物たちの生活

紫吹 橙

動物って面白い

 僕は只野ただの動物園の監視員。

 今日も僕は仕事である。それも人間が寝静まった時間からが僕の仕事の始まりだ。

 この仕事は嫌いではない。

 動物たちが脱走しないかとかの監視をする仕事だけれど、ある道具が導流されたおかげで退屈することがなくなったのだ。

 早速僕はその道具を耳につける。

 

 動物が話していることが翻訳されて人間の言葉で聞こえるイヤホン。

 それをつければ動物の言っていることが分かるから、何を企んでいるかも何かストレスを感じていたとしてもすぐに分かって上に報告することができる。

 その中でも面白いと思った会話がある。



『ねぇねぇ、最近カッコいいの入ってきたと思わない?』

『えー?頼りないのばっかじゃない?』

『そう?あの長身の飼育員とか良くない?』

『ガタイがいいだけで怖いわ。やっぱり同じ種族のオスが一番よ』

『それもそうね〜』


 信じられないがこれはウサギの会話である。正直僕も驚いた。

 まさか飼育員の男のことで恋バナをしているだなんて……まあ、動物園でつねに人に関わっているからそう思うのかもしれないなあ。

 あ、まだあるんだった。


『あー脱走してぇ』

『んなこと言ったってこんなとこじゃダメだろ。それに飼われてた方が食いもんもらえてよくね?』

『でもよー野生の方が楽しんじゃねえの?飯は自分で用意すればいいしよー』

『とか言ってお前自分でする勇気ないから俺に同意求めてんだろ?』

『は?いいし、同意なんか得られなくたってやってやるぜ!』


 これはどの動物だったかは忘れたんだけど、多分サルとかだった気がする。

 飼育されてるとストレスが溜まってしまうのだろう。だから次の日実際にしようとしていたけれど、事前に報告しておいたから脱走は未然に防がれた。


 こんなふうに色々な動物たちの会話を聞けるというのはとてもいいことだとは思う。

 時々嫌なことも聞いてしまうが……


『今日のふれあいコーナーの子供がベタベタ触ってきて嫌だったなあ』

『そうだよねぇ。なんか制限設けてもらえないかな?』

『そうしてもらえると嬉しいよね』


 ふれあいコーナーに出ていた動物たちの本音。今まで気にせず動物に触れてきたけれど、イヤホンが導入されてからそんな本音も聞いてしまってちょっと心苦しくなった。

 そのストレスがなくなるように上に掛け合ってみたから今では少し改善されている。


 僕がこの仕事をするようになって良かったなって思うのはそういうところである。

 僕がしたことによって動物が少しでも過ごしやすくなるならそれでいい。

 それが僕がこの仕事をする意義だと思うから。


 だからこれからも、人間が寝静まった頃に会話をする動物の日常を覗かせてもらおう。

 イヤホンさえあれば言葉は分かるけれど、それ以外にもなにかあると思うし。

 

 面白おかしい動物たちにまた笑わせてもらって今日も頑張ろう。

 

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