第2話「才女様との契約」
「風紀委員会を創るって…??」
あまりにも急な話で頭の中の整理が追いつかなかった。
「そのままの意味よ、風紀委員会を創りたいの。」
ラノベなどの二次創作によくあって現実にはあまり無い風紀委員会、それを才女様は自らの手で創ると言っているのだとようやく理解できた。
しかしまあ、あの才女様がオタクだなんて未だに信じられなかったし、才女様には申し訳ないが俺と趣味の点で言えば同類の人間となる。
「それで、協力してくれるのかしら?」
そうだ、まだ答えてなかったな。才女様の提案である以上、俺に拒否権は無く従わなければならないのが俺のなかのルールだ。
「できる範囲で、に限りますが俺でよければ。」
選択肢はこれしかない。カーストトップの人に逆らえば俺のような弱小陰キャは
「まあ、唯一私から話しかけれるのは如月君ぐらいしかいないし?」
「それはどういうことですか…?」
「大抵の人は向こうから話しかけてくるし、そもそも私はあんまり人前で話すのは得意じゃないのよね…」
いやいやいや、生徒会長として中学校では堂々と演説してたじゃないですか、その才女様がどうして。
なんて口に出せるわけがないため心の中で叫んだ。
しかし、少し分からなくもない。
今思い返せば中学時代、才女様自身から話しかけには行くのは先生に用事があるぐらいしか目にすることがない。つまり、一方的に相手から話しかけられているということだ。
しかも同時に何十人という人からだ。
「聖徳太子でも無いんだから…」
つい心の中で言おうとした言葉が口に出てしまった。
「聖徳太子?どのような流れでその名前が」
才女様はふふっと笑いながら言った。
変には思われただろうが、才女様が笑ってくれたのなら良しとしよう。さて、今からはなぜ“聖徳太子”と俺が言ってしまったのかの説明をしなければならない。
「いつも複数人から同時に話しかけられてるので聖徳太子でもない限り言ってることが分からないんじゃないかって事です」
「たしかに、全てが全て聞き取れる訳じゃないけど5人ぐらいなら同時でも分かるわよ?」
「マジかっ!」
「まあ、高校に来てから同時に話しかけられる人数も中学の時よりも増えたからスルーしちゃってる部分も結構あるけど」
現代に聖徳太子現る、的な内容で有名になれるのではないだろうか。
という冗談はさておきだ、才女様も人間であり、悩み事は多いはずだ。
「なんか、すみません…」
「謝るようなこと言ってた?それより―」
そうだ、本題も忘れかけていた。
しかし、風紀委員を創るには何が必要なのかさえ分からない。
「んー、どうやって委員会を創るのかどうか…」
「生徒手帳になら書いてあるかな、」
たしかに、生徒手帳にはほとんどと言っていいほどこの学校のことが細かく書かれている。
才女様はブレザーやスカートにあるポケットを探っているが、未だに生徒手帳は出てこない。
もしかしてだが、持ってないのか。
「はは、鞄の中に入れてるんだった」
才女様は“えへへ”と言わんばかりな表情をし、俺の方を見た。「俺もいつも持ってるって訳じゃないので…」と呟きながら俺はブレザーの内ポケットに入れていた生徒手帳を取り出し、ペラペラと捲る。
「あった、」
そこには『生徒による新しい委員会の設立の条件について』と題目に書かれているページがあった。
「なになに?」
と才女様は俺が開いている生徒手帳を覗こうとすぐ横に来た。
それも才女様の肩と俺の肩が当たりそうな距離まで。
「『会長及び副会長、書紀、会計を含み最低でも生徒6名』、ね…」
ページに書かれていた文を才女様は髪を左耳にかけ、俺の耳元で呟き考え込んだ。
しかしまあ、この状況は彼女いない歴=年齢の陰キャオタクの俺にとっては危機的状況だ。
「あ、綾瀬様…その、誠に申し上げにくいのですが…」
「ん?何??」
「距離があまりにも近すぎるというかなんというか…」
その時、才女様の顔が少し赤くなった。
なんだ、可愛らしい所もあるじゃないか…って何を考えているんだ俺は。
「や、やっぱり
才女様は顔をそらし、何か慌てていて、こんな一面もあるだな、と俺は感じた。
少し気まずい雰囲気になり、俺も才女様も話が止まってしまった。
2〜3分経っただろうか、このままではいけないと思ったのか、才女様が覚悟を決めたように俺の方を向いた。
「ま、まあ、そういう事で」
「どういう事ですか才女様」
あ。流れで突っ込んでしまったし、“才女様”と読んでしまった。お互いに少し驚いた顔で目があった。
「すみません、口癖で」
俺は少し笑い混じりで謝った。
「口癖って…ぷっ、」
才女様が我慢しきれずに吹き出した直後、2人揃って爆笑した。才女様は笑いすぎて涙が出てきたのか、左手で目の下を軽く手で拭っていた。
「まあ、極力は綾瀬って呼んでほしいかな」
先程の余韻が残っておりお腹を抱え、笑いながら返してくれた。
「あまり期待しないでくださいよ?」
可能性的に言えば名前で呼ぶ事を忘れてしまうこともあるだろう、だからこそ、ここで保険をかけておく。
「これから風紀委員の一員として、よろしく頼むよ。如月君」
才女様が右手を腰の高さに出してきて、俺はその右手を無意識のうちに掴んだ。
「こちらこそ、お願いします」
風紀委員創ります。 @Amabe0401
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