風紀委員創ります。

@Amabe0401

第1話「才女様はもしかしてオタク?」

四月八日――雲一つ無い桜の花びらが舞っている空の下、新調の制服を来た高校の新一年生が複数人歩いていた。その中に俺、如月きさらぎ なぎさもいる。


「青空入学式か〜」


のんびりと歩いているとすぐ横を同じ制服を着た男子が走っていった。

ふと思い、スマホをポケットから取り出してロック画面を確認すると時刻は“8:25”と表示されていた。


「あと5分で入学式始まる?!」


俺は慌てて走った。

教室に入ると時計の針は“8:28”の所を指しており、どうやらギリギリ間に合ったようだ。





入学式が終わり教室に戻って自分の席に座った。

周りを見ると見たことない顔が囲んでいるものの、ひときわ目立つ人がいた。

俺と同じ中学で、当時生徒会長だった綾瀬あやせ 佳奈かなだ。

容姿端麗で中学の時は学校トップの成績、噂によれば評定平均は毎回“5.0”。5以外は取ったことないらしい。

しかし、


あれ?中学の時は黒髪だったけど今はシアーベージュ??


透き通るようなベージュの髪色に今はなっていた。恐らく染めたのだろう。


しっかし、なんであの“才女さいじょ様”が都立のこんな平均的な偏差値の高校に来たんだ??


彼女に対する疑問が次々と脳内に浮かび、担任の先生の話が一切入ってこなかった。


先生の長い話が終わり、今日はこれで学校は終わる。

俺は真っ先に図書室へ向かい、ここにはどんなタイトルのラノベがあるのか探り始めた。

中学の時からラノベばっか読んでおり、中学では3年間で図書室のラノベ全巻、約300冊を制覇した。何かと中学の図書室はラノベが豊富で楽しめた。

高校の図書室はと言うと、図書室の広さで言えば中学の1.5倍ぐらいだがラノベの冊数は中学の図書室とたいして変わらなかった。


「俺が読んでないラノベはここにあるか〜??」


しゃがみながら本棚を漁ってて独り言ち呟いていたその時、すぐ横に色白でキレイな長い脚が現れた。

その脚の持ち主の顔を見ようと見上げた。

するとそこにはあの才女様がいた。


「さ、才女様ッ?!!!」


思わず大きい声が出てしまった。

それに驚いたのか、才女様がビクッとした。


「びっくりさせないでよ!」


びっくりしたのは俺の方だが少し申し訳なくなった。


「あ、すみません……」

「えっ、そこまで落ち込まない…で??」


俺の顔を覗き込んでくるように何故か心配された。

才女様の左手をよく見ると、『クーデレ美少女の正体は義妹ぎまいでした。12』を持っていた。


「あっ、如月君もクーデレ義妹知ってる??」

「もちろんですよそりゃぁ!」


ラノベ好き、しかもクーデレ義妹はすでに漫画化、さらにアニメ化もされている大ヒット作だ。

知らないはずは無かった。


「そ、その、才女様もクーデレ義妹、読んでるんですか?」


12巻目を持っているということは11巻目まで既に読んでいるか持っているか、だ。

俺は好きな物になるとすごく語りだす典型的なオタクのためどうしても聞いてしまった。


「というか、その“才女様”っていう呼び方やめてくれないかな?綾瀬 佳奈っていうごく普通のちゃんとした名前あるんだけど」

「あっ…でも…」


あの才女様を本人の名前で呼ぶ事に抵抗があった。


「えっ、と…綾瀬……様」

「様じゃなくて“さん”ね」

「それはさすがに…」

「はぁ…もうそれでいいよ…」


才女様は右手で頭をかかえ込み仕方なく受け入れた。


「それで、クーデレ義妹を読んでいるかの質問だったね?」

「あ、はい!」


一瞬、自分がした質問を忘れかけていた。


勿論もちろん、クーデレ義妹は1〜12巻、漫画版も1〜10巻は持ってるわよ、それにBlu-ray《ブルーレイ》は全巻持ってるし」

「もしかして綾瀬様ってクーデレ義妹ガチ勢ですか??」

「ん〜、でもクーデレ義妹は7巻が発売された時からだからそこまでガチ勢ではないかな」


衝撃的な発言だった、クーデレ義妹の5巻目が発売されたのは4年前の2021年だ、つまり才女様は小学校6年の時からクーデレ義妹を読んでいたことになる。

ちなみに自分は中学校2年の夏頃にクーデレ義妹を見つけてそこから推し続けている。


「いや〜、綾瀬様がクーデレ義妹を知っていたとは…」

「まあ、ラノベ好きだし?」


これもまた衝撃的な発言だ。

あの皆の憧れの存在の才女様がラノベ好きなんて。


「君、今私がラノベ好きって知って戸惑ってるでしょ?」

「まぁ、正直…そうですね…」

「そっか、失望した??」

「あっ、いえ、別に失望って訳じゃ…」


すると才女様の口元が緩み、少しニコッとしたように見えた。パンっ――と才女様は手を合わせ、俺を見た。


「って事で!オタクの私を知っても失望しなかった君に一つだけ協力してもらいたいことがあります!」

「な、何でしょう…」


少し怪しげな空気が感じ取れた、何か面倒事に巻き込まれそうな空気だ。

俺は唾を飲み込み、覚悟を決めたような表情になった。

才女様はしゃがんでいる俺の方に右手を伸ばした。


「この学校に風紀委員会を創りたいので協力してください!」







「――へ??」

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