第3話





「はいあったかいココア」

「…ありがとうございます」

「くぅ〜やっぱ冬はビールに限るねっ」


 お姉さんの家は公園から1.2分で着いた。本当に公園からすぐだった。

 家に着いてこたつに押し込まれ、ココアも提供してもらった。外が寒すぎるのもあってかすごくあったかい。


「身体大丈夫か?」

「おかげさまで温まりました」

「そりゃぁ良かったっ」


 本当に親切な人だな、人は見かけによらないもんだな。色々としてもらって悪いからお姉さんに後で菓子折りとか届けに来ないと。あれ、お姉さん…そういえば名前すら聞いてないな。


「あの…「そういえばさ、君の名前って何なの?」」


 名前を聞いていなかったと思い尋ねようとしたら、お姉さんも同タイミングでそのことを思い出した様に話し始めた。


「あ、名前知りたいならまず年上のあたしからか…あたしは千歌!矢沢千歌ねっよろしく〜」

「僕は高校1年生の安保千冬です」


 こたつであったかいココアを飲みながらすることじゃないな。大分順序が逆になってしまった。


「1年生なんだぁ…じゃあ、16歳くらいか〜。若いねぇ〜」

「千歌さんもあんま変わらないですよね?」

「えぇ〜若く見える〜?」


 すごく嬉しそうに、ニコニコとした笑顔になった。ということはもうちょっと上…20くらいなのかな?


「知りたい〜?」

「…別に大丈夫…知りたいです」


 年齢に興味なさそうにしたら、ほっぺたをぷくっと膨らませてリスの様に怒っていた。


「へぇ〜お姉さんの年齢知りたいんだ…でも、残念っ内緒です!」

「なんで、怒ったふりしたんですか…」

「え〜おもろしそうだったから?」


 出会った時よりテンションが高いな…頬も赤くなってきてるし。こたつ入ってるからかな?


 プシュッ 


 ゴクッゴクッ


「プハァ〜やっぱこの時間帯のビールは最高だねぇ〜」


 いや、ビール飲んでるからか。空き缶があるってことは最初っからビール飲んでたんだ、全く気が付かなかった。


「おじさん臭いですよ」

「え〜こんな優しくて可愛いあたしになんてこと言うの〜。もうビール飲ませてあげな〜い」

「いや、元から飲んでないですよ…」


 まだ未成年だしね。そっからしばらく身の上話について話してた。空き缶が増えるにつれ呂律も回らなくなってきて、テンションは上がり続けた。


「ビールってそんなに美味しいんですか?」


 目の前でそんなに美味しそうに飲まれると流石に興味が湧いてくる。


「おいひくないよっ!にがひもんっ!」

「じゃあ何で飲むんですか?」

「え〜たのひいから〜。あんぽちふゆくん〜れーぞーこからビールほって、あんぽちふゆくんのぶんもほっへいいはら〜」

「何でフルネームなんですか…?」


 頬を赤らめにへらと笑っている千歌さんは大分幼児退行していた。

 ビールを取りに行くために渋々立ち上がって冷蔵庫の方へ向かう。僕のもとって良いなら持っていこうっかな…?いやいや、未成年だぞだめだろ。でも、あんなに楽しそうになれるなら飲んでみたいな。さて、どうしよっか…。


 あははっ


 …どうせバレないし一回くらいいっか。今日ぐらい楽しくなりたい。


「はいどうぞ。ビールお待たせしました…?」


 ビールを届けに千歌さんの元へ行くと、何かがツボにハマったのかお腹を抱えて大笑いしていた。


「あははっあんぽちふゆくん!あたしすごいことほもいついちゃったぁ〜」


 千歌さんは笑上戸なのかな?大分ゲラってるし。ていうか、年上のひとが幼児退行しているのって、さっきまでの姿とギャップを感じてかわいいな。


「なにを思い付いたんですか?」

「あ、あんぽちふゆくんもビールほむの?」

「…良いって言われたんで飲もっかなって」


 今日出会った女性に重めの悩み相談を聞いてもらって、その女性の酔っ払いの介護になりつつある訳の分からない状況。会話もなんか成り立っていない気がするし…これ大丈夫なのかな?お酒も飲もうとしてるし。


 プシュップシュッ


 栓を開けた缶ビールを渡された。


「よしこれ持ってぇ…かーんぱーい!!」

「…かんぱい…うぇ…にが…まず…」

「プハァ〜うまい!!」


 さっきおいしくないって言ってたのに…。同じものを飲んでるだけなのに、年が違うだけでこうも違うものなのか。もっと飲んでみればわかるのかな?


 ゴクッゴクッ


「そうそう、あたひペットが欲しかったのぉ。おうちかえっへきへもだれもいないんだもんっ」

「何ですか急に…?」


 何で急にそんな話を?


「それでね、あんぽちふゆくんがかわひーふへねぇ。なんかいもはまえをよんでてきづいはの〜。あん”ぽち”ふゆ…ちゅまりポチくんだって!これはうんめぇだよ!だから、あたひのぺっとになってぇ〜」

「いや、意味わかんないです」

「ねぇ〜ポチくんなっへよ〜」


 要約すると…元からペットが欲しくて、可愛い僕を見つけた。名前を聞いてみればあん”ぽち”ふゆでポチくん。これは運命だ、あたしのペットになってだ…意味がわからない。


「だいたいペットになって何するんですか?」

「ん〜っとね…あそんだり〜ごはんたべたり〜おうちでほんびりするのぉ〜。あたひペットたくはんはわいがるよ〜」


 ほんとうにぺっと…やばい、あたまがもうろうとしてきた…ぼくっておさけよわかったのかな…ちかさんがなにをいってるかよくわからない…けど、なんだかたのひいことだとおもふ。


「あたひ、たくはんあまえるしあまえさせへあげるもんっ!いやひてあげるし、いやひてもらうもんっ」

「ぼくだって、いやしてほひいですっ。きょぅほんとうにつはいことがあっへぇ〜」


 おさけってたのしい。


「わはった、あたひがいやひてあげるぅ〜」


 ムギュッ


 いいにおい…むにむにやはらかいものがあたってる…いやされる…。


「あたひのペットになる?」

「ボクはペットでふ!」


 ねむぃ…。






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幼馴染に振られて公園で泣いていたら、年上金髪ギャルに拾われてペットになった件 @pastry-puff

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