第2話
結局学校を出たのは4時ごろだった。
「泣きすぎだろ、ダサいな…僕」
悲しくて泣いた。泣いて、泣いて、もう涙なんか出ないと思ってたのにまた涙が溢れてきてしまった。
「ここの公園懐かしいなぁ…美咲とちっちゃい頃よく来てたなぁ…グスッ…」
いつもと違う道を通ってきていたせいか、元想い人との古い記憶を思い出してしまった。今日の僕ついてないな…。
ずっとそんな感じで泣いていたからか、背後から近づいてきていた人に気づかなかった。
「君、どうしたの?」
後ろから聞こえた声に振り向くと、金髪に舌ピアスを開けたいかにもギャルって感じの美人がいた。いつもなら綺麗だなとか思って、見惚れていたんだろうけどそんな元気はなかった。
「…どうもしないです」
「いや、そんな事ないでしょ。さっきまでグスグス泣いてたじゃん」
「目にゴミが入ったんです」
「君〜それは流石に嘘が下手だね…」
「…何かあったとしてもあなたには関係ありません」
このお姉さんすごくグイグイ来るな…正直そういうの苦手だしやめてほしい。後、今は誰とも話したくない、しばらく1人でじっとしていたい。
「はは〜んあたし分かっちゃった〜。君、振られたんでしょ〜」
「…だったら何ですか」
「あ、嘘…マジ…?」
…流石に分かるよな…この時期に公園で1人泣いてる男子高校生。そんなの大体失恋に決まってる。…そのことが分かってるなら放っておいて欲しかったよ。やっぱりこのお姉さん苦手なタイプだ。
「あ〜ごめんね。本当に振られてるとは思ってなくて。適当に言ったらあたっちゃった…」
どうやら適当だったらしい。だからと言って僕のダメージが回復するわけではないけど。まぁ、悪気が無かっただけマシだけどさ…。
「…10年来の幼馴染に振られたんですよ…いけると勘違いして…本当に好きだったんです…うぅ…」
「そっか…失恋って辛いよな…。君のことを全く知らないけど、告白する勇気は偉いと思うよ」
…今の僕に優しくしないでくれよ…!
「この公園もちっちゃい頃の思い出がたくさんあってぇ…!」
「仲が良かったんだなぁ…私には幼馴染がいないから羨ましいよ」
口から勝手に言葉が溢れてしまう…!一つ思い出が溢れると蛇口の栓を最大に開いたかの様に止まらなくなる。
「だからぁ…っ…本当に、辛いんです…!」
「…うぅ…頑張ったなぁ…!」
少しスッキリした頃には結構な時間が経っていた。出会って数分の名前する知らない人に、こんなに想いを吐き出してしまった。
「…すみません…色々話聞いてもらって大分楽になりました…」
「…子供がそんな事気にすんなよ…グスッ…大人にたくさん迷惑かけて成長してけば良いんだよ…グスっ…」
ギャルのお姉さんもめっちゃ泣いてた。感受性豊かな優しい女性なんだな。
「…クシュッ…」
「風邪か?」
「ちょっと冷えたみたいで」
「ちょっと手を貸してみ…うわっ冷た!」
お姉さんの温かい手が僕の冷え切った手と触れ合った。…温かいなぁ…人と触れ合うと心まで満たされる様な気がする。もし、告白が成功してたら美咲とこんなふうに…グスッ…。
「よしっ決めた!…君、うち来なよ。あったかいよ〜」
寒がってる僕のことを考えて気を遣ってくれたのか…?ありがたいけどそこまで迷惑はかけられない。
「いや、だいじ…「うちはこっからすぐだからダッシュで行くぞ〜!」」
「ちょっ…!」
そう言って強引に引っ張られる手はなんだか懐かしさを感じさせて、冬の寒さもほんの少しだけ和らいだ気がした。
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