ぶつけられる僕と、ぶつけられたい元気くん

花野井あす

さあ、勝負だ!


 ぼくはお豆腐。

 

 絹ごしじゃなくて木綿だよ。少しざらっとした舌触りに苦み。水はすくなめだから強くて焼きめをつけるとおいしいかも。炒めても煮てもいいよ。

 崩れにくく、でも弾力がある。それがぼく!

 

 そんなぼくだけど、ただいまお取り込み中。


 小2の元気くんが言い訳を実現しようとしているんだ。運動会に出たくないから、いっぱいいっぱい考えて、ぼくの角に頭をぶつけることにしたんだ!

 つまりぼくは、木綿として挑戦を受けているんだ。

 

 元気くんはぼくを乗っけたボウルを片手に、「えいや!」

 元気くんのボウルから放り出されたぼくは、「ふんぬ!」

 

 木綿としての誇りを胸に、崩れないように全身に力をこめて、でもぐにゃりと曲がる柔らかさも忘れずに!

 ぼくの角は元気くんの頭に覆いかぶさって、ぐにゃっとへこむ。へこんだ場所から崩れないように、ふんわりと跳ね返って。ころころと転がるボウルの回るへイン。最後まで硬さと柔らかさを大切に!

 

「むむ、てごわい」

 

 ぼくと元気くんはにらめっこ。

 第2回戦はすぐまたあとに!

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ぶつけられる僕と、ぶつけられたい元気くん 花野井あす @asu_hana

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