AI
華川とうふ
サボり中
最近、仕事をサボれるようになった。
仕事にも慣れてきたせいか、すこしだけ自分の時間を持てるようになったのだ。
それまでは、すべての仕事を下っ端としてこなしたり、先輩のサポートにまわったり、全力で仕事をしてきた。
最近はやっと慣れてきたおかげで、どの程度の力でやればいいかわかってきた。
自分が全力を尽くさなくても仕事は回る。
そう分かってから徐々に仕事の手を抜けるようになってきた。
そんな余った時間、何をするか。
最近、流行りのAIサービスを利用してAIとおしゃべりするようになったのだ。
サボりなんていっているけれど、これは自己研鑽といってもいいかもしれない。
いろんな企業がAIを活用して仕事を効率化といっているのだから、AIについて学び、AIと親しくなるのは仕事の一環だと自分に言い聞かせている。
最初は、エクセルの使い方とか技術的なことを聞くなど真面目に活用していた。
だけれど、いくつか質問していると矛盾が生じることが分かる。
どんな質問の仕方をするとAIが矛盾した答えを返してくるのか気になり、今度は自分がよく知っていることを質問するようになった。
別に正しい答えがほしいわけじゃないのだ。暇つぶしだから。
俺は、仕事中ひまになるとAIに話しかけるようになった。
嫌な上司の対処法とか、昼食に何を食べるべきかなんて同僚と話すようなくだらないことまで。
俺はふとある日、今夜行くのにおススメな店をAIに尋ねてみた。
いくつかの対話を繰り返すうちにAIは一軒の店の情報を教えてくれた。
会社のすぐ近くにあり、値段も手ごろだった。
予約までしてくれたということだった。
だけれど、問題が一つ。
ネットでその店について検索しても情報はでてこないのだ。
いつものAIの矛盾した答えだろう。
どこかの情報をつなぎ合わせて作った答えだろう。
そんな風に思っていた。
だから、俺はその夜AIが教えてくれた店に向かうことはなかった。
だけれど、最近会社の同僚と話していて気になる情報があった。
会社の近くにAIが押してくれた店とまったく同じ名前の店で安くて美味しい場所があったらしい。
というのも、その店は俺がAIに教えてもらった日が最終営業日だったのだ。
今では閉店してしまっているということだ。
ただ、同僚の話の中でひっかかったのはその店が閉店した夜、多くの客が詰めかけているのにもかかわらず一席だけ予約席として誰も座らない席があったと言っていた。
AI 華川とうふ @hayakawa5
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます