空からこぼれた、星のお話

全一話

星がまたたく　いつもの夜に

空を流れる　光（ひかり）帯（おび）

深い森へ　どっかんこ

天から星が落ちて来た

大きな音を　響かせて

地上に　穴が穿（うが）たれた

しくしくしく　泣き声が

一晩　森を湿らせて

星の涙で　穴が満ち

朝に生まれた　小さな泉

きらめく光　銀色で

たちまち森の動物の

憩いの場所と　賑（にぎ）わった

昼は水面（みなも）に鳥（トリ）獣（けもの）

夜は夜空の月星（つきほし）を

映して星は　淋（さび）しさを

紛らわせては　過ごしてた

やがて泉は　村人に

知られてしまい　大紛争

皆欲しがるキレイな泉

争い煙（けぶ）って　血が流れ

清らか泉は　朱（しゅ）に染まる

誰かが叫んで　こう言った

「これは"絶望の泉"だ！」と

泉は大きな蓋（ふた）をされ

獣（けもの）も夜空も　もう見えない

人も誰も　近づかない

寂（さび）れた場所に　なり果てた

★

ある日ある時　蓋（ふた）ずらし

星が出てきた　泉から　

きらきら光る　しずくに変（へん）じ

するするするりと　森を這（は）う

道行く先で出会うのは

倒れた少年　パン抱（いだ）き

息も絶え絶え　苦しそう

しずくな星が　すべり込む

彼の口に　入り込む

途端に開く　その瞳

立って歩（あゆ）んで　家目指す

小さな妹　空腹で

兄の帰りを持っていた

パン分け　ふたり生き延びて

けれども明日は　どうしよう

彼の中で　囁（ささや）いて

小さな星は　伝え教える

森咲く花に　その果実

食べれる木の実　様々に

集めて売れば　人気者

そうして日々を　暮らしゆく

兄妹（きょうだい）仲良く　過ごしゆく

★

ある日ある時　お城から

兵が押しかけ　兄妹（きょうだい）は

捕らわれ　牢に入れられた

ご領主様の庭園の　薬の木の実を盗んだろう？

謂（い）われなき罪　濡れ衣で

珍しい実は　森からの

恵みの木の実　伝えても

信じて貰えず　朝に夜

毎日泣いて　妹ぐったり

とうとう兄は決意した

牢（ここ）から出よう　どうすれば

星は応（こた）える　その心

夜中　身体を抜け出して

探（さぐ）る城中　噂では

ご領主様の　お姫様

重い病を患（わずら）って

薬の木の実　足りてない

庭で栽培　足りてない

「それなら僕が治せます」

牢で呼ばわる少年に

命をカタに　試させる

森奥深く　泉には

そばに花咲く　癒しの木の実

たわわに実る　不思議の実

使えばたちまち病（やまい）癒え

笑顔が戻る　お姫様

★

ある日ある時　その日以来

星と兄妹（きょうだい）　お城から

保護され　泉の薬屋を

開いて始める　人援（ひとだす）け

そうして泉は　いつの間（ま）か

“希望の泉”と呼ばれ出す

蓋除（ふたの）き　常に銀色に

まばゆく光る聖水に

集まる生命（いのち）　数知れず

兄と妹　お星様

そして微笑むお姫様

めぐる季節に　気がつくと

姫の腕には赤ちゃんが

かつてよく似た少年は

今までは青年　お父さん

地上の星は　今どこに？

すやすやすややと　眠る吾子（あこ）

宙（そら）も地上も　希望に沸（わ）いた