番外編 キミの笑顔を【朔人side】

思っても、届かない想いがある。

届いても、結ばれない想いがある。


辛くて、切なくて、苦しくて――。


それでも君から目が離せないのは、もう引き戻れないくらい好きだから。

ただそばにいるだけ。隣で守らせてよ。


――キミの笑顔。


 ・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・


今日は秋晴れのきれいな土曜日。

今いる場所は、最近オープンした新しいカフェ。

ま、一人で入るんじゃなくてある子を待ってるんだけど……。


「お待たせしました……!」

「っ……」


やっば……。

乃彩ちゃんかわい……。


待っていたのは乃彩ちゃん。

ホントは晴真も来たいって言ってたんだけど、そこは容赦なく断った。

はりついてでも来るかなって思ったけど、ちょうどサッカーの大会があるとか……。


改めて、私服姿の乃彩ちゃんを見る。

オレが何も言わずに黙っていると、小さく首をかしげて「どうしましたか?」と聞かれた。

そのしぐささえ完璧すぎて、おもわずゴクリと喉が鳴った。


「待ってないからだいじょーぶ。さ、入る?」


いつも通り、平常心を保ってエスコートするようにしてドアを開ける。


おっとその前に……。


オレは横に立つ乃彩ちゃんの腕を引っ張って、耳元でつぶやく。


「乃彩ちゃんかわいーよ。惚れ直しちゃった」

「朔人さんっ……⁉ もう、また!」


これ絶対真に受けてないでしょ。

ま、変に察せられるよりいーけど。


オレは掴んでいた腕を離して、にっこりとお得意の笑顔で笑ってみせた。


 ・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・━━・・


「あの人かっこよくない……?」

「わっ、イケメン……!」


カフェに入って、いろいろなところから視線を感じる。

こういう時まで女子からの視線を浴びると終始監視されているようで少しだけ窮屈な感じがする。

まー……しょーがないっていうか……。


オレがじーっと外の景色を眺めていると、注文をし終えた乃彩ちゃんが何やらスマホを取り出した。


「あっ、蒼良さんから……!」


どうやらメッセージの相手は蒼良だったらしい。

画面を見た時の顔の輝き方が半端なかった……。


「好き? 蒼良のこと。今からオレでもいいよ~?」

「えっ、だ、大丈夫ですっ、そ、蒼良さんのこと好きっ……なので」


顔を真っ赤にしながらうつむいた乃彩ちゃんを見て、可愛いと思うと同時にどうしようもない嫉妬感が沸き上がる。

思わぬ形で想いの強さを見せつけられた気がした。


「さ、朔人さんこそっ、好きな人とかいないんですかっ?」


乃彩ちゃんから反撃開始とばかりに質問されて、オレは分かりやすく固まった。

どう返せばいいのか迷ったまま、あいまいな返事で返す。


「……さーね?」

「ええっ、何ですかそれ! ずるいです!」


ずるいって言われても、答えられないし……。

早く注文したものが来いと切に願ったがいっこうに来る気配がない。


「……いるかいないかは別として、好きになったら一途かな」


オレの答えに、なぜか目を丸くした乃彩ちゃん。

もしかして、軽い男だと思われてる?


げ……。


オレが若干青ざめながら乃彩ちゃんを見ると、ふわっと笑って言った。


「そんな朔人さんに想われてる方はすごく幸せですね……!」

「……うん」


自分で言っててなぜか悲しくなってくる。

気づいてって思う気持ちと、この関係性でいたいっていう気持ちが半々で処理しきれない想いが溜まっていく。


蒼良の彼女を奪う気はないけど、せめて想うだけなら。

ただ見つめるだけでいいから……。


「お待たせしましたー、抹茶チーズケーキと抹茶ラテになります」

「わ~~っ! おしゃれ……!」


と、会話が途切れて間もなく、注文したものが届いた。

目をキラキラさせながら並ぶスイーツたちを見ている乃彩ちゃん。

よっぽど楽しみにしてたんだろうな……。


「いただきます……!」

「どーぞ」


1番を望んだときだってもちろんある。

乃彩ちゃんの隣に立つことを望んだ時も。


おいしそうに、本当に幸せそうに笑う彼女を見て、オレも思わず笑う。


うん、いっか。

この笑顔を見守る立場でも。

だって、この立場で十分幸せだから。


――そう思っても、まだ想いは加速していく。

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学園イチのイケメンくんに甘く溺愛されてます⁉ ほしレモン @hoshi_lemon

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