第5章二話:断片/宇宙[貿易惑星〜]
『水の惑星と化した原因が判明しました。崩壊した宇宙船の動力機関から水素が流出、酸素と結合して海面が上昇し続けています』
「元々は違ったのか......あれ、今も増えてるのか?」
『......はい、このままでは残された陸地も沈むでしょう。宇宙船の引き揚げが必要です』
「名目はどうするんだ?」
『......人々の保護もありますが。おもに
「りょーかい」
波打つ大海、壊れた宇宙船の近く。深海から揚げる為に、あれやこれやと組み立てられていくのを横目にまた別の話へ集中する。
『宇宙へ引き揚げた後はミフユの捜索ね!それらしいものはあったかしら?』
『......木造船は複数ありましたが、帆船は見つかりませんでした』
「地図良いか?これ、ここの場所に直接行けば出現すると思う。この惑星で最後に行った時と比べて、だいぶ発展してるけど......」
『......理由はありますか?』
「肌感覚とか直感?ほら、惑星と繋がったような感覚って言っただろう?それ」
海面に異変、徐々にせり上がり覗かせた顔はまるでタンカーの様な
「ああ、修理したのか」
中へ機械達が飛んで入り、しばらくすると空へ浮かび始めた。轟々と
『それじゃあ私達も行きましょう!』
見届けたら、すぐさま指定した場所へ行ってくれる。しかし宇宙船に乗り込んだまま向かうとは騒ぎになりそうだが......?
『ここで降りましょう?大丈夫!船は透明だから!』
かなり発展したのか人で賑わう街中へ降りて、港の方へ行けば出現する綺麗な状態の木造快速輸送船ミフユ。
そのまま船を出して静かな海域で回収。いつの間にかスリムになってる宇宙船へぶら下げて移動、巨船の中に置く事で宇宙へ持ってくらしい。
「持っていった所で......え?調べたい?要調査対象?あ、はい」
突然出現するとか訳分からん現象とかなんとか、言われても困るし
『......惑星でのやり残しはありますか?』
「特に思い浮かばないな......」
今度こそ銀河の中心へ向け、宙へ飛び立つ。貿易惑星には船の快速化や設計を求めて来ただけなので、銀河の中心から離れる形だった。今度こそ......
『......ポッシさん、この惑星周辺に着いてから微弱な信号を検知し続けています。向かってみても良いでしょうか?』
「あー......うん、良いんじゃない?」
なかなか旅路は進まないようだ。
(コックピットの座席が一番だな)
長時間座る事が前提なのか、船の中で一番楽な場所だ。肩の力を抜こうと、座席へ深く座り直した所で減速の表示が見える。
『着いたわよ!』
「もう着いたのか」
発信源の正体は古い宇宙船、個人用の船より全然大きい。
『通信......はダメね!応答しないわ、所属も経歴も不明よ!』
『......遠方調査機材の許可を』
「はいはい」
『見た目から恒星系間同士の交流が断たれ始めてた頃かしら?所属は第三陣の開拓団系譜......?』
宇宙船がその辺に落ちてるなんて、なにが原因か分からない。もし今だに害があるような物ならば封鎖か破壊か、なんにせよ調査結果待ちである。
『......これは、恐らく連絡船の一つです。内部に脅威はありませんが、多数の休眠ポッドで人々が眠っています』
「眠ってるって事は、起こす事も可能なのか?」
『そうね、よく今まで残っていたと言うべきかしら』
それは......正直、扱いに困るな。休眠ポッドを利用した理由も分からない、今起きたとして故郷が元のままあるとも考え難い。
『......直接乗り込んで、記録を確認しましょう』
「良いのか?」
『......判断材料が足りません、船のAIに話を聞けるのならお願いします』
「あいよ」
エディンを伴い、宇宙服を着て突入。内部構造に損傷は無く、外部も同様。重力はあるようで、軽量で動き易い宇宙服でないと動けなくなりそうだ。
『酸素は無いみたいね』
「方向は?」
『こっちよ、ついて来て』
船内は真暗、ライトの明かりだけが頼りになる。キュオーと青白い光を発しながら飛ぶエディンへ追従......なるほど、空気が無いから翅じゃない。
いや、そもそも手のひらサイズの機械でも他に移動方法があったのか。
(綺麗に整えられて、扉も開放されてる......)
まるで招き入れるかの如く、こういった場合は良い思い出がとんと無い。大抵は罠とか責任や義務の押し付け......操舵室、ブリッジに着いた。
『調べるわね?......ああ、これは。どうしましょうか......』
ほれやっぱり。そう思いつつも話すのを待つ、
『ええとね......だいぶ長い期間、休眠ポッド維持の為に通電してた影響でボロボロ。回路が使えなくなったら別の回路を利用してたせいで、データも機能も虫食い状態よ』
「それはまた......なにも分からない感じか?」
『取り敢えず修復を試みるわ!期待しないで待っててちょうだい!』
(自信満々に言う事かなぁ......?)
適当な椅子へ座って待っていると、エディンの要請でディアンによる物か見知った機械達が機材を運び込み修理しにやって来た。
(お、
モニターにも表示が、再起動中......ブルースクリーン......う、頭が。
(徹夜してでも明日には復旧しなければ......)
『これで良いはずよ!』
「ん?......私は、なにを......」
『初めまして、渡り人のポッシ。私はこの船のAI、
「ああ、よろしく」
『断片的な記録しかありませんので、お役に立てるか分かりませんが......聞きたい事があればどうぞ』
「そうか、それじゃあ無事な記録が全体の何割か教えて。あと、どうしてこの船はここに居るのか、何があったのか纏めて話して」
『はい、では割合から。全体の八割ほど欠損を確認してますが、大半は日常データですので経緯の記録は残っています』
曰く、通常通りの運行だったが帰るべき惑星と連絡を取れなくなり、近付ける状態ではなくなってたとか。
三つの選択肢があって。家族や仲間を置いて他の惑星で暮らすか、現行では不可能と断じるしか無い無謀な解決を計るか、少しでもまた会える可能性に賭けて休眠の実行か。
3つ目の休眠、故郷から助けを待つ事を実行した船。
(期限を決めてなかったから、いつまでも待っていた訳か)
『以前の私がなにを考えていたか、少しなら分かるような気がします』
修理はしたけど、自認識は全く同じの存在ではない?記録を読み解く形なのだろうか。
「この船はどうするんだ?まだ寝てる人達は居るんだろう?」
『起きたばかりの私からは、なんとも......』
『あなたはどうした方が良いと思うの?権利的には保護とかそういうのになってくるわ!』
「......言える事としたら」
取り敢えず塵鉄惑星へ送って、現地のディアンとかに判断してもらう。と提案すれば、その様に事が進む。
多少のごたつきはあれど、古い宇宙船も航行出来るまで修繕が終われば自力で向かって行った。
宇宙服を脱いで、コックピットの座席から見送れば今度は我々の番。
「次の恒星系は......」
銀河の中心へ、恒星系を伝うように進むのだ。恒星に沿って進まないと事故確率がグンと上がってしまう、何も無いと思い込んで突き進むのが一番危ないらしい。
次の更新予定
ラストダンサー 探究者 @cca-tankyusya
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