アフターストーリー[10年目の生活]

 陽菜と蒼空が結婚してから10年が経ち、互いに深い愛情と尊敬を持ち続けてきた。二人の住む家は、小さな庭に面した、温かみのある二階建ての家で、緑豊かな郊外に位置している。家の前には色とりどりの花が咲く花壇があり、四季折々の景色を楽しむことができる。


 ある晴れた土曜日の朝、陽菜は早くから起きて、キッチンで朝食の準備をしている。焼きたてのパンの香りが家中に広がり、陽菜はその香りに満足しながら、キッチンのカウンターで新鮮なサラダを作っていた。


 サラダには蒼空の好きなコーンが入っている。彼女はその間に、コーヒーメーカーでコーヒーを用意し、テーブルの上に整えた。彼女の手際の良さは、10年間の経験と愛情が込められたもので、どこか自然な優雅さを感じさせる。


 蒼空は、少し遅れて起きてきた。彼は眠たそうな声で「おはよう」と挨拶をし、陽菜が用意した朝食を見て、満面の笑みを浮かべた。彼の顔には、陽菜の作った食事への感謝と、穏やかな幸福感が漂っていた。


「あ、このサラダ!コーン入ってる」


「蒼空が喜んでくれるかなって思って入れたの」


「もちろん!最高に嬉しいよ」


「ふふ」


 二人は、シンプルでありながら、心温まる会話を交わしながら朝食を共にした。


 朝食後、陽菜と蒼空はそれぞれの日課に取り掛かる。陽菜は家事を済ませた後に近くのカフェでお母さんとランチを楽しむ予定があった。一方で蒼空は仕事の打ち合わせがあってオフィスに向かう準備を始める。


 蒼空の入った会社は、持続可能な未来を目指す企業で、奈良県に本社を置いている。環境保護や持続可能な社会の実現を目指し、環境影響評価、自然保護プロジェクトの推進、環境保護政策の提言などを行っているようだ。


 主にコンサルティングやアドバイザリーサービスを提供し、自然保護区の管理や生態系回復、環境教育・啓発活動も手掛けているようで、企業や政府、NGOと連携し、持続可能な社会の構築に貢献してきたいそうだ。


 二人の生活は、忙しいながらも調和が取れている。仕事や家事の合間にお互いのために時間を作り出して共に過ごす時間を大切にしている。特に週末には、共に料理をしたり、映画を観たりすることでリラックスしたひとときを楽しむ。


 その日の午後、陽菜がお母さんとのランチから帰宅すると、蒼空がリビングでリラックスしている姿が見えた。今日は記念すべき10年目の日だ。彼は、彼女が持ち帰ったケーキを楽しみにしていた。陽菜は、お母さんからの特製ケーキを持ち帰って、それをテーブルに並べて蒼空と共に味わった。彼らは、お互いの一日について話し合いながら、懐かしいケーキを楽しんだ。


 夕方になって、二人で近くの浜辺に散歩に出かけた。浜辺のひっそりときた緑と風景は、彼らにとって安らぎの場であり、リフレッシュするのに最適な場所だった。鳥たちが遊んでいる姿を眺めながら陽菜と蒼空はゆっくりと歩き、時折手をつないで温かい会話を交わす。


「覚えてるかい?陽菜」


「もちろんよ。ここは私たちが初めて会った場所。」


「それにいつもの散歩道だよな。」


「いつかこの道を子どもと一緒に歩きたいな。」


 彼らの会話には、互いの未来や過去の思い出が含まれており、絆が深まっていることを実感する。


 夜になって、家に戻ると陽菜と蒼空は一緒にディナーを準備した。テーブルに並べられた料理は二人の手作りで、素朴でありながらも心温まるものだった。食事中も未来の話をした。互いの思いを共有して、笑い合った。美味しい食事を楽しみながら穏やかな時間が流れていく。


 夕食後にはリビングでゆっくりと過ごす。陽菜は好きな本を読みながら蒼空はソファに座ってその姿を見ている。時折、陽菜が本の内容について話しかけると、蒼空は興味深そうに耳を傾けて意見を交わす。


 夜が更けると、二人はベッドに入る。お互いに「おやすみなさい」と言い合って心地よい眠りに就く準備をする。二人の暮らしは日常の中に深い愛と理解が溶け込んでおり、互いに支え合いながら穏やかな生活を送っている。


 陽菜と蒼空の10年間の結婚生活は、ありふれた日常の中にこそ、大切な愛情と幸福が詰まっていることを実感させるものであり、その平穏無事な日々が、二人の人生を豊かに彩っている。


 陽菜に翼があることはもう特筆することじゃないのかもしれない。



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片翼の少女よ大空を知れ 蒲生 聖 @sho4168

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