第6話 化かし合い1

購入した屋敷で出かける準備をしたロイは、

「なるほど、大体の黒幕は把握しました。」

そう行ってからノビをした。


「流石、ロイ君。どうしますか?」


「まあ、どちみち。様子見って感じでとりあえず、物を買いに行きましょう。あと外では、呼び方を変えましょ。リスクを減らしたいので」


「分かりました。クソガキで」


「……却下で」


「呼び方ぐらいで、バレないと思いますよ。まあ一応、ロイちゃんって呼びます。ヤバそうな時は、その時どうにかしましょう。」


「……まあ、はい。えっと、とりあえず、食料確保の他に地図の確保といくつか本を確保したいんですけど、アドバイス下さい。」


「地図は分からないですけど、本は高いので古本を狙った方が良いと思う。冊数が欲しいんですよね。」


「じゃあ、それで、メイは欲しいものありますか?」


「欲しいもの?剣ですかね」


「……宝石とか服とかでは無いんですね。まあ、流石に目立つのでそれは無理ですけど。」


「宝石って役に立つですか?服装は機能性が大事ですし」


「……なんで皇后になりたいんですか?」


「それは、秘密です。」


ロイは、これ以上聞くのは何か無神経だと思い言葉を止めた。

「……じゃあ、剣も見に行きましょうか。」


「そうですね。2本買いましょう。」


「2本?」


メイは、自分とロイを指さして

「1、2」

そう言って笑った。


「何で僕の分も」


「僕じゃなくて、私ですよ。ロイちゃん。バレますよ。前世で剣とかしたことは?」


「魔法しか使ったことないですし、何というか。」

ロイに大した武勇は無かった。少なくとも一騎当千の力は無かった。前世で彼はどちらかと言うとサポートや策略を中心に行っていたので、剣を使い近距離で戦うことはあまり無かった。


「では、練習しましょう。」


「ええ、」


「剣術は大事です。まあ私も我流なので、上手く教えられるか分からないですけど、最低限の自衛出来る力は必要です。」


「……まあ、それは、そうですね。行きましょうか。剣を買いに」


「はい。」


「ああ、それで、買い物はどの順番が良いですかね?街の店の場所はあまり把握できていなくて。」


ロイが尋ねるとメイはしばらく黙り込んでから

「とりあえず、剣、本、食料ですかね。理由聞きますか?」


「大丈夫です、聞いても建物の場所分からないので、良く分からないってなるだけなので。じゃあ、行きましょう。」

ロイは、そういうと、右目をしっかり隠してドアを開けて歩き始めた。



街は少し落ち着きを取り戻していた、普段より警務省や軍部省の制服に身を包んだ人々が歩き回っていた。

しばらく歩いて何店舗かある鍛冶屋をざっと見て回ったメイは、ある一店舗に決めてその店に入った。


メイは、目を少し輝かせながら店にある剣などを見ていた。ロイはその後ろをゆっくり歩き、売り物の剣をジッと眺めてから手に取った。

(……重い。6歳の身体には更にきついな)

ロイは、ため息をついた。


しばらくするとしばらく見て回っていたメイが一本の剣を持って戻ってきた。

「ロイちゃん。この剣なんてどうですか?」


「……分からないです。軽いですか?」

ロイに剣の審美などは分からなかった。ただ一つ、筋量が前世と比べても少ない今の彼にとってはまず持てるという事が重要であった。


「うん?剣は全部軽いですよ。」


「うん?」


「……ロイちゃんはか弱いのでしたね。」


(いや、多分……)

ロイは、彼女の身体能力の高さに触れようと思ったが、何か怒られるような気配を感じて黙り込んだ。

「そうですね。」


「では、これは、私のにして、ロイちゃんには、もっと軽いのにしましょ。」


「お願いします。」


「では、店の方に聞いてみましょ。すいません。」

メイが声を上げるとしばらくしてから


店の奥からスキンヘッドの大男が出てきた。

「……天中人の兄ちゃんとは珍しい、それで何の用で?」

天中は、メイのルーツがあると考える国の名前であり黒色の髪の毛が特質すべき特徴だった。


「……剣が欲しくて、この子の。」

メイがそう言うとその店員は、数秒だまり、ロイとメイをまじまじと観察した。


「……失礼だが、そこの女の子とはどんな関係で」


「えっ。」


(疑われるのか、髪の色も、どうやって変えるんだよ、仕方ないはぁ、嫌だな)

「お兄ちゃんは、私を育ててくれてるの」

ロイは、そう言って全力で女の子を演じて、全力でメイとの関係性が良い関係であるアピールをした。


(ダメだったか?

それを聞いて数秒黙った店員に少し不安になったロイは、生唾を飲んだ。


「……そうか、孤児か。すまなかった。護身用の剣か、そうだな、まずは軽いナイフとかにしておいた方がよいと思う。」

店員は信じたのか少し柔らかな表情で言葉を返した。


(はぁ、良かった。後は、メイに任せるか。)

「……どうしてですか?この子には、剣を持たせて。」


「訓練をしてない子供に剣は扱いきれない。はぁ、ちょっと待ってろ。」

そう言うと店員の男は、奥に一度戻っていった。


誰もいなくなったのを確認するとメイはニヤニヤしながら、ロイを見て

「……可愛かったですよ。ロイちゃん。」

笑った。


「……はいはい。戻ってきますよ、店員さん。」

ロイは、少し嫌そうな顔をしつつ、メイを黙らせた。


しばらくして、店員は、手に何かを持って戻ってきた。

「このナイフなんかどうだ?それと、この木刀はサービスだ。剣がしたいなら、まずはこういうものから慣れた方が良い。」


(親切だな、あとこの人は店員ではなくて、店長的な人か。)

「ありがとうございます。お兄ちゃん、そのナイフが良いです。」


「では、これとそのナイフで」

メイの言葉は外からの声で遮られた。


「おっさん、頼んでた剣なんですけど。……クビになりそうだから、一回キャンセルで、ああ、すいません先客がいましたか。」


軍服に身を包んだ青年が、そこには立っていた。

(軍人か。平常心。)

ロイとメイは一瞬アイコンタクトをして、それから、先ほどの空気感を継続した。


「……ちょっと待っとけ、後で聞く。では、剣とナイフを研ぎなおすからそこに座って待っておいてくれませんか。」

そう言うと、剣とナイフを持って店長は店の奥に再び進んだ。二人は、店長の言葉に従い、席に着いた。


席に着いた二人の前に軍人はゆっくりと歩き目の前に立つと

「お二人は、旅人ですか?」

そう言って話しかけてきた。


「……」

(何が目的だ?世間話?何かを疑ってる?)


「そんな警戒をしなくても、お二人に少し話を聞きたいだけなので」

青年は丁寧な口調で話を続けた。


「軍人の方が何の用事ですか?」


メイがそう聞き返すと、軍人は丁寧に

「いや、用事って程でも無いのですけど。どうして、男装と女装をしてるのかと思いまして。」

そう言葉にした。


(はぁ、バレた?何で?バレる訳がない。かなりのクオリティだし、何処までバレてる?…この場から走って逃げるか?いや逆に怪しい。)

「……」


「すいません。確かに天中の出身の女性が男装するのは分かるんですけど、危ないところもあるので。君のほうが女装してるのがよく分からないんですよね。」

異国出身の女性が男装するのは人攫いなどから身を守るための手段の一つとして用いられた。


「……」

(なんだ、この人は。)


青年は、警戒心が高い、ロイとメイを見て

「ああ、すいません、つい気になって。まあ、何かがあるなら私を頼ってください。私は人民の味方なので。ああ、もちろん職責の範囲でですけど。」

そう言って頭を下げて笑っていた。それは100%の善意であった。



「おい、レト。頼んでた剣。キャンセルにするのか。」


「やっぱり、キャンセルなしで。ああ、これはついでなんだよ。おっちゃん。頼みをしたくて」


「うん?何だ?」


「知り合いに、天和系の女性か、端正な顔立ちの少年が来たら私に連絡するように言ってくれませんか?」

(……メイはともかく、何で僕も探してるんだ?死んだと思われていないのか?)


「店をしてる連中に言えば良いんだな。」


「お願いします。では、私はこれで。ああ、そう言えば貴方二人も当てはまりますね。お名前を聞いても」

軍人の青年は立ち止まるとロイとメイを真っすぐ見た。


(まずいな……名前なんて、考えてない。思いつかない。ああ、そうか。)

「メイです。お兄ちゃんの名前はロイです。」

ロイはそう言って笑った。ロイは、お互いの名前を入れ替えて発言した。


「ロイ……ああ、いや何でもない。では、失礼するよ。お二人とも気を付けてくださいね。」

青年は、少し首を傾げながらも建物を出た。


(意外と不味いな。僕の見立てが甘かったのかもしれない。)

ロイは少し自分の見立ての甘さを反省した。

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転生腹黒皇子の国づくり〜皇族に転生したけど国は滅びそうだから殺しに来た暗殺者を配下にしてゼロから新しい国を作りたいと思う〜 岡 あこ @dennki

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