東棟を歩く。
恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界
東棟を歩く
ただ一人、歩く
何しにここへ来たのか、わからない
何処へ向かって行くのかも、わからない
古い木造の廊下を歩く
飾り気のない、ただの廊下
床のきしむ音が聞こえる
風のない中庭を歩く
地面はひび割れ、雑草も生えない
土を踏みしめる音が聞こえる。
コンクリートの階段を歩く
手すりさえない、簡素な階段
ペタペタと足音が反射する
本棚が立ち並ぶ部屋を歩く
読まれた本は、一冊もない
蛍光灯の音だけが聞こえる
屋根裏で柱の間を歩く
ホコリも蜘蛛の巣も、微塵もない
くぐもった足音が聞こえる
ベッドの並ぶ寝室を歩く
天井が高く、無音がこだまする
時計の針の音が聞こえる
機械が列をなす部屋を歩く
ケーブルがなく、黒い箱にしか見えない
駆動音が響く
絨毯が敷かれている廊下を歩く
幅がなく、地味な廊下
布をするような足音が聞こえる
ただ一人、歩く人だけがいる
何しにここへ来たのか、何処へ向かって行くのか
ワタシでさえ、わからない
東棟を歩く。 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます