東棟を歩く。

恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界

東棟を歩く

ただ一人、歩く

何しにここへ来たのか、わからない

何処へ向かって行くのかも、わからない


古い木造の廊下を歩く

飾り気のない、ただの廊下

床のきしむ音が聞こえる


風のない中庭を歩く

地面はひび割れ、雑草も生えない

土を踏みしめる音が聞こえる。


コンクリートの階段を歩く

手すりさえない、簡素な階段

ペタペタと足音が反射する


本棚が立ち並ぶ部屋を歩く

読まれた本は、一冊もない

蛍光灯の音だけが聞こえる


屋根裏で柱の間を歩く

ホコリも蜘蛛の巣も、微塵もない

くぐもった足音が聞こえる


ベッドの並ぶ寝室を歩く

天井が高く、無音がこだまする

時計の針の音が聞こえる


機械が列をなす部屋を歩く

ケーブルがなく、黒い箱にしか見えない

駆動音が響く


絨毯が敷かれている廊下を歩く

幅がなく、地味な廊下

布をするような足音が聞こえる



ただ一人、歩く人だけがいる

何しにここへ来たのか、何処へ向かって行くのか

ワタシでさえ、わからない

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東棟を歩く。 恐ろしいほどに鮮やかな白黒の世界 @Nyutaro

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