杉崎さんの決意

月曜日、僕は放課後になると家庭科室に向かった。

室内には既に杉崎さんが椅子に座って待っていた。


「杉崎さん、お待たせ」


「いえ、今日は来て頂いてありがとうございます」


僕は杉崎さんの近くの椅子に座ると早速、切り出した。


「それで、相談したい事って、何かあったの?」


僕が尋ねると杉崎さんは真剣な表情で語り始めた。


「はい、私には弟がいるんですが、小さい頃、卵アレルギーだったんです」


「卵アレルギーか…… それは大変だったね」


「はい、卵が入っている料理は沢山あるので、両親や私もかなり気を使っていました。それで、子ども食堂の手伝いを始めて、弟と同じようにアレルギーを持っている子は多いという事を知りました」


「確かに特に子どもに多いイメージがあるね」


僕の言葉に杉崎さんは頷いた。


「はい、アレルギーは成長していくうち軽くなる場合も多いですし、子どものうちは給食等、集団で食べる機会が多いので、アレルギーがあると除去食を用意しなければならないので、目立ってしまう機会が多くなってしまうんです」


「成程、そういった理由があるんだね」


「はい、それで私はアレルギーを持っている子ども達の為に、何かしてあげたいと、思ったのです。高橋さんに相談をしたら子ども食堂の場所を使って良いとの事だったので、そこで、アレルギーを持っている子ども達の為に、イベントを開いてみようと思いました」


杉崎さんの言葉に僕は驚いた。


「イベント!? それは凄いね」


杉崎さんは恥ずかしそうにはにかむと口を開いた。


「全然凄くなんかないです。まだ、イベントに出すメニューが決まっていなくて……」


「アレルギーの物の代わりの材料を見つけるのが難しそうだね」


僕の言葉に杉崎さんは大きく頷いた。


「ええ、元々の料理の味を変えないようにするのが難しくて……」


「分かった。僕はそのメニュー作りを手伝えば良いんだね?」


僕の言葉に杉崎さんは驚いた表情を浮かべた。


「えっ? まだ何も言っていないのに良いのですか?」


「勿論だよ。杉崎さんの話を聞いて僕も手伝いたいと思ったよ」


「倉橋君、ありがとうございます! 是非よろしくお願いします」


杉崎さんはそう言って僕に笑みを見せたのだった。



☆☆☆


いつも読んで下さり、ありがとうございます!

長くなってきた本作を読んでくださり、感謝しかありません。

新作を投稿したので、良ければそちらも読んでみて下さい!


「可愛くて内気な幼馴染がある日、俺に積極的にアピールをしてくるようになった」


https://kakuyomu.jp/works/16818093084275883535/episodes/16818093084275990395

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お腹を空かせた女子にご飯を作ってあげたら、僕の家の食堂の常連になった 宮田弘直 @JAKB

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