可愛くて内気な幼馴染がある日、俺に積極的にアピールをしてくるようになった

宮田弘直

幼馴染が急に抱きついてきた

「……ねぇ、俊樹君。俊樹君って今、好きな人っているの?」


ある日の学校からの帰り道、俺、長谷川俊樹は隣を歩く相澤佳奈から突然、尋ねられて驚いていた。


俺と佳奈は同じマンションの別の部屋に住んでいて、俺達が産まれる前から両親同士が仲が良いという、所謂幼馴染と呼ばれる関係だ。


佳奈は綺麗な黒髪に大きな瞳で可愛いらしい容姿をしており、僕と佳奈の通う高校でも男子に人気で話題にされているのをよく耳にする。

しかし、佳奈自身は恋愛の話に耐性がなく、その手の話が出るといつも恥ずかしがり、黙り込んでしまう事が多い。


そんな佳奈がこの様な事を尋ねてきて、俺はどう答えたものかと少し考えたが、すぐに俺と佳奈の付き合いは長いのだから、ここは取り敢えず正直に答えるべきだと思い直した。


「……好きな人はいないぞ?」


佳奈は少しホッとしたような、気落ちした様な複雑な表情をすると、「……気になる人はいないの? 例えば、わ、私の事は? ……好き?」と、顔を真っ赤にして小声で呟いた。


「……佳奈の事? そりゃ、好きだぞ? 昔から一緒にいる事が多いし、俺に妹がいないから、佳奈の事は本当の妹だと思っているぞ?」


「そ、そうだよね……」


佳奈は僕の言葉を聞いて、始めは笑顔を見せていたが、徐々に表情が暗くなってきた。


俺は佳奈の事は家族同然だと思っているという意味で言ったのだが、何か良く無い事を言ってしまったのだろうか。


俺が原因について必死に考えていると、「俊樹君!」と、佳奈に名前を呼ばれた。


今度はどうしたんだ、と思いながら、佳奈の方を向くと佳奈は真っ直ぐに俺の方を見つめていた。


佳奈と目が合うと、佳奈は、「えいっ!」と、言うと、急に俺の腕に抱き付かれた。


思ったより大きいと感じた佳奈の胸の感触が腕に伝わり、俺は大いに慌てた。


「佳奈!? 急にどうしたんだ!?」


俺が言うと、佳奈は顔を上げて、俺と目を合わせると、「俊樹君、私、頑張るからね」と、言うと、俺の腕から離れると、「私、先に帰るね」と、言って走り去ってしまった。


「……一体なんだったんだ?」


そう言って、佳奈の後ろ姿を見送った後、あまりの衝撃に俺はしばらくその場で立ち尽くすのだった。



その日の夜、俺は自室で昼間の事を思い出していた。

佳奈から良い匂いがしたなとか、佳奈の胸は思ったより大きかったな、と思い、いやいや何を考えているのだと、首を横に振って、その考えを振り払うと宿題を終わらせてしまおうと思い、机に向かおうとした。


その時、インターフォンが鳴って、少しすると、「俊樹ー、佳奈ちゃんが呼んでいるわよ!」と、母の声が聞こえた。

俺は慌てて玄関に向かうと、母と佳奈が楽しそうに立ち話をしていた。


佳奈は何故部屋に上がらないのだろうと思いながら、母と佳奈に近付くと、「あっ、俊樹君!」と、俺に気が付いた佳奈が嬉しそうに声を上げた。


「佳奈、どうしたんだ?」


「コンビニに行きたくて…… 一緒に来てくれる?」


「コンビニって近所の? それなら一人でも……」


「俊樹、そんな事を言わずに佳奈ちゃんと一緒に行ってあげな」


俺の言葉を途中で遮って言った言葉に俺は反抗しても無駄だと思い、俺は、「分かった」と、言うと、佳奈と共に外に出た。


「俊樹君、急にごめんね」


佳奈の言葉に俺は首を横に振ると、「いや、構わないよ。それで、コンビニで何を買いたいんだ?」と、僕が聞くと、佳奈は頬を掻きながら、「飲み物とシュークリーム。お腹が空いちゃって……」と、恥ずかしそうに言った。


俺は、「分かった」と、言うと、佳奈の服装が部屋着である事に気が付いた。

部屋着だと制服より佳奈の胸の大きさがよく分かり、昼間の事を思い出して、つい佳奈の胸を凝視してしまった。


その視線に気付いたのか、佳奈は腕を組んで俺の視線から胸を隠すようにして身体を背けると、「ジッと私の胸を見て、どうしたの?」と、恥ずかしそうに俺に言った。


「い、いや、春とはいえ、薄着だと夜は寒いと思ってな。大丈夫か?」


俺は胸を見ていた事を指摘され、恥ずかしくなり、慌てて言い訳をした。


「本当にそう思ってた? 私の胸を見ていたんじゃなくて?」


俺の言葉に納得をせずに、続けて追求をしてくる佳奈に、「佳奈の事はそんな風に見ていないから安心して大丈夫だよ」と、俺はさらに言い訳を重ねた。


佳奈は俺の言葉に、「別に悪いとは言っていないし、見てても良いんだけど……」と、不満そうな顔で呟いた。


「えつ?」


今、あの恥ずかしがり屋の佳奈が胸見てて良いと言った。

昼間の事と言い、一体佳奈はどうしたんだ、と思い、「佳奈、昼間からどうしたんだ? 調子でも悪いのか?」と、尋ねた途端に佳奈の顔がみるみる赤く染まっていくのが分かった。


佳奈は勢い良く、俺から顔を背けると、「べ、別に調子は悪く無いから大丈夫! ここで騒いでいると迷惑になってしまうから、コンビニに早く行こう」と、言うと先に行ってしまった。


俺は混乱しながらも慌てて佳奈の後を追い掛けるのだった。

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