第14話 頭を使い、体も使う。
美味しいご飯を食べ、暖かい陽に当たると眠くなってしまうのは私だけではないだろう。
実際、隣で一緒に歩いている4人もどこか眠たそうな足取りで歩いている。
「なんだか気持ちよくて眠い…ちょっと走らない?」
ちょうど人通りが少ない道に差し掛かったところで青柳さんから提案が出る。
眠気は運動で吹き飛ばすという案に賛成しつつも、道路で走る子供っぽさに気引けて周りの意見を伺うことにする。
しかし考えることはみんな同じようで、良いも悪いでもない伸びた相槌ばかりが聞こえるばかりだった。
「嫌だと言わないなら良いよね、走るよ!」
これ以上待つことは無駄だと判断したのだろう、そう言い切って周りを見てから歩くのをやめる。
「じゃあそこの公園の謎のオブジェクトがゴールね。」
と言いながら70m以上はありそうな距離を走ろうと言ってくる。
「勝っても負けても何もないよ。それじゃ位置について~、よーいドン!」
準備する時間も無く戸惑いつつも転ばないように走る。
70%の力で走る私に対して100%で走る青柳さん、そしてその間ぐらいの力で走る他の3人。
元の能力に差があるせいで私はボロ負け…のような気がしたものの、青柳さんが圧勝して他の四人は僅差で終わった。
もちろん私が最下位ということは予想通りで、変わることは無かった。
負けても何もないという約束が安心を与えてくれた。
「皆バテ過ぎだよ…でも眠気は取れたでしょ?」
「そりゃバテるよ…いつもと違って荷物だって持ってるわけだし。」
望月君の意見に頷きながら青柳さんとの圧倒的な差に驚きを隠せない。
「これ、どうやって遊ぶのが正解なんだろう。」
そう言ってゴールになった公園の謎のオブジェクトについて考え始める。
「ここ動きそうだよ…だから何だって感じだけどさ。」
「説明書なんて無いよね~。」
5人の頭と目と体を使って考えながら、一つの結論を出す。
「…まあこんな感じなのかな?」
青柳さんがそう言いながら動く場所に足をかけて、言い表せないような動きをし始める。
「んー、思ったより太ももに効くかも。」
謎のオブジェクトは筋トレ用具だった。
「さて、休憩も済んだしそろそろ行こうか。」
望月君のその声で皆が時間を思い出す。
「この後は何しようね。これまでですらこんなに楽しいのに。」
「ついてから考えるでも良いんじゃないかな?歩いてたら思いつくよ。」
頭を沢山使って、体を動かしたい気分になりながら私達は帰ることにした。
◇
「何事もなく着いたね。さて、どうする?」
帰りついて、歩きながら考えていたことについて話を始める。
「あたしは何でもいいよ、さっきまでいっぱいわがまま聞いてもらったし。」
「僕も皆に合わせたいな、どれ行っても楽しそうだし。」
いつも私を引っ張ってくれていた二人が意見をパスし、私は焦る。
私も乗っかって意見をパスし、二人にまた考えさせるのも難しくは無いと思う。
でも誰かが意見を出さないことには始まらない。
今日何度目か忘れた勇気と声を出すタイミングにまた身を任せる。
「体を動かして遊びたいな、どう?」
「めっちゃいい、賛成!!」
「僕も良いと思う。二人もそれで平気かな?」
「平気どころか普通に賛成だよ、言おうかと思ったぐらいだもん。」
驚くほどの賛成で過ごし方が決まる。
「じゃあお金払って入場しちゃおうか、沢山体動かすぞ~。」
みんながお金を出しながら準備運動を始める。
スポーツで遊ぶ時間を少しでも減らさないようにという声が聞こえる気がする。
運動が苦手な私は思い始める。
もしかして自分から喜んで辛い方向へ向かったのではないかと。
そして、どうか緩めで楽しい感じであって欲しいという希望も。
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陰キャが陽キャじゃダメですか!? あまがみ @ama_gami
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