Episode 4 新しい隊員

拠点設営の間、俺らチームAは二子玉川駅の周囲の警備をすることになった。朝6:00頃から作戦が始まり、現在は11:30。既に四時間半が経過しようとしていた。


「こちらアルファ2。西口はあまり屍人しびとがいないよ。アルファ1、東口はどう?オーバー」


「こちらアルファ1、既に100体ほどの屍人しびとを駆除した、数があまりに多すぎる。オーバー」


「こちらアルファ3。駅周辺は障害物が多くて援護狙撃が難しい。武器を変更した後にアルファ1に合流する。オーバー」


そこから拠点の本設営が完了するまでの一時間、俺らは駅に侵入しようとする屍人を狩りつづけた。


線路上および駅構内の屍人の殲滅にニ時間、仮拠点の設営に一時間、警備に三時間半、計六時間半のミッションが完了し、俺らは本部に帰還した。


――――――――――――


世田谷区部隊本部に帰還した俺らは隊長室に集まっていた。


「伊藤、神谷、田中、今回の作戦は良くやった。しかし、まだ一つの駅を奪還したに過ぎないことはよく理解しておけ」


「素直に褒めるだけで良いのに…」


「何か言ったか?」


「い、いえ。何も」


「ったく。早速、今後の方針についてだが、政府からの要請でお前らチームAは先遣部隊として要所の奪還と研究用屍人しびとの捕獲を行なって貰うことになった」


「要所の奪還?」


田中が意味を訊ねた。


「あぁ。『要所の奪還』は政府から依頼された場所の奪還、保護が目的だ。例えば外に出ない貴重な情報が保管されている大学などの研究施設や、インフラの拠点になる鉄道駅などがそれにあたる」


俺はそれより捕獲の方が気になり、隊長に訊ねた。


「屍人の捕獲はどうするんだ?殺すより難易度がかなり高くなる」


「神谷の言う通り難易度が高いと思い、政府に話を聞いてみた。すると、初めは身体の一部でも良いから回収をしてくれとのことだ。我々はあまりに屍人を知らなすぎる。それこそ、どこから現れたのかも分かっていない」


「なるほど。なら初めは死体を持ち帰るで問題ないんだな」


「あぁ、そうだ」


「了解」


「では早速最初の依頼だが、世田谷区の中心部に位置する世田谷農業工業大学の奪還だ。この大学では農業や工業の他にも人の脳に関する研究が行われていたらしい。担当の教授が行方不明のため、研究データだけでも回収しようという狙いだ」


「俺らどれが目的のデータかなんて分からないぞ」


「そこについては追々説明する、準備も必要だしな。最後にお前らに一つ連絡がある」


俺と伊藤と田中は何だろうと互いを見合った。


「次回の作戦から新しい隊員が一人、チームAに補充されることになった。入れ」


隊長の言葉の後、扉が開いた。


「失礼するぜ」


入ってきたのは身長が190cmはありそうな長身の男性だ。日本人より少し白い肌に赤色の瞳、青色の長髪を後ろで結っている。


「紹介しよう、彼が新しい隊員のルークだ。政府経由で海外から派遣されてきた男で実力は折り紙付きだ。槍使いだから伊藤は色々と学ぶこともあるだろう」


「紹介ありがとよ、隊長さん。改めてルークだ、一時的だがお前さん達の手伝いをすることになったんでよろしくな。歳は35だ」


新しい隊員のルークの紹介をもってミーティングは終わった。自室に戻った後、俺はベットに横になり天井を見つめながら一人考えていた。


これが最後の任務になるかもしれない。先遣部隊というと聞こえは良いが、俺らは四人という少人数で屍人の巣に入っていかないといけないのだ。

何かやり残したことは無いだろうか。出発は明後日、明日は休暇扱いだ。

訓練、読書、散歩―――好きなことはいくつかあるが、俺が人生の最後に本当にしたいことは何だろうか。


―――――――――

【用語】


屍人しびと

突如として世界中に出現した化け物。

人を喰らい、襲われた人も屍人になってしまう。

当初、ウイルスの感染による凶暴化に思われたが、違うということが分かっている。

通常の攻撃ではダメージを与えられず、国が開発した特殊兵装でのみ殺傷が可能。


■屍人殲滅部隊ウルフバイツ

屍人のよって隔離された東京を奪還するために編成された部隊。全部で九部隊ある。


【登場人物】


神谷駿かみや しゅん

1)プロフィール

22歳の青年。本章の主人公。

身長190cm, 身体増強剤の副作用で髪は白くなっている。短髪のオールバック。

学生時代は空手をやっていた。


2)使用武器

短剣型狭域弱露きょういきじゃくろ兵装・SE01-Orgオーグ

SE01シリーズの原点。

カーボンと軽量金属で構築された黒の短剣で、起動すると赤色の発光ラインが浮かび上がる。

性能は、斬った相手の■を■■させる。RC01シリーズとの相性が良い。


短剣型狭域決殺兵装・RC01-Org

RC01シリーズの原点。

カーボンと軽量金属で構築された黒の短剣で、起動すると白色の発光ラインが浮かび上がる。

性能は、斬った■を■■から排除する。SE01シリーズとの相性が良い。


伊藤凪紗いとう なぎさ

1)プロフィール

22歳の女性。

身長168cm、身体増強剤の副作用で味を感じない。青髪のポニーテール。

学生時代は剣道をしていた。


2)使用武器

両刃槍りょうじんそう型広域制圧兵装 SE08-Mk Ⅱマーク・ツー

カーボンと軽量金属で構築され、柄の両側に刃を持つ黒の槍。起動すると青色の発光ラインが浮かび上がる。

性能は、本槍が■■■■■■となる対象の■■を無効化する。


田中宗介たなか そうすけ

1)プロフィール

28歳の青年。

身長173cm, 身体増強剤の副作用で匂いを感じない。

黒髪のパーマ。

学生時代は射撃をしていた。


2)使用武器

名称:不明

性能:不明


■ルーク

1)プロフィール

35歳の男性。

身長役190cmの白人

青髪の長髪を後ろで結っている。

槍使い。


2)使用武器

名称:不明

性能:不明









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屍人殲滅戦線 ― END LINE J ― 家ともてる @TomoteruUchi

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