AIと協力する物書き のその先

奈良ひさぎ

技術革新と趣味の楽しみ方

かぼちゃは何が何でもご飯のおかずとして認められない。


それはどうでもいいんですが、ここ数日で急にAIイラストがツイッターに流れてくる頻度が高くなったように感じます。私の価値観はいまだにツイッターと呼んでいるあたりで察していただければと思いますが、みなさんはそんなことはないですか?まあ、「#AIart」「#AIイラスト」とタグをつけてくれているあたり、まだ良心があるかもしれませんが。(キーワードミュートした)


前提として、創作界隈と(現時点での)AIの相性は致命的に悪い、とは私も思っています。クリエイティビティをいかに発揮するかが求められる趣味の範疇において、人間の過去の活動を学習し、新たなコンテンツを人間よりも圧倒的に速く生み出せる生成系AIに、人間が勝てるはずはありません。もはやそれを認められない人はいないと思いますが、一方で創作界隈には生成系AIを頭ごなしに否定する人が存外に多く、技術発展はしばらく先だろうなあ、と嘆息もしてしまいます。


こんなことを言うと、「お前はAI賛成派の裏切り者だ」とか誰かしらに言われそうな気もしますが、私は新しいもの好きなので基本的に有用であれば取り入れるべき、という考えを持っているし、持ち続けたいと思っています。もちろん、新しいものに抵抗感を覚えるという、一般的な感覚はありますが。でもそれは慣れるまでの辛抱で、慣れてしまえばどうということはありません。

これもすでに誰かしらが指摘しているだろうことですが、イラスト界隈、小説界隈におけるAIの問題点は、「他人の作品を(ほぼ確実に)無許可で学習し、それをベースに作品を吐き出させること」にあると思います。現時点のAIは学習先を自分で選ぶことができませんので、何を教師データにするかは使用者・飼い主である人間が選択することになります。要は、AIを使う人間の倫理観に依存せざるを得ない、ということですね。そして、世の中には案外悪意を持ってAIを利用するクソッタレが多いので、生成系AIによる「これ○○さんの作品に似てるよな……」という作品がはびこってしまい、結果生成系AI全体が敵対視される、という流れになっていると私は思います。


ですから、生成系AIそのものが悪かというと、決してそんなことはありません。たとえば私はこれまで累計500万文字以上小説を書いてきましたが、このデータのみを学習させたAIを上手く使いこなし、あらすじだったり、もう少し細かいプロットを読み込ませれば短編作品や連載作品の一部を生み出せるようになれば、飛躍的に執筆速度が上がると思うんですよね。もちろんそうしたAIがお出ししてきたものは自分の「癖」が7~8割くらいしか反映されていないものになっていることが予想されますので、いい感じに手直ししてから投稿、といった具合です。この場合、文句を言えるのは自分だけなので、自分がAIを使ってもっと楽に小説を書きたいと思っていれば、それでいいわけです。私のような、書きたいネタだけはいっぱいあるし、生きていればどんどんネタが増えていくけど、死ぬまでにそれらを全部書き切れる自信が到底ない人間にとって、これは夢のような使い方。そして2024年時点ではこういう使い方が最善だと思えるわけですが、今後さらに技術革新が起こり、より生成系AIについて輪郭がはっきりして一般人にも使いやすくなったり、あるいはさらに別の技術が登場したりすれば、さらに「小説執筆」に対する考え方は変わってくるはずです。


そもそも生成系AIは本当にごくごく最近に登場した概念、技術で、コロナ禍が始まるか始まらないかという2020年にはまだ登場していないくらいのものでした。それがたかだか3、4年でここまで来た。会社内での活用もどんどん検討が進んでおり、もはやそれほどひねりのないプレゼン資料くらいであれば、過去に作られた資料の数々を読み込ませてあっという間に作れるくらいまで、AIのレベルは向上しています。人間は元来楽な方へ、楽な方へ流れていきたい性分のはずですので、これを利用しない手はないと思っています。もちろん苦労することで得られるものもたくさんありますが、世の中には「経験するべき苦労」と「避けられるなら避けた方がいい苦労」とがあり、単純にタイピングで黙々と文字を打ち込む時間の苦労は今や、後者に分類されるのではないでしょうか。そもそもタイピングで小説が書けること自体、原稿用紙にひたすら書き殴っていた時代から比べれば相当楽していることになりますし。


では生成系AIと仲良くなり、小説執筆速度が爆速になった先に何が待っているのか。もしかすると、「俺が書きたいものは全部書いた」と満足して、小説執筆をやめるかもしれません。でもそれは次のステップに進むための考え方の変化で、ポジティブな筆の折り方ではないかと私は思います。小説は今も昔もクリエイティビティをいかんなく発揮できる領域ですが、この先もずっとそうであるとは限りません。昔は人間にしかできなかったが、今やAIにすっかりその座を奪われてしまった仕事がたくさんあるように、小説執筆もAIにお任せして、人間が生み出さなくなる時代が来てもおかしくありません。しかし仮にそうなったとしても、人間が能力を発揮できる仕事や趣味というのも同時に新しく生まれていっているはずで、そこにシフトすればいいだけの話ではないでしょうか。むしろそうしなければ、人間の脳はアップデートされていかないと思います。


イラスト界隈は現時点で、悪意のある生成系AIユーザーにかなり食い物にされてしまっています。そういう人間が一斉に野垂れ死にとかしない限り、もはや元の状態に戻ることはできないと思います。これはもう法整備をどうするかという問題になってきて、一般人が気軽に手を出せる話ではなくなってきています。そういう意味ではやはり、せめて自分だけは健全な付き合い方をしたい、と思ってしまいますね。先述しましたが、自分が過去に生み出した作品をベースにすれば、他人が文句を言う筋合いはないはずですので。

かたや小説も、イラスト界隈ほどではないものの、生成系AIの影響がかなり迫ってきています。pixivではAI生成か否かを選択しないと作品投稿できないくらいで、浸透しているんだなと感じさせられます。やはり、「小説はもはや人間の書くものではない」という時代が来てもおかしくないのかもな、と思わされます。

けれど、悲観はしていません。人生まだまだこれから、挑戦したいけどなかなか踏み出せていない趣味はいくつかありますし、これから見つかるものもきっとあると思います。新しいものを頭ごなしに否定せず、「いったん触ってみるか」の精神で取り入れてみる。それが本当のクリエイティビティなのではないでしょうか。


とりあえず、Copilotの勉強をするところからスタートですね。あとは急速な技術革新の流れを見守りつつ、いつでも情報を仕入れられるよう、アンテナを立てておくことにします。

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