●●が恐い。

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私が恐いと感じる幾つかのもの

 誰にでも、恐いものの一つや二つ、ありますよね。

 子供時代の私は、夜に起きて一人でトイレへ行く時、キッチンへお水を飲みに行く時、もし、あの真っ黒で不気味な…………Gが出たら、と思うと、怖くて怖くて仕方がなかった。Gとは、もちろん、夏の風物詩である、あの黒い虫のことだ。

 世間的には、昆虫に分類されてはいるものの、私は、やつらの正体を宇宙人だと確信している。なぜなら、例え人類が核戦争で滅んでも、やつらだけは生き残る可能性がある、と噂されるほどには、生命力が異常だからだ。

 きっと、やつらは、滅んだ人類にとって代わり、この地球を乗っ取ることを密かに計画しているに違いない。


 しかし、そんな私も大人になった。

 今でもGはとても恐い。でも、人間の怖さも悲しいほどに知ってしまった。

 だから、夫のいない時、Gを食卓の上で見つけた時、私は、勇気を出して、それを退治した。一撃だった。

 子供の頃の私なら、泣いて親にすがっていたのに……。


 実は、私には、他にも恐いものがある。

 これは、大人になった今だからこそ、恐いと思ってしまうものだ。

 こんな私でも、夫と出会い結婚し、わんぱくだが可愛い息子二人に恵まれた。

 夫と結婚した時、もし、この人が私よりも先に死んでしまったら……と考えると、それが一番恐いことに思えた。

 子供を産んだ時、もし、この子を失ってしまったら……と考えると、それこそが一番恐いことだと思った。


 この幸せが壊れてしまうこと……それは、もちろん恐い。

 だが、今の私には、それと同じくらい恐いものがある。


 それは、コロナ禍によってもたらされた。

 ……いや、それよりも前……長男を妊娠した時に得たものかもしれない。

 あの時の私は、多くの妊婦さんが経験するであろう大きなをしていた。

 もしかすると、仕事が在宅勤務になったことによるかもしれない。

 それか、生まれた時から既に決められたのようなものだったのかもしれない。


 それは、年々私を悩ませて止まない、●●のことだ。


 私は、●●が恐くて、必死に努力した。

 約半年ほどをかけて色々な方法を試し、ようやく目標の●●に達する間近のことであった。

 ちょうど長期休みに入り、実家へ帰省した私は、のんびりと余暇を楽しんだ。

 確か、二週間くらいのことだったと思う。

 それなのに、実家から自宅へ戻った私は、驚愕した。

 ●●が元の●●に戻ってしまっているではないか!

 これは、きっと何かの間違いに違いない。

 半年の努力が、たった二週間で帳消しにされるなんて……!


 それ以来、私は、●●にかける努力をやめてしまった。

 半年の努力が、たった二週間で無になるなんて……きっと何かの病気に違いないと思ったからだ。どうせまた努力を重ねても、きっと無意味になる……●●は、私から「努力」という言葉を奪っていった。


 それ以来、私は、怖くて怖くて……●●から目を逸らし続けている。

 今の私の●●が何なのか……知ることすら恐ろしい。


 ●●が何か……もう、お分かりですよね?


 ……え、何か分からないって?



 そんなあなたが、私は、憎い……………………。




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