『俺、体育祭で優勝したらあの子に告白するんだ』そう言っていた親友は体育祭の後に姿を消した

ふもと かかし

『おれ、体育祭で優勝したらあの子に告白するんだ』そう言っていた親友は体育祭の後で姿を消した

 うちの学校の体育祭は体育の日に行われる。なので、翌日の火曜日は振替休日だ。そして、水曜日に学校に行ったら、親友の姿は見当たらなかった。胸騒ぎがする。というのも、昨日も何度か連絡をしたのだがメッセージは既読にならずに、電話をしても繋がらなかったからだ。


 悪い予感は的中してしまい、彼はその後も学校へと現れる事は無かった。


 そう言えば、親友が告白すると言っていたあの子も、失踪してしまったらしい。一部では親友とあの子が駆け落ちしたのではないか、という噂も上がった位だ。


 体育祭で優勝した後に親友に頼まれて、僕があの子に言付けした。二人に関わっている僕が、いつまでも足取りを追ってしまうのも仕方ない事だろう。何度も体育館裏に来ては手掛かりが無いかと探すが、未だに何も見つかっていない。


 だが、今日は何かある気がする。茂みの奥に何やら光るものが見えた。

「おっ、ラッキー! って違う違う」

 手にしたのは五百円玉だった。探している物はこんなのではない。手を振り上げるとそれを勢いよく地面へ叩き付け……ずにポケットにしまうと、本命と対峙する。


▽▼▽


 目が覚めると、草木が生い茂る林の中に俺はいた。起き上がって確認すると、俺は体操服姿だった。

「そうだ、体育祭が終わってあの子を待っていて……」

 それからどうしたのだったかが、ぼんやりとしていて思い出せない。


「うっ、うんっ」

 声がしたのでそちらに向かうと、そこにはあの子が寝そべっていた。彼女も体操服姿だという事は、一緒に連れてこられたのだろうか。


「大丈夫?」

「ええ。てっ、ここはどこ?」

 おれの声に目を覚ました彼女は、周りを見て唖然としていた。確かに、かなり自然味溢れる場所であるのだ。


「分からない。何か、憶えている事は無いか」

「ええっと、確か、君の友達に体育館裏で君が待っているから行ってと言われて、あれ」

 どうやら、彼女もその後は上手く思い出せないようである。


「誰によって連れてこられたか分からないが、一先ずもう少し人気ひとけの有りそうな場所を探そうか」

 俺は彼女に手を差し伸べて引き起こすと、連れ立って歩き始めた。


▽▼▽


「まさかとは思ったが、やっぱりこの光は」

 体育館裏で魔力の残滓を発見した。それも、転移魔方陣に使われるものだ。僕は4年前に一度、異世界転移をした事がある。一ヶ月程で帰ってこれたのだが。その時の経験が役立つとは。


「必ず救い出してやるからな」

 僕は光の中へと踏み出した。

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