自白

「あの、今、思い出したんですけど」


「なんですか?」


「功刀が自分の部屋に帰って、一時間ほどして行ってみると風呂に入っているところでした」


 突然、牛込は淀みなく自白し始めた。片手はポケットのルビーに触れている。


「俺は壺に水を満たし、冷蔵庫のビールに睡眠導入剤を溶かして彼を待ちました。

風呂から上がった功刀は、ビールを一気飲みした後、酩酊状態になったので、頭を抱えて壺に突っ込み、押さえつけて殺しました。壺の水は殺した後、シンクに流して捨てました。」


「……そうだったんですか」


 能勢刑事は薄気味悪いものを見る目で牛込を眺めた。


「ルビーの原石はこれです」


 牛込はポケットから歪な袋を出した。


「刑事さん、直接触らない方がいいですよ。この石、呪われてるからね。この壺の方は偽物だったけど、石の方は本物だから」


「はあ、そうですか。わかりました」


 能勢は鑑識に指図して、ピンセットでルビーを押収した。


「聞きたいんだが、牛込さん」


「はい。なんなりと」


「なぜ、功刀さんを殺したのですかね」


「何故だか無性に人が殺したくなってね。まるで操られているみたいで……」


 そこまで言うと、突然、牛込は頭を抱えてうずくまり激しく苦しみだした。


「牛込さん! 牛込さん! おい! 救急車だ! 早く!」


 警察病院に着くまでに、牛込は血を吐いて死んでしまった。


 牛込が壺の呪いで死んだのか、ルビーの呪いで死んだのかは定かではないが、この二つの事件は所謂いわゆる迷宮入りとなった。

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呪いの壺 来冬 邦子 @pippiteepa

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