的確な語りとキチンと怖くなくなる落とし方の接合体
- ★★★ Excellent!!!
作者はホラーの名手。本作も中盤までホラーの王道を征く的確な筆致が冴えます。しかし作者自身が、肩透かしだ、と謝罪するに至り……
最後まで読むと、まぁ、怖くない話だったと気落ちします。これは無いわ…… と愚痴りたくなるような結末で。
しかし、この結末が現実世界で成立する条件を考えると結構怖いです。何年もかけて作られた状況に、わずかな時間の事件がドンピシャではまるのです。現実世界で成立を妨げる制約は何もありませんが、だからこそ私たちが生活している現実世界で悪夢のような事件が悪い意味で奇跡的に成立する確率を考えることができて、次第に肝が冷えてきます。それに、真相が判明する場面が、これはギャグなんですよ、と誰もが分かる状況であることも、実はかなり意図的ではないかと評者は見ています。考えなく書かれた結末ではないと思います。
怖くありませんがタダではすみません。関連がないものを二つ繋げてキチンと落とす手管が見事です。