思春奇★學淵

白銀比(シルヴァ・レイシオン)

心霊スポット

第1話 地元


 これは、私がある友人から聞いた話である。




「なぁ、○○神社の裏の山、知ってる?」

 友人Bが唐突に問い掛けてきた。


「はぁ?知ってるけど。だからなんなん」


 友人AとBは地元が同じで、互いにとっては知ってて当たり前な場所のことをいきなり聞かれて、頭が変になったのかと疑った。


「ちゃうやんあんな、あの山の、神社の裏手に小さな川があるやんか。そこ・・・今では有名な『心霊スポット』になってんねんて」


「マジで?あんな、なぁんもないとこで??・・・あ、あれか、ミステリーサークルみたく地域活性化計画か??」


「なになに?なんかおもろそうな話やん」


 ファミレスでクダを巻きながら時間を潰し、夕時からずっと暇でうな垂れていた三人だったが、友人Cの目が輝き出した。Cはこの手の話が大好きだ。


「・・・行ってみる?」

 Aは呆れた顔をするが、Cは前のめりな笑顔でBと改めて意気投合し直す。



 Cは、野郎三人で行ってもバカみたいだからと言って、共通の友達でもある女子二名を誘って夏の思い出の一つとして満喫しようと、ノリに乗ってきてしまった。



 後、一人の女子はバイト中だったので、四人はCの車の中で例の心霊スポットの情報を集めていった。


「神社の裏手を真っすぐに、川沿いまでがそうみたいやな」


「ねぇ、ちょっと危なくない?」


「大丈夫だって、俺の超地元だし。なぁ、A」


「まぁ、ほんと、どうせなんもないって。ただのほぼ田舎の山」


「おい、雰囲気下げるおじさんやなぁ」


 その後、定刻となりもう一人の女子が参加し、五人は車で約一時間、隣にあるAとBの地元の県へと向かった。



 都会の喧騒は大分と前に過ぎ去り、木々がガードレールの向こう側から枝葉の手を差し伸べてきている。前方にはもう大分と先にしかテールランプの明かりはなく、後続車も徐々に減っていき、いつの間にか一台も無くなり閉鎖的な孤独感がより恐怖心を駆り立てていく。


 なんとも言えぬ緊張感が全員の中にふつふつと湧きあがり、それに共鳴するかのように一人の女子が

「なんか、気分が悪い・・・・・・」


「車酔いか?まぁまぁの蛇行した山道やしなぁ」


「窓、開ける?」


「・・・ううん、多分、そういうんじゃないと思うし」


「・・・え?マジ??」

 女性陣は心配そうに不安げな顔をし、男性陣は苦虫を嚙み潰したような引きつった顔で失笑した。



 神社へと上がる、そこそこ長い石階段の下にある路側帯で車を停めて、そこからは徒歩で進む。こんな丑三つ時に山からの下山対向車は居たらいたで、それも怖い。


「・・・ごめん、私、もう無理かも。ごめん」

 とうとう、泣き出してしまった。


「大丈夫?車、戻る?」


「あぁ・・・じゃ、C、車のキー貸して。俺が一緒に戻るわ。お前らだけで行ってくれ」


 言い出しっぺの罪悪感からか、Bが残ると介抱の名乗りを上げた。ただ、その他男性陣だけは知っていた。Bがこの娘のことが好きなことを。

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