塩にぎり、何を思って握るのか?

 身勝手な姉のために主人公が塩にぎりを作る行為は姉への思いやりなのか、または承認欲求なのか、それとも姉への秘かなる復讐なのか? 最終的に彼氏との時間を犠牲にしてまで作ったおにぎりを食べられないと言った姉の真意はどこにあるのだろう。
 本当にお腹の子が原因なら、”塩にぎりが食べられなくなった” でいいはずなのに、”あなたがつくった” と前置きした上で”気持ち悪い”と言っている。おにぎりは直接手で握る料理。握った相手への感情が食べる側の味覚に影響する。作中のおにぎりはシンプルなおにぎりだけになおさら。
 幼少期の姉妹関係、さらには両親の姉妹に対する過去の接し方を想像しながら読むとさらに物語に深みがましていく。