弱小豪族の娘、糸季は、都にいる二の皇子の澪の正室候補となる。
どうして私がと不思議に思う糸季ですが、断ることはできません。戸惑いながらも都に向かう糸季ですが、この子、すごくいい子なのです。
送り出してくれる両親はもちろん、領民や家人にも慕われ、糸季もそんなみんなへの感謝を忘れない。こんな子には、ぜひ幸せになってほしいものです。
そして二の皇子の澪なのですが、彼もそんな糸季のことを思ってくれ、さらにはとても聡明な人物なのです。本来ならば。
しかし、二の皇子という立場である澪の周りには、否応なく様々な者たちの思惑が渦巻きます。
しかも、澪には皇子であること以外にも、何やら抱えているものがある模様。それらのせいで、澪は人を信じることができなくなってしまっていたのです。
こんな澪の心を、糸季は解かすことができるのか。
そして彼の秘密やそれを巡る思惑は、どこまで二人を縛り付けるのか。
二人に、それを二人を慕う人たちに、幸せと平穏が訪れることを、祈らずにはいられません。
弱小豪族の娘、糸季は、ある日突然
第二皇子の正室候補に選ばれる。
なぜ自分が、そんな高貴なお方の正室候補にと戸惑う糸季でしたけど、この二の皇子・澪はかなり難しい立場にある人。
彼はこの国に伝わる伝説の存在、雨神様の生まれ変わりと言われていたのです。
この『言われていた』というのがポイント。過去形なのですよ。
それというのも、雨神様の生まれ変わりとされていたのに、雨降りの儀式に失敗して偽者呼ばわりされ、以後彼は不遇な扱いを受けていたのです。
澪自身は嘘をついたわけでも、周りを欺こうという気もなかったのに、勝手に騒がれて罵られるなんて酷い!
そんな澪に糸季は寄り添い、冷えきっていた彼の心を溶かしていく。
皇族やそれを取り巻く人達の様々な思惑が交差する、中華ファンタジー。
危険な術を使う陰陽師も出てくれば、澪の兄も絡んできて、糸季たちは怪しい陰謀の渦に呑み込まれていきます。
心情がとても丁寧に書かれていて、キャラクターの苦しい気持ちや愛しい気持ちに共感することまちがいなし。
だんだんと強くなっていく糸季と澪の絆が、大きな見所です!